【工務店】深刻化する職人不足!高齢化と若者離れを防ぐ対処法とは?
2022.02.22
工務店や建設業界で頭を抱える問題が人手不足や職人不足です。
その原因は働き手の高齢化や若者離れといわれますが、国も働き方改革などの施策を打ち出して改善に努めています。
このような状況下、仕事が受注できても人材不足で請け負えず断らざるを得ないといった工務店も。
本記事では工務店の人手不足の現状や職人不足となる要因、改善点についてわかりやすく解説しています。
職人不足となる背景を再認識しながら、職人不足を解消する糸口として本記事を参考にしてください。
なぜ、今の工務店は人手不足なのか?
工務店の人手不足が年々深刻化しています。
工務店の主な業務は、
- 「営業」が仕事を受注
- 「施工管理」が工事段取り
- 「職人」が施工
をするという業態が一般的です。
そのなかでも職人は若者が育たず、高齢化している現状があります。
近年、デジタル化が進み、「営業」「施工管理」は人手不足の対処に期待が持てる反面、建築物を施工する職人の手が足りていません。
職人がいなければ工務店は成り立たないため、職人不足が致命的な問題となっているのです。
なぜ工務店で人手不足となるのか、職人が働く環境や現状について解説します。
住宅着工戸数の現状と予測
下図は国土交通省「建築着工統計調査報告(平成30年計)」による新設住宅の着工戸数実績と実績値から見込まれる予測値を示したグラフです。
住宅着工戸数は、2017年の95万戸から2025年には69万戸、2030年は60万戸と予想され、なだらかな減少傾向にあります。
建設現場は増えていないのに職人が不足している現状です。
では、職人はどのくらい減少しているのでしょうか。
職人不足の現状と予測
下図は総務省「国勢調査」をもとに、国土交通省が大工就業者数の推移を示したグラフです。
2000年に約65万人いた大工が2020年には約30万人、20年間で半減していることがわかります。
さらに野村総合研究所のレポートによると、2025年に25万人、2030年には21万人まで大工就業者が減少すると予測されています。
新築住宅の需要減だけでなく大工の減少、職人不足は深刻な問題です。
また、60歳以上の大工が多い反面、30歳未満の若年従事者は大きく減少し高齢化が目立ちます。
引用元:国土交通省「大工就業者数の推移」
職人が不足すれば工務店は、
- 職人自体の生産性を高める必要がある
- 受注があっても現場が回らず売り上げが減少する
- 大工を外注に頼ると外注費が上昇する
などの影響が考えられます。
職人の賃金問題
職人が不足する原因に賃金の低さがあります。
大工の平均年収は約409万円、日本の平均年収と比べても低い水準です。
月給制よりも働いた日数だけ給料がもらえる日当制で働く大工も多く、その場合天候が悪かったり、ケガしたりすれば仕事が出来ず無給となります。
また、ヒマな時期や忙しい時期など仕事量に波があるため、毎月の賃金に差が生まれます。当然、ボーナスもありません。
大工見習いのあいだは日当も少なく、安定して稼げるようになるには経験を積む必要があります。
職人の労働環境
下図によると、令和3年度における建設業の労働時間(1978時間)は、全産業(1632時間)と比べて年間で346時間長く働いています。
また、全産業の年間実労働時間は平成9年度から令和3年度にかけて255時間減っている反面、建設業は48時間しか減っていません。
多くの産業で当たり前となりつつある週休2日制、その導入がまだ少ない点も建設業が長時間労働となる原因のひとつです。
現場で働く職人はエアコンの効いた部屋で作業できるわけではなく、夏の厳しい暑さや凍てつく冬場でも体を酷使して働きます。
また、休憩は車や地べたが多く、トイレも仮設であるため、決してよい労働環境とはいえません。
このような労働環境も職人不足や職人が定着しない原因と考えられます。
後継者不足の要因
職人の世界では「技術は見て盗め」といわれるように、下積み時代は親方の仕事を見て学びとるといった慣習があります。
そのため、一人前の職人になるまでには長い時間がかかるのです。
高い志と意欲がなければ、技術を習得して充実感を得られるようになるまでに挫折してしまうでしょう。
さらに、前述の安い賃金や労働環境の問題にプラスして、建設業界に根付く「きつい・汚い・危険(3K)」というネガティブなイメージが強い点も後継者不足の原因です。
【工務店】職人不足の大きな要因は若者離れと高齢化
工務店が人手不足となる大きな原因は「若者離れ」と「高齢化」です。
人手不足が慢性化すると工程の遅れや業務負担が大きくなってしまいます。
なぜ、工務店から若者が離れていくのか?高齢化が進むのか?
職人不足の現状と労働力確保の見通しについて解説します。
若者離れと高齢化の現状
下図は総務省「労働力調査」をもとに国土交通省が算出した、建設業と全産業における就業者の年齢層を示しています。
平成27年全産業のなかで55歳以上が占める割合は29.2%、それに対し建設業は33.8%と多く、高齢化が進行していることがわかります。
その一方で29歳以下の割合をみると全産業が18.2%を示すなか、建設業は10.8%と低く若者が少ない状況です。
建設業従事者を年齢別にグラフ化した上図をみると、60歳以上の人材は78.1万人です。
しかし、10年後にはほとんどの人材が引退してしまいます。
逆に29歳以下の若い人材は35.7万人しかおらず、60歳以上の高齢者が大量辞職した穴を埋めることが厳しい状況です。
そのため、工務店や建設業では若者をどのように確保し、育てていくのかが喫緊の課題になります。
労働力確保の見通し
令和3年2月の建設労働需給調査のなかから、今後の労働者確保に関する見通しを示した下表をご覧ください。
引用元:国土交通省不動産・建設経済局建設市場整備課「建設労働需給調査」
この表は以下に示す国内建設業8職種に対して、令和3年4月・5月時点での労働者確保の状況を調査した結果です。
- 型わく工(土木)
- 型わく工(建築)
- 左官
- とび工
- 鉄筋工(土木)
- 鉄筋工(建築)
- 電工
- 配管工
労働力の確保が「困難」「やや困難」と回答した建設業者は約20%いました。
次に平成5年から令和3年まで長期にわたる職人不足率を示した下記グラフをご覧ください。
引用元:国土交通省不動産・建設経済局建設市場整備課「建設労働需給調査」
約10年前から職人不足の状態が続いていることがわかります。
工務店のような建築業は、
- 土曜日は当たり前に出勤
- 祝日も出勤
- 工期によっては日曜も出勤
という企業がほとんどです。
最近では政府による「働き方改革」によって、週休2日制を導入する企業も増えましたが、建設業はまだまだ遅れているのではないでしょうか。
休日が少なく、ライフワークバランスの悪い企業は、若者から支持されません。
そのため、若者の工務店離れが起き、人手不足が加速する大きな原因となっています。
職人不足を改善するには
職人不足を改善する具体的な方法は次の通りです。
- 業務委託関係を構築
- 外国人労働者の採用
- 工程を効率化
- 労働環境改善
- 建設DX導入
- ITC化で業務を効率的に
項目ごとに解説します。
業務委託関係を構築
人手が足りなければ、下請け業者に依頼してでも仕事を進めなければいけません。
そのためには、業務委託できる横の繋がりを構築して、選択肢の幅を広げておくことが大切です。
依頼する業者が多ければ多いほど、請け負ってくれる業者も見つけやすくなるため、積極的に下請け業者の幅を広げておきましょう。
外国人労働者の採用
外国から労働者を確保して職人不足を改善する方法です。
近年、母国に住む家族のために日本で働くことを望む外国人が増えており、建設業界でも多くの業種で外国人労働者が活躍する光景を目にします。
外国人労働者は仕事に対して積極的で、真面目に働く人が多いようです。
ただし、言葉や文化の違いがあるのでコミュニケーションが取りづらいデメリットがあります。
工程を効率化
前述の通り、2030年の住宅着工戸数は60万戸、大工就業者数が21万人になる予想です。
60万戸の住宅需要を大工21万で満たすためには、下図のように建設現場での労働生産性を1.4倍に引き上げなければいけません。
そのためには、今まで建設現場で取り組んできた工程をできる限り減らして省人化や省力化を図り、作業効率を向上させる必要があります。
省人化や省力化の一例として、
- 木材や設備資材を事前に工場でプレカットする
- 住宅部材を工場であらかじめ組み立てる
- 自立型ロボットを導入して作業を効率化する
- 遠隔カメラを用いて現場確認作業を省略化する
- 工場で躯体を作り、トイレやバス、空調などを事前に据えつける
などがあり、これらに取り組めば工程の効率化が図れ、労働生産性が向上します。
労働環境改善
職人不足を解消するには、長時間労働の改善や週休2日制の導入など労働環境の見直しが必要です。
建設業には2024年4月から本格的に「労働時間の上限規制」が適用されます。
上限を超えると罰則となるため、勤怠管理を徹底して従業員の労働時間を把握しておきましょう。
職人不足解消の手立てとして、給料体系の見直しも検討課題です。
工務店から若者が離れていく原因に給料への不満があげられるので、改善策を考えなければならないでしょう。
しかし、単純に従業員の日当を上げるだけでは、会社への負担が大きくなるだけです。
日当に見合った働きをしてくれればよいのですが、そううまくはいきません。
例えば、給料体系の見直し例として、
- 職長など責任のある立場に手当を与える
- 技術に見合った手当を与える
- 遠方への出張や朝早くの出勤、退勤に残業代を付ける
など、スキルや労力に見合った手当を与えることが大切です。
また、今は評価が低くても頑張れば給料が上がるという将来性を見せることも職人のモチベーションアップにつながるため、職人の離職を抑える効果が期待できるでしょう。
建設DX導入
DXとはデジタルトランスフォーメーションのことで、デジタル技術を活用して業務負担の軽減や業務プロセスの変革に役立てます。
以下はDXで実際に用いられるデジタル技術の一例です。
- ICT
- IoT
- 5G
- AI
- BIM/CIM
建設業にDXを導入すれば、
- 業務効率化により労働時間の短縮や業務に多様化が図れる
- 作業中の災害リスクが減り、安全性が向上する
- マニュアル作成により、技術継承がスムーズになる
- 省人化が図れる
- 遠隔操作で人員コストを削減できる
- 情報を一元管理できる
などのメリットが享受できます。
建設業が抱える人手不足や職人不足、長時間労働などの課題を解消できるため、国も建設DXを推進している状況です。
- 関連記事:建設DXが遅れる理由と、推進する方法
ITC化で業務を効率的に
ICT(Information and Communication Technology)とは情報通信技術のことで、特にコミュニケーションや情報を共有するための技術です。
この技術を用いて、効率的な業務を実現します。
例えば、スマートフォンやタブレットで図面や工程、工数などの資料を確かめられたり、映像システムを用いれば遠隔から指示したりできます。
図面も最新の情報が示されるため、変更前の図面で施工してしまったといったミスの防止にもつながるでしょう。
また、図面や資料を共有できれば、他現場からでもオンラインでチェックできるでしょう。
多くの掛け持ち現場を持つ職人にとっても業務効率化が図れ、多くの現場を回しやすくなります。
ICT技術の活用で、業務効率化や職人不足解消、生産性の向上が期待できるでしょう。
職人不足を回避するには?
職人不足を回避するための具体的な方法について解説します。
若者の指導方法を改善する
技術を見て覚えることは職人を育成する方法として理にかなっていますが、言葉を用いた丁寧な指導も並行して行うことが大事です。
丁寧に指導すれば若者も理解しやすく技術をどんどん吸収すれば、仕事にも楽しく取り組めるでしょう。
楽しく仕事に取り組めれば向上心が沸き、モチベーションも高まります。
しかし、職人のなかには「若者に任せるより、自分でやった方が早い」と考える方もいるため、そのような場合には仕事をさせてもらえず、モチベーションが低下する原因になることも。
慣れてない若者に仕事を任せると、失敗したり作業が遅かったりしますが、仕事を経験しなければ若者の成長を妨げてしまいます。
ある程度の指導ができたなら、若者に仕事を任せることも大切です。
多能工を育てる
多能工はマルチスキルやマルチクラフターとも呼ばれ、ひとりの職人が複数の業務に携わることです。また、あらゆる技能やスキルを持つ職人を指します。
多能工の育成で人材を有効に活用できるほか、作業品質の向上や業務の効率化が図れます。
採用ターゲットを絞らない
新規採用するにあたり、採用ターゲットを絞り込まず新卒採用だけでなく、中途採用や外国人労働者など幅広い人材から選択することが大切です。
従来あるハローワークや求人広告だけでなく、SNSの活用もおすすめします。
例えば、Twitterやインスタグラム、Facebookなどのソーシャルネットワークサービスに「#職人募集」や「#求人募集」、「#採用」、「#採用情報」などのハッシュタグをつけて投稿します。
SNSに求人広告を掲載する際には、工務店のイメージが伝わる写真や動画の投稿、さらに採用に関するキーワードをつけて継続的に投稿することがコツです。
建設キャリアアップシステムの導入
建設キャリアアップシステムは建設技能者の能力を適正に評価し、現場管理を効率的に進めていくための仕組みです。
建設キャリアアップシステムを導入すれば、次のようなメリットが得られます。
- 職人のスキルや就業履歴が見える化される
- 職人のスキルアップに合わせて適正な賃金や処遇が受けられる
- ICカードで勤怠が管理できる
- スキルや就業記録の見える化で適切な人事が可能になる
- 建設業退職金共済本部の退職金手続きがスムーズに行える
職人の技能が見える化されるので、下請け業者は元請けに対して職人の持つ技能やキャリアを具体的にアピールできます。
また、経験やスキルアップに伴って待遇が良くなる仕組みのため、「仕事のわりに安い賃金」といった若者のイメージも払拭され、モチベーション向上が期待できるでしょう。
まとめ
本記事では工務店や建設業界の人手不足と職人不足について解説しました。
工務店の職人不足は年々深刻な状況が続いています。
少子高齢化により労働者人口が減っていることも事実ですが、大企業でも採用が困難な時代。
工務店などの中小企業が人手不足や職人不足を解消するためには、処遇の改善や働きやすい労働環境の整備が不可欠です。
さらに叩き上げで育てる職人体質の改善や若者の教育に注力しながら、職人不足に対処していきましょう。
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