アスベスト調査の報告が義務化?調査の概要と補助金について解説
2022.08.10
令和4年4月1日から、アスベスト調査結果の報告が義務化となりました。
義務化に伴い、次のような悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
- 「義務化の対象工事ってどこまで含まれる?」
- 「調査にかかる費用は?」
- 「補助金は利用できる?」
- 「法改正で何が変わるの?」
工事の範囲や費用は、建築に携わる方なら気になる問題です。
この記事では、法改正によるアスベスト調査のポイントや補助金について解説しています。
最後まで読んでいただくと、新しく改正されたアスベスト調査や報告、補助金の知識が深まり、活用できるようになります。
今後、アスベストが使用されている建物が耐用年数を迎え、解体や改修工事が増えていくと予想されます。
解体工事だけでなくリフォームなどの改装や修繕工事を行う場合にも、必ず調査を行いましょう。
目次
アスベストとは
調査対象となるアスベストについて、次の項目ごとに解説します。
- アスベストの特徴
- アスベストの危険性
- アスベストの用途
- アスベストの飛散性と非飛散性
アスベストの概要を理解して、調査に臨みましょう。
アスベストの特徴
天然の鉱物繊維であるアスベストには、次のような特徴があります。
- 構造が繊維状
- 耐熱性がある
- 摩擦に強く切れにくい
- 酸やアルカリなどに強い耐薬品性
- 丈夫で変化しにくい
上記の特徴から、アスベストは1970年〜80年代にかけて輸入され、建材として多く用いられてきました。
しかし発がん物質が含まれているため、平成18年9月1日以降は全面使用禁止となりました。
アスベストの危険性
アスベストは目に見えないほど繊維が細かいため、知らない間に吸い込んでしまう可能性があります。
アスベストが肺に入ると組織に刺さり、潜伏期間(15〜40年)を経過して肺がんや悪性中皮腫などの病気を引き起こすリスクがあります。
アスベストは人体への危険性や有害性があるため、アスベスト調査が義務化されています。
アスベストの危険性を熟知して、安全に調査を行いましょう。
アスベストの用途
アスベストの用途は3000種類と非常に多く、約9割は耐火壁や天井、軒天、間仕切り壁、外壁などの建材に使用されています。
昭和30年頃から使われ始め、高度成長期の昭和40年には鉄骨造建築の軽量耐火被覆材として多用されました。
アスベストは種類が多いので、用途を全て頭に入れることは困難ですが、少しでも知識を持っていれば、調査をスムーズに行うことができるでしょう。
アスベストの飛散性と非飛散性
アスベストは飛散性と非飛散性に分けられ、飛散性の高い順からレベル1・レベル2・レベル3に区分されています。
飛散性の高いレベル1とレベル2は、特別管理産業廃棄物(廃石綿)として廃棄処分する必要があります。非飛散性のレベル3は、産業廃棄物(石綿含有産業廃棄物)として処分します。
飛散性と非飛散性には、下記のような製品が該当します。
飛散性
(廃石綿) |
レベル1 |
|
|
レベル2 | |
|
|
非飛散性
(石綿含有産業廃棄物) |
レベル3 |
|
アスベスト調査|法改正のポイント
2021年以降、建築物やリフォーム・修繕などの改修工事について、アスベスト対策の規制が強化されています。
アスベストを規制する法令には、次の2つがあります。
- 大気汚染防止法
- 石綿障害予防規則等
2021年以降に行われた法改正で、アスベスト調査に対する規制ポイントは下表のようになりました。
大気汚染防止法 | 石綿障害予防規則等 |
令和3年4月1日改正 | |
アスベスト調査の記録を作成して、その写しを解体などの工事現場に備え付ける義務 | アスベスト調査と分析調査記録を作成し、その写しを解体などの工事現場に備え付ける義務 |
上記記録は、解体などの工事完了日から3年間の保存義務 | 上記記録は、調査完了日から3年間の保存義務 |
アスベスト除去完了後に作業記録の作成と発注者への報告及び3年間保存する義務 | 作業状況を写真などで記録し3年間保存する義務 |
令和4年4月1日改正 | |
一定規則以上の解体・改修工事の場合、アスベストの有無に関係なく元請業者は都道府県にアスベスト調査結果を報告する義務 | 一定規則以上の解体・改修工事の場合、アスベストの有無に関係なく元請業者は労働基準監督署にアスベスト調査結果を報告する義務 |
令和5年10月1日改正 | |
アスベスト調査は有資格者が実施しなければいけない |
それぞれのポイントについて詳しく解説します。
アスベスト調査の方法
建築物及び工作物の解体や改修工事を行うときに、法令に沿ってアスベスト使用の有無を調査する必要があります。
木造建築についても、アスベストを含有する建材が屋根や外壁、内装に用いられているケースがあるため、解体工事だけでなくリフォームや部分改修、修繕工事に至るまで必ず調査を行わなければいけません。
調査にはアスベスト使用の有無を調べて、工事を安全に進める目的があります。
アスベスト調査は、次の手順で確認していきます。
- 設計図書などの書面調査
- 目視による調査
- 分析による調査
それぞれについて、解説していきます。
1.設計図書などの書面調査
設計図書や竣工図を参照して、建築の時期や改修場所、使用建材などを確認します。
平成18年9月1日からアスベストは使用禁止となりました。
書面調査により、建築時期が平成18年9月1日以降と確認された場合は、アスベストは使用されていないものとみなされ、調査をする必要はありません。
しかし、建築時期が平成18年8月31日以前であれば、次の目視による調査を行う必要があります。
2.目視による調査
目視調査は、アスベスト調査対象の建築物を目で見て確認を行い、アスベスト使用の有無を判断します。
アスベスト使用のおそれがない木材やガラス、石、畳、電球、金属などについては目視判断で「アスベスト含有無し」とすることができます。
ただし、表面が木材や金属であっても下地材としてケイ酸カルシウムなどのアスベスト含有建材が用いられることがあります。
ビニルクロスや塗装で覆われていて内部まで確認できない場合には、壁や床材の一部をめくって裏側まで調査する必要があります。
3.分析による調査
分析による調査は、次の点に注意しましょう。
- 調査する建材を代表する試料を採取すること
- 複数の層状になった建材の場合は、各層ごとに試料を採取すること
- 試料を採取するときにはアスベスト飛散防止対策を行うこと
- 試料の採取や分析調査は有資格者が行うこと
- 資料の採取記録を残すこと
調査をするアスベストの取り扱いには十分注意してください。誤って吸い込まないよう保護マスクを徹底し、安全対策やKY活動を行ってから調査に当たりましょう。
アスベスト調査は一定規模以上の工事が報告対象
アスベスト調査の報告は、以下の一定規模以上の工事が対象になります。
- 解体部分の延べ床面積が80㎡以上ある建築物の解体工事
- 請負金額100万円以上(税込)ある建築物の改修工事
- 請負金額100万円以上(税込)ある工作物の解体・改修工事
- 総トン数20トン以上ある船舶の解体・改修工事
令和4年4月1日以降、上記に当てはまる工事を行う際にはアスベストの事前調査報告が義務化されました。
アスベスト調査は、解体や改修を行う元請業者が報告義務者になります。業者に頼まず施工(自主施工)する場合には、自主施工者が調査を行う必要があります。
工事発注者は調査費用を負担し、設計図書や過去の調査内容を元請業者に適正に提出するなどアスベスト調査に協力する義務があります。アスベスト含有に見落としがあった場合には、発注者への法的責任を問われる場合があるため注意しましょう。
アスベスト調査結果の報告
アスベスト調査の結果は、都道府県及び労働基準監督署に提出して報告する義務があります。
具体的には、次のような報告が必要になります。詳しくは下記参照元をご覧ください。
- 元請事業者(名称・住所・電話番号・労働保険番号など)
- 工事発注者(名称・住所・電話番号・労働保険番号など)
- 現場情報(工事名称・概要・工事期間など)
- 対象建築物(工事着工日・構造・床面積・請負金額など)
- 調査の終了年月日
- 調査実施者の氏名
- 石綿作業主任者の氏名
- 調査結果(アスベスト含有の有無、判断根拠)
- 調査方法
参照元:厚生労働省「建築物・工作物・船舶の解体工事、リフォーム・修繕などの改修工事に対する石綿対策の規制が強化されています」
アスベスト調査を行うために必要な資格
工作物に関しては、有資格者による調査は不要ですが、建築物のアスベスト調査は厚生労働大臣が定める、以下の有資格者が行う必要があります。
- 一般建築物石綿含有建材調査者
- 特定建築物石綿含有建材調査者
- 一戸建て等石綿含有建材調査者
令和5年9月までに一般社団法人日本アスベスト調査診断協会(NADA)に登録された石綿調査診断士についても、アスベスト調査実施が認められています。
令和5年10月1日以降は、有資格者によるアスベスト調査が必須になります。
専用電子システムで報告
アスベスト調査結果は、原則として「石綿事前調査結果報告システム」で報告を行います。
このシステムは、大気汚染防止法と石綿障害予防規則に関する報告をオンラインで行える専用電子システムです。
オンライン報告には、次のようなメリットがあります。
- 手持ちのパソコンやスマートフォンから24時間いつでも報告できる
- 一度の操作だけで労働基準監督署と都道府県へ同時に報告できる
- 複数現場の調査結果でもまとめて報告できる
システム利用にあたっては「Gbiz ID」が必要です。「Gbiz ID」とは、ひとつのアカウントで複数の行政サービスを利用できる認証システムです。
基本的にアスベスト調査結果の報告は、専用電子システムを利用します。まずは「Gbiz ID」のアカウントを取得しましょう。
アスベスト調査で利用できる補助金制度
アスベスト調査の義務化に伴い、これまで不要であった調査費用が発生します。
民間の建築物に対するアスベスト調査について、国土交通省は補助金制度を創設しています。
アスベスト調査で活用できる補助金制度について解説します。
補助金制度について
国土交通省が創設した補助金制度(住宅・建築物アスベスト改修事業)の支給内容は、下表の通りです。
住宅・建築物アスベスト改修事業 | |
補助対象アスベスト |
|
対象建築物 | 吹付けアスベストなどが使用されている可能性がある住宅や建築物 |
補助内容 | 吹付け建材中のアスベスト含有を調べる調査費用 |
国の補助額 | 原則1棟25万円(限度額)※ |
※民間事業者が調査を行う場合は、地方公共団体を経由して利用できます。
補助金制度の実施例
アスベスト調査に関する補助金制度は、全国の地方自治体で実施されています。
ただし、自治体によっては実施していない場合もあるので、事前に確認しましょう。
「アスベスト調査 補助金 ◯◯市」などと検索すれば、簡単に調べることができます。
補助金制度を実施している自治体の一例を紹介します。
- 大阪市民間建築物吹付けアスベスト除去等補助制度
- 京都市吹付けアスベスト除去等助成事業
- 八王子市民間建築物に係る吹付けアスベスト等含有調査事業補助金
- 八尾市吹付けアスベスト分析調査補助金交付制度
- 川崎市民間建築物吹付けアスベスト対策事業
- 小山市民間建築物吹付けアスベスト対策補助金制度
- 神戸市吹付けアスベスト除去等補助制度
- 松本市アスベスト飛散防止対策事業補助金
- 江東区アスベスト分析調査費助成
- 神奈川県民間建築物吹付けアスベスト等補助事業費補助金
- 沖縄市既存民間建築物吹付けアスベスト対策補助事業
まとめ
この記事では、アスベスト調査のポイントについて解説してきました。特に重要なポイントは、令和4年4月1日以降からアスベスト調査が義務化されたことです。
アスベスト調査を忘れてしまうと罰則の対象になり、補助金の申請も認められません。今後、解体や改修工事の際にはアスベスト調査が必要です。
さらに、令和5年10月1日から有資格者によるアスベスト調査が必須となります。その準備の一環として、社員に資格を取得させるなど体制強化に動き出すリフォーム業者も増えています。
相次ぐ法改正により、戸惑いの声も聞かれますが、調査方法や報告など一連の流れを理解して対策していきましょう。
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