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ウッドショックはなぜ起きた?木材価格高騰の原因と懸念される影響

2022.08.09

コラム

2021年から世間を騒がせている「ウッドショック」、言葉はよく耳にするものの、詳しく理解している方は少ないのではないでしょうか。

ウッドショックによる木材価格の高騰は、建設業界にも大きく影響を与えました。

木材の供給不足や価格上昇など問題は深刻化しています。このような事態を引き起こしたウッドショックの背景には一体何があるのでしょうか。

この記事では、ウッドショックが起きた原因を掘り下げ、懸念される影響と対策について解説しています。

建設業への影響や抱えている課題を理解して、今後のウッドショック対策に活かしてください。

ウッドショックとは

ウッドショックとは、世界的な木材価格の高騰による混乱状況を指します。

1970年代に起きた石油価格の高騰による「オイルショック」になぞらえて「ウッドショック」と呼ばれています。

実はウッドショックの発生は今回が初めてではなく、これまでに2度のウッドショックが起きています。

まずは過去に発生したウッドショックについて解説します。

第一次ウッドショック

1990年代初頭、世界的な天然林保護運動などの環境問題が引き金となり、第一次ウッドショックが発生しました。具体的には、次のような保護運動です。

  • マレーシアのサラワク州における丸太伐採規制やサバ州の丸太輸出禁止
  • アメリカで絶滅危惧種「マダラフクロウ」を保護するため、天然林伐採・丸太輸出規制

上記の伐採規制は丸太市場に影響を及ぼし、世界的な丸太供給量の減少と価格急騰を引き起こしました

この動きに伴い、国内では次のような期待が寄せられました。

  • 国産スギ材の価格上昇
  • アメリカ材の供給が減少した分、国産スギ材の需要が増える

しかし、円高基調であった為替相場にアメリカ材の価格高騰は吸収され、国内の木材価格は特に影響を受けず、スギ材がアメリカ材に取って代わることはありませんでした。

アメリカ材の代替として選ばれたのは、人工乾燥が施され高品質なヨーロッパ材です。ハウスメーカーを中心に集成材として用いられました。

第二次ウッドショック

以下の動きが要因となり、2006年〜2007年頃に第二次ウッドショックが起こりました。

  • インドネシアでの違法伐採対策の強化
  • 中国や新興国での木材消費量の拡大
  • ロシアでの針葉樹丸太の輸出関税引き上げ

木材需要の高まりや新たな伐採規制などの影響で需要と供給のバランスが崩れ、木材価格が再び高騰しました。

第三次ウッドショックが発生した原因

今回の第三次ウッドショックは、第一次・第二次ウッドショックと比べると長期化が懸念されています。

第三次ウッドショックを引き起こした原因について解説します。

ウッドショックの原因①|木材自給率の低さ

ウッドショックの原因として、国内での木材自給率の低さが挙げられます。

第二次大戦以降、国内では木材消費のほとんどを輸入材に頼ってきました。

木材輸入量は下表の通り、1996年をピークに減少傾向のなか、国産材は2002年の最低自給率18.8%から上昇傾向にあり、2020年の木材自給率は41.8%まで増加しました。

しかし、まだ約50%は輸入材へ依存している状況です。

ウッドショック画像①

出典:林野庁「木材需給の構成等」より

 

国内の住宅産業が輸入材に頼る理由は次の2つです。

  • 国内林業の衰退
  • 低価格のハウスメーカーが台頭

それぞれについて解説します。

国内林業の衰退

国内の森林地帯は戦時中の広範囲な伐採に加え、戦後に起きた住宅ラッシュでさらに伐採が増加し資源不足に陥りました。

木材を建材として利用するためには植林してから30年以上かかるため、一旦伐採された森林はすぐには回復できません。

森林が回復する数十年の間に林業従事者は高齢化などで減少し、木材の輸入自由化が行われたことも相まって、国内林業は衰退してしまいました。

その結果、国産材だけでは国内需要を賄えなくなり、輸入材に頼るようになりました。

低価格のハウスメーカーが台頭

ローコストをウリにするハウスメーカーの台頭も、輸入材に依存する理由のひとつです。輸入材の使用には、ハウスメーカーや建売住宅にとって次のようなメリットがあります。

  • 輸入材はサイズが大きく1本の木から柱材を何本も加工できる
  • 乾燥過程でひび割れや反りが起こりにくい
  • 真っ直ぐで加工しやすい
  • 低価格

ウッドショックにより輸入材に頼ってきたハウスメーカーは、国産材への切り替えが迫られるなど大きな影響が出ています。

ウッドショックの原因②|アメリカでの新築住宅の需要増

アメリカにおけるリフォームや新築住宅需要の急増は、建築木材の需要と供給のバランスを崩し木材価格に影響を及ぼしました。

アメリカでは、新型コロナウイルス感染症(COVIT-19)の影響で新築住宅需要に落ち込みが見られていました。

しかし、2020年5月にロックダウンが解除された頃から需要が大幅に増加しています。

ウッドショック画像②

出典:経済産業省「新型コロナがもたらす供給制約 ; ウッドショックの影響」より

アメリカ政府は、新型コロナウイルスで落ち込んだ経済を立て直すため、大規模な財政出動や低金利政策を行いました。

その結果、郊外への新築住宅建設や住宅リフォームを行うなど、着工件数増加に拍車をかけました。

山火事や虫害による木材不足やコロナによる製材所の稼働率低下などの問題を抱えるなか、新築住宅需要の拡大は、市場を混乱させ価格高騰を引き起こしました

ウッドショックの原因③|中国での木材需要拡大

中国での木材需要の拡大もウッドショック発生原因のひとつです。

経済成長が著しい中国では、産業用丸太や製材の消費量が拡大しています。しかし、中国国内での丸太生産量は横ばいのまま、丸太輸入量が急増しています。

中国は、世界の針葉樹丸太輸入量の44%、広葉樹丸太輸入量の39%を占めており、2019年の丸太輸入量は2010年から1.74倍に増加しています。

ウッドショック画像③

出典:林野庁「中国における木材貿易の動向」より

製材消費量も10年間で2.5倍に増えました。中国は、世界の針葉樹製材輸入量の20%、広葉樹製材輸入量の49%を占め、2019年の製材輸入量は、2010年と比べると2.44倍になっています。

ウッドショック画像④

出典:林野庁「中国における木材貿易の動向」より

最大の木材輸入国である中国は、コロナ後も木材消費をさらに拡大させ、世界的な品薄状態と価格急騰を引き起こし、ウッドショックに大きな影響を及ぼしました。

ウッドショックが建設業に与える影響

ウッドショックが建設業に及ぼす影響は次の通りです。

  • 木材価格の高騰と納期の遅れ
  • 新築戸建住宅の戸数減少
  • 国産材の利用促進

それぞれについて解説していきます。

木材価格の高騰と納期の遅れ

新築住宅戸数の急増と木材需要の拡大により、アメリカや中国が世界中から木材の買い集めを行ったため、輸入材の価格が急騰しました。

前述のとおり国内では、これまで低コストの輸入材に頼ってきました。

しかし、輸入材の価格高騰の動きや国内ハウスメーカーが一斉に国産材へシフトしたことも相まって、国産材価格も急騰しています。

ウッドショック画像⑤

出典:経済産業省「新型コロナがもたらす供給制約 ; ウッドショックの影響」より

 

また、新型コロナウイルスの影響でステイホームが広がり、世界的に物流が活性化しました。物流の活性化により、慢性的なコンテナ船不足に陥りました。

輸入材を購入してもコンテナ船不足で、日本まで木材を運べなかったり、納期が大幅に遅れたりするなど、ウッドショックは物流の遅延にも影響を与えています。

新築戸建住宅の戸数減少

コロナ禍でテレワークの普及や自宅で過ごす時間が増えたことで、2020年頃から新築戸建住宅の需要が急増しました。

しかし、2021年頃からウッドショックによる製材価格の高騰や材料不足は、需要があるのに供給が間に合わない状況を生み出しました。

建設業では住宅需要があるにもかかわらずウッドショックの影響で次のような課題を抱えています。

  • 木材調達の見通しが立たない
  • 納期の予定が立たず、工期が遅れる
  • 収益を圧迫する
  • 木材高騰によるコストアップの負担
  • 長期化すると資金繰りが不安

2021年に入ってからも新築戸建住宅売買業の指数は低下したままで、なかなか回復に至らない状況です。

ウッドショック画像⑥

出典:経済産業省「新型コロナがもたらす供給制約 ; ウッドショックの影響」より

国産材の利用促進

住宅建築に使用される木材の多くを輸入材に頼っている現状を踏まえ、第三次ウッドショックをきっかけとして国産材の利用を推し進める動きがみられます。

その一方で、国内林業の衰退など国産材の安定供給には課題が多く、需要と供給バランスの調整が今後求められます。

林野庁では、国産材の生産と流通構造を改革する目的で「低層建築物(住宅等)における効率的なサプライチェーンの構築支援」という次のような取り組みを進めています。

  • 需要に応じた原木供給
  • 森林から建設現場までの物流の効率化
  • 材料調達や製造・販売・消費などの流れ(サプライチェーン)の最適化を図る
  • 事業者による需給情報の共有化

建築木材が安定的に供給されれば、国産材の利用促進にもつながります。

さらに、令和3年10月1日に施行された改正木材利用促進法では、これまで公共建築物のみに進めてきた国産材利用を民間建築物にまで拡大しています。

今後、国産材の利用促進と安定供給に向けて、官民が連携して取り組みを進めていくことが重要です。

ウッドショックの影響はいつまで?

第三次ウッドショックは長期化が懸念されていると前述しました。

しかし、アメリカではコロナの沈静化に合わせて、消費が住宅関連から旅行や趣味など多方向にシフトし、木材価格は落ち着きを取り戻しつつあります。

一方、中国での住宅需要は現在も高い状況にあり、依然として木材を多く使用している点と、木材輸送に利用するコンテナ船不足で輸送費が高騰するなど、ウッドショックを悪化させている要因は未だ残っています。

工務店として今後、建設費のコストダウンをどう図るのかが大きな課題です。具体的には、次のような点です。

  • 設計や工法の見直し
  • 高騰したコストは顧客負担にするのか
  • 資材の調達方法を変更する
  • 資材の種類を変更する

海外の動向によって木材価格は変動していくため、日本でウッドショックが収まるにはまだしばらく時間がかかりそうです。

今後も状況をしっかりと把握していきながら、必要な対策をとる必要があります。

まとめ

この記事では、ウッドショックの概要や発生の要因、受ける影響などについてお伝えしてきました。

ウッドショックは、木材価格の高騰を意味する言葉で工務店やハウスメーカーに大きなダメージを与えました。原因には、アメリカや中国の急速な木材需要拡大が挙げられます。

さらに追い打ちをかけるように、ロシアによるウクライナ侵攻が起こりました。ロシアは世界的な木材産地のため、ウッドショックに大きく影響する可能性があります。

今後もウッドショックの沈静化がみえない状況のなか、世界の動向を見極めて今後の見通しを探っていくことが大切です。

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