建設業の後継者不足はなぜ起こる?現状と事業承継対策について解説
2022.10.18
経営者の高齢化はどんどん進んでいるのに、後継者が見つからない状況の会社が多くみられます。
業種別では建設業が最も後継者不足に陥っており、最悪の場合には事業継続を諦めて廃業してしまうケースもあります。
建設業の後継者不足はなぜ起こるのでしょうか。
この記事では、後継者不足で悩む建設業の現状と要因、解決策についてわかりやすく解説しています。
後継者不足で頭を抱える経営者の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
後継者不足で悩む建設業の現状
工事件数や利益率に回復傾向が見られる建設業ですが、高齢化や後継者不足で悩む建設業者は増加傾向にあります。
小規模な建設業者ほど後継者不足を課題としているケースが多く、下表のように倒産件数が2年連続で増加しています。
東京商工リサーチによると、2021年の後継者不足による倒産件数は381件にのぼり、調査を開始した2013年以降、過去最多の結果となりました。
出典:東京商工リサーチ「後継者難倒産が過去最多の381件、2年連続で増加【2021年】」より
後継者不足の主な原因
下の円グラフは2021年に後継者不足で倒産した要因について示しています。
「代表者の死亡」による倒産が最も多く全体の51.44%を占め、次いで「代表者の体調不良」が31.75%で上位2つの要因が全体の約8割を占めています。
出典:東京商工リサーチ「後継者難倒産が過去最多の381件、2年連続で増加【2021年】」より
後継者不在動向
下の折れ線グラフは帝国データバンクが公表している、後継者不在動向の調査結果(2021年)です。
「後継者不在」と答えた企業は全業種平均で61.5%ありました。減少傾向ですが、まだまだ高い数値を示しています。
出典:帝国データバンク「全国企業 後継者不在率動向調(2021年)」より
業種別の後継者不在率を示す同調査によると、建設業は67.4%と他業種のなかで最も高い数値を示しています。
2022年3月末の全国建設業許可業者数は475,293社あり、その約7割が後継者不足で倒産の危機にさらされています。
出典:帝国データバンク「全国企業 後継者不在率動向調(2021年)」より
建設業で後継者不足が起きる原因
建設業が後継者不足に陥る原因について解説します。
建設業従事者の高齢化
建設業では従業員の高齢化が進み、若者が少ない状態となっています。
下記データをみると建設業従事者の約34%が55歳以上と年齢層が高く、29歳以下の若者層は約11%と極端に少ない構成です。
全産業の数値と比較すると高齢化が顕著です。
出典:国土交通省「建設業及び建設工事従業者の現状」より
建設従事者だけでなく経営者の高齢化も進んでおり、後継者不足の現状はさらに深刻化する可能性があります。
建設業許可の要件がきびしい
基本的に建設業者が工事を請け負うためには、法律に基づいて「建設業許可」を取得する必要があります。
法人の場合、行政庁に届け出れば許可の引き継ぎはできますが、事業承継の場合には許可要件である下記の人的要件を満たす必要があります。
- 5年以上の経験を有する経営業務管理責任者の確保
- 一定の条件を満たす専任技術者の確保
多くの中小建設業では経営者が「経営業務管理責任者」と「専任技術者」を兼務しているため、経営者が変わると許可要件を満たさなくなります。
要件を満たさなければ許可が失効され、廃業・倒産となりかねません。そうならないためにも人材の確保が大切です。
後継者不足への具体的な対応策
後継者不足への具体的な対策として次の4点があげられます。
- 親族を後継者として育成する
- 従業員を後継者として育成する
- 社外から後継者を登用する
- M&Aによる事業譲渡
それぞれの対応策について解説します。
1.親族を後継者として育成する
対応策のひとつ目は、代表者の子どもや配偶者などの親族を後継者として育てる方法です。
親族を後継者にするメリットは次の通りです。
- 他の承継方法と比べて選択肢が限られるため、後継者選定がしやすい
- 後継者が早く決まっている場合が多いため、後継者教育に時間をかけられる
- 社内や取引先から受け入れやすい
その一方で、次のようなデメリットも考えられます。
- 親族のなかに後継者としての資質を持つ人材がいない可能性がある
- 後継者候補が複数であれば、親族同士でトラブルが起きる可能性がある
親族を後継者にするためには、従業員として数年間働いて事業について学び、社内だけでなく取引先との関係を良い方向に導くことが大切です。
2.従業員を後継者として育成する
対応策の2つ目は、従業員を後継者として育てる方法です。
従業員を後継者にするメリットは次の通りです。
- 長年、従業員として携わっているため、事業への理解が深い
- 後継者候補の選択肢が多い
その一方で、次のようなデメリットも考えられます。
- 後継者は株式を購入するため、多額の資金を準備する必要がある
- 負債があれば個人保証の引き継ぎが後継者確保の障害となる
優秀な従業員がいれば早い段階から後継者教育を行い、社内や取引先との信頼関係を構築していくことが大切です。
3.社外から後継者を登用する
対応策の3つ目は、社外から後継者を登用する方法です。
社外から後継者を登用するメリットは次の通りです。
- 後継者候補として社外から優秀な人材を広く探せる
- 経営者の意志で後継者を選択できる
その一方で、次のようなデメリットも考えられます。
- 負債など個人保証を引き継ぐリスクへの理解が求められる
- 適格な人材がすぐに見つからない可能性がある
社外からの登用は、銀行や商工会からの紹介やインターネットを使ったマッチングサイトを利用することもできます。
4.M&Aによる事業譲渡
対応策の最後は、M&Aによる事業譲渡を行い、会社存続と社員の雇用を守ります。M&Aとは、合併(Mergers)と買収(Acquisitions)のことです。
昨今では一般的な事業承継の手法ですが、建設業は特にM&Aが盛んな業界です。
M&Aを行うメリットは次の通りです。
- 事業売却で企業価値が高く評価されれば、売却益がある
- 買い手企業との間で相乗効果が生まれれば、事業の発展・成長に期待できる
その一方で、次のようなデメリットも考えられます。
- 経営者の変更で企業方針が変わる可能性がある
- 方針変更で従業員の混乱や反発が起こる可能性がある
実際にM&Aを行うためには、手続きなどに期間を要し、また専門知識も求められるため、行政書士などの専門家への相談をおすすめします。
建設業の事業承継制度について
2020年10月に建設業法が改正され、建設業許可の承継を認める制度が新しく定められました。
以前の制度では、事業譲渡や合併、相続などがあっても建設業許可の承継が認められませんでした。
例えば、上記のような承継があった場合、事業を受け継いだ側は建設業許可を行政庁に申請し、審査期間を経て新たに建設業許可を取得する必要がありました。
そのため下図のように空白期間が存在していました。
出典:国土交通省「建設業における事業承継について」より
この空白期間をなくすために法改正がなされ、新たな事業承継制度が生まれました。現行の制度では事前に申請を済ませておけば、空白期間もなく事業を継続できます。
まとめ
この記事では後継者不足の悩みを抱える建設業の現状を踏まえて、原因や解決策を解説しました。
実際に後継者を育成するには、5年から10年かかると言われます。しかし、後継者不足の状態では早期に次期後継者を選ぶことは難しく、今後の課題は山積みです。
今回お伝えしたような、さまざまな手法を模索しながら事業承継への準備を重ねていくことが大切です。
後継者対策は複雑になることも多いので、事業継承を専門的に取り扱う業者に相談してみると良いでしょう。
デキる会社の経営を
カタチにしました
リフォーム統合管理システム「SAKSAK」はできる会社の経営管理をカタチにしたシステムです。SAKSAKを使うことで、次のような悩みを解消いただけます。
- 粗利管理ができていない
- 請求書の確認に時間と手間がかかる
- 会社として顧客管理ができていない
- 見積書作成は営業担当者の負担が大きい
- 入金遅延や未入金・額の相違が多い など
意外と、知られてはいませんがリフォーム業界20年という実績があるシステムです。SAKSAKを使って、利益率が5%アップした会社もあります。また、SAKSAKとともに上場した会社もあります。
次は、SAKSAKがあなたの会社をお手伝いする番です。まずは、どのようなシステムか、ご覧ください。
導入事例集もありますので、こちらもご参考ください。
建築業、リフォーム業向けにすぐに使えるエクセル4種類のテンプレート(御見積書・工事請負契約書・工事台帳・工程表)を無料でプレゼントしております。
- 関連キーワード:
- 経営