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建設業の2024年問題とは?働き方改革に向けた課題や取り組みを解説

2023.04.11

コラム

2024年4月から建設業に「働き方改革関連法」が適用されます。

「時間外労働の上限規制」や「同一労働同一賃金」など建設業においても、早急な対応が求められている状況です。

では、今後どのような取り組みをはじめていけばいいのでしょうか。

本記事では建設業の2024年問題について、その背景にある課題点や働き方改革を進めるための取り組みについて解説しています。

働き方改革への取り組みを検討する際の参考にしてください。

建設業の2024年問題とは

国内のあらゆる分野で労働環境の改善や変革に取り組むため、2019年4月に「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(働き方改革関連法)」が施行されました。

働き方改革の目的は、1億総活躍社会を実現するために労働環境を再構築することです。

その実現のためには、

  • 長時間労働の是正
  • 公平な待遇
  • 女性の社会進出
  • 高齢者の就労促進
  • 多様性のあるワークスタイル

などの検討課題があります。

2019年から順次施行されていますが、人手不足や長時間労働など多くの課題を抱える建設業は、労働環境の改善に時間がかかるため、5年間の猶予期間が設けられました。

建設業への適用が開始される2024年4月が間近に迫るなか、法令を遵守するために労働環境の改善や課題を克服しなければいけません。

5年間の猶予があっても建設業での対応は困難と言われているため、「建設業の2024年問題」と呼ばれています。

具体的に取り組むべき課題は以下の点です。

  • 時間外労働の上限規制
  • 同一労働同一賃金
  • 時間外労働の割増賃金率引き上げ

項目ごとに解説します。

建設業2024年問題の課題①:時間外労働の上限規制

労働時間の上限は、労働基準法第32条のなかで

  • 1日8時間まで(休憩時間1時間を除く)
  • 1週40時間まで

と定められ、これを法定労働時間といい、超過した時間を残業時間といいます。

時間外労働は月45時間・年360時間が上限規制です。

法改正までは労使間で36協定を結べば、6ヶ月までは時間外労働の延長に上限はありませんでした。

しかし、法改正により36協定を結んでも上回ることのできない、下記の上限規制が設定されました

 

引用元:国土交通省「建設業における働き方改革」

上記の規制内容は建設業界においても、2024年4月から適用開始。違反すれば罰金が科せられるため、注意が必要です。

具体的には、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金となります。

これまでと同レベルの労働成果量をあげるためには、労働環境の見直しと改善に努めなければいけません。

建設業2024年問題の課題②:同一労働同一賃金

2020年4月に大企業、2021年4月には中小企業において同一労働同一賃金が適用開始。

正規・非正規といった雇用形態にかかわらず、同じ職場内で同じ仕事をしている労働者に対して同額の賃金を支払う仕組みです。

同一労働同一賃金には、非正規雇用労働者の待遇を改善し、労働力を増加させる狙いがあります。

ただし、非正規雇用が多い業者は、人件費の増加は否めません。

また、賃金だけでなく下記に対しても見直しが必要です。

  • 有給休暇などの休暇制度
  • 通勤費
  • 教育や訓練
  • 福利厚生など

建設業においては2024年4月から適用対象となるため、注意しましょう。

建設業2024年問題の課題③:時間外労働の割増賃金率引き上げ

時間外労働の割増賃金率引き上げは、2023年4月から中小企業を対象に適用開始

月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が下図の通り、25%から50%に引き上げられます

2024年問題 画像②

引用元:厚生労働省「月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます」

従業員の健康を守るため、割増賃金を支払う代わりに有給の代替え休暇を与えることも可能です。

なお、月60時間以下の時間外労働は従来の割増賃金率(25%)のままですが、月60時間を超える場合には、人件費が大幅にアップする点に注意しましょう。

2024年問題の背景|建設業が抱える課題

働き方改革の実現に向けた課題は、時間外労働の上限規制だけではありません。

建設業では長時間労働を含め、労働力不足や従業員の高齢化、若者離れ、後継者不足といった課題を抱えています。

2024年問題の背景①:長時間労働

国土交通省のデータによると、建設業は他産業と比べて年間実労働時間と年間出勤日数ともに多く、長時間労働が恒常化しています

2024年問題 画像③

引用元:国土交通省「(参考)建設業を取り巻く現状について」

建設業界は多くの下請け業者が絡む多重下請け構造のため、2次請けや3次請けと下層になるほど納期に追われ、休日返上で働かなくてはいけないことも少なくありません。

2024年問題 画像④

引用元:国土交通省「(参考)建設業を取り巻く現状について」

週休2日制が当たり前となっている他産業とは違い、建設業では1割以下が実情。

下請け業者は対価が低く、納期も短いうえに品質を求められるため長時間労働が否めない現状があります。

2024年問題の背景②:労働力不足

建設業の就業者数は1997年の685万人をピークに、2017年には498万人とピーク時と比べて27.3%減となっており、慢性的な人手不足・労働力不足の状況です。

国土交通省が算出した下記グラフをみると、建設業の求人需要は増加しているにもかかわらず、求職数は大きく減少しています

2024年問題 画像⑤

引用元:国土交通省「(参考)建設業を取り巻く現状について」

また、建設業は他産業と比べて離職率が高く、特に就業1年目での離職が多くみられます。

年々、改善傾向ではありますが、人手不足や労働力不足と合わせて離職率への対策も建設業にとっては大きな課題です。

2024年問題の背景③:高齢化と若年従事者の減少

建設業は慢性的な人手不足・労働力不足に加えて、従業員の高齢化および若年従事者の減少が深刻化しています。

下のグラフをみると、60歳以上の技能者数は全体の約25%を占める一方で、未来の建設業を担う29歳以下の若年者は約10%といった状況です。

2024年問題 画像⑥

引用元:国土交通省「(参考)建設業を取り巻く現状について」

2020年に国土交通省が算出したデータによると、60歳以上の技能者は10年後には大半が引退すると見込まれています。

団塊世代のこの年代が大量離職すれば、建設従事者はさらに減少するでしょう。

また、若年者が建設業界に定着しない理由として、厚生労働省の雇用管理現状把握実態調査によると

  • 作業がきつい
  • 職業意識が低い
  • 人間関係で不安
  • 労働に対して賃金が安い
  • 休みが取りづらい
  • 技能習得が大変

などが挙げられました。

上記のような離職理由を改善する取り組みを行い、若年人材を獲得することが早急の課題です。

2024年問題の背景④:後継者不足

建設業では後継者不足に悩んでいる企業が多く存在しています。

建設業界がこの先も発展し、継続して企業成長を行うためには、熟練職人の高度な技能や知識を若年者に引き継ぐ仕組みづくりが必要です。

帝国データバンクによる業種別の後継者不在率を示した下表をみると、建設業の後継者不在率は63.4%と非常に高い数値を示しています。

2024年問題 画像⑦

引用元:帝国データバンク「全国企業 後継者不在率 動向調査(2022)」

上記のような背景から、国土交通省や厚生労働省では建設業を取り巻く現場を調査し、人材の確保や育成に向けた働き方改革を推進しています。

建設業|2024年問題への取り組み

昨今の建設業界では人手不足や後継者不足による倒産も少なくありません。

では、どのように2024年問題へ取り組んで、建設業界全体が抱える課題をクリアしていけばよいのでしょうか。

具体的な働き方改革を推進する取り組みは以下の4つです。

  • 給与体系の見直し
  • 職場環境の改善
  • 週休2日制の導入
  • 業務効率化と生産性向上

項目ごとに解説します。

給与体系の見直し

国土交通省が算出した下記データによると、2012年まで横ばいだった年間賃金総支給額は2012年以降から上昇傾向がみられます。

2024年問題 画像⑧
引用元:国土交通省「(参考)建設業を取り巻く現状について」

また、年間賃金の伸び率をみても、建設業は5.4%と製造業の0.4%と比べて高くなっています。

しかし、賃金水準は製造業よりもまだ約1割程度低い状況です。

2024年問題 画像⑨

引用元:国土交通省「(参考)建設業を取り巻く現状について」

建設業は賃金カーブのピーク時期を製造業よりも早い40代前半で迎えるため、現場での管理や次世代への指導に関するスキルが評価されていない可能性があります。

そのため、若年者離れの対策として、スキルや経験に応じた適切な給与体系の見直しが必要です。

例えば、建設キャリアアップシステムを取り入れて、建設労働者のスキルを評価するシステムづくりを行ったり、日給制よりも安定した雇用を実現する月給制に変更したり、など有効的に人材を獲得できる手法を検討しましょう。

職場環境の改善

人手不足や労働力不足を解消するためには、現場の職場環境をより働きやすい環境に改善しなければいけません。

具体的には次のような改善です。

  • 勤務時間の見直し
  • 休暇を取りやすい環境作り
  • 福利厚生の充実
  • 住宅手当や通勤手当など各種手当の充実
  • 食事補助
  • スキルアップできるシステム作り
  • 資格取得支援

上記の改善を行えば、従業員満足度の向上にもつながり、社内の雰囲気にもよい影響を与えるでしょう。

また、育児と仕事を両立させられる勤務体制を構築して、女性が働きやすい環境を作ることも職場環境を改善するひとつの手です。

週休2日制の導入

国土交通省では建設業の働き方改革を推進するため、週休2日制を応援しています。

例えば、公共工事など国が直轄する工事では、週休2日を確保するために工期を適切に設定したり、経費補正を実施したりするなどの取り組みです。

民間の工事に関しても週休2日制導入が推奨されているため、工事に関する人件費や現場管理費などのコストを改善し見直す必要があるでしょう。

さらに発注側と受注側が協力し合って、適正な工期や価格を設定することが大切です。

業務効率化と生産性向上

2024年問題への取り組む際に注意したい点は、労働時間の減少による生産力の低下です。

人手不足や労働力不足が進み、長時間労働の改善や時間外労働の上限規制が実施されると、これまでと同じレベルの生産性を上げることは困難になります

このような状態を改善するためには、ICTを活用したDX推進が必要不可欠

あらゆる業種でICTを活用した業務効率化が推進されていますが、建設業においても同様です。

国土交通省でも建設生産システムにICTを導入し、生産性向上や業務効率化、人材の有効活用などを意図した「i-Construction」を土台とした働き方改革を強化しています。

以下はICT化の一例です。

  • ドローンによる3次元測量
  • 3次元測量データをもとにした設計施工計画
  • 3D-CAD導入による工程短縮化
  • 5Gによる建設機械の遠隔操作
  • 墨出しのデジタル化
  • 施工管理システムの導入

測量や調査などの初期段階から設計・施工プロセス、検査や維持管理に至る建設工程サイクル全般において業務効率化と生産性向上を目指した取り組みが必須となるでしょう。

まとめ

本記事では建設業における2024年問題について、課題点や背景、今後取り組むべき事柄について解説しました。

5年間の猶予期間が終了する2024年4月まであとわずかです。

建設業界が抱える長時間労働や従業員の高齢化、人材不足などの課題を法令改正までにどう克服していくのか、自社の取り組みについて改めて見直してみてはいかがでしょうか。

2024年までに企業体制を整えて、すべての建設労働者にとって働きやすい労働環境・職場環境を構築しましょう。

 

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