建設業の働き方改革とは?2024年までの猶予期間に取り組むべき課題
2022.08.12
少子高齢化の進行で生産年齢人口が減少し、団塊世代の大量退職が懸念される建設業では人材不足が大きな課題となっています。
老朽化したインフラの維持管理やオリンピック関連の整備などで建設需要も増えており、人手不足はさらに深刻な問題となっています。
そういった状況のなか、「働き方改革関連法」が施行され、2024年には建設業にも時間外労働の上限規制など守るべき法令が増えてきます。
2024年をどう迎えればいいのか、不安な建設業者の方も多いのではないでしょうか。
この記事では、働き方改革の概要と2024年4月から建設業に適用される時間外労働の上限規制について、詳しく解説しています。
2024年までに建設業として取り組むべき課題や助成金についても触れているので参考にしてください。
目次
働き方改革とは
働き方改革は、働く人それぞれの生活環境に応じた柔軟な働き方ができる社会の実現を目指すための改革です。
いわゆる「一億総活躍社会」に向けた取り組みです。
2018年7月6日、労働生産性の向上を目的に「働き方改革関連法」が施行されました。
下のグラフは、高齢化の推移と将来推移を表しています。
労働力の中核となる生産年齢人口(15〜64歳)は、少子高齢化の影響を受けて、減少傾向にあります。人口が削減していけば、モノは売れなくなり労働力不足や生産性低下を招きます。
上記の問題を解決するためには次の3つが重要です。
- 労働力を増やす
- 少子化対策
- 労働生産性向上
これらを実現する改革が「働き方改革」になります。
建設業|働き方改革の背景
建設業での働き方改革の背景には、主に「人手不足」と「長時間労働」が挙げられます。
それぞれについて解説します。
慢性的な人手不足
生産年齢人口の減少が働き方改革を進めていく背景に挙げられますが、建設業においても同様に人手不足の状態が慢性的に続いています。
下のグラフは総務省の「労働力調査」をもとに国土交通省が「建設業及び建設工事従事者の現状」についてまとめたものです。
出典:国土交通省「建設産業の現状と課題」より
グラフから60代や40代の人材と比べて、20代以下の従事者が極端に少ないことがわかります。
今後、建設業界の人材で多くを占める団塊世代の大量退職が予想されるため、更に人手不足が懸念されています。
労働環境の改善
休日出勤や長時間労働など労働環境の改善も喫緊の課題です。
下のグラフは、建設業とその他産業における「年間総実労働時間の推移」を示しています。
建設業の年間総実労働時間は2,023時間で、全産業平均よりも300時間以上多く、長時間労働の傾向があります。
また、一般企業に浸透している週休2日(4週8休)も建設業では1割以下と少なく、建設工事では約50%が4週4休で従事しています。
長時間労働や休日出勤が改善されずに継続すれば、人手不足はさらに加速し、経営難になりかねません。
このような状況を打破するために働き方改革が実施されます。
建設業|2024年4月1日から時間外労働の上限規制が適用
建設業は、2024年4月1日から本格的に時間外労働の上限規制が適用されます。
違反した場合には、罰則(6ヶ月以下の懲役または30万円以下)が課せられるおそれがあります。
建設業には猶予期間がある
一般企業では時間外労働の上限規制は2019年4月(大企業)あるいは、2020年4月(中小企業)から始まっています。
しかし、建設業への適用は5年間の猶予期間が設けられ、2024年4月から適用されます。
なぜ建設業に猶予期間があるのでしょうか。
その理由は、前述した長時間労働や人手不足の問題を早期に解決することが難しく、一般企業のように上限規制の適用が困難と判断されたためです。
そのため、2024年4月までは働き方改革に取り組むための準備期間といえるでしょう。
2024年から適用される上限規制とは
労働基準法で定める原則的な労働時間は、1日8時間及び1週40時間です。
出典:厚生労働省「時間外労働の上限規制|わかりやすい解説」より
上記の時間を超える場合は、労働基準法第36条に基づく労使協定いわゆる36(サブロク)協定の届出が必要になります。
労使間で36協定を結んだ場合、時間外労働は月45時間、年360時間まで上限を延長できます。
しかし、企業によっては繁忙期など特別な事情により、時間外労働が月45時間を超えてしまう場合があります。
改正前までは労使間で「特別条項付き36協定」を結べば上限なしで時間外労働が可能でした。
今回の改正により、以下の条件で上限が設定されました。建設業は2024年4月から適用されます。
- 時間外労働は年720時間以内
- 1ヶ月の時間外労働と休日労働の合計が100時間未満※
- 2ヶ月から6ヶ月平均の時間外労働と休日労働の合計が80時間以内※
- 月45時間を超える時間外労働は年間で6ヶ月まで
※こちらの規制については、災害復興や復旧事業の場合には適用されません。
出典:厚生労働省「時間外労働の上限規制|わかりやすい解説」より
2024年までに建設業が取り組むべき働き方改革
国土交通省では、建設業が抱える課題を解消するため「建設業働き方改革加速化プログラム」を実施しています。
具体的には「長時間労働」「給与と社会保険」「生産性の向上」への取り組みを強化するための施策です。
それぞれについて解説します。
長時間労働への取り組み
長時間労働を見直して、週休2日制を実現するために次のような取り組みを行います。
- 公共工事での週休2日制拡大
- 公共工事での週休2日制における労務費などの補正導入
- 共通仮設費や現場管理費の補正率見直し
週休2日制を実施している現場を見える化することで、建設業への週休2日制導入をサポートしています。
また、建設業の生産性向上や適正な工期設定に取り組むため、「適正な工期設定等のためのガイドライン」が改定されました。
ガイドラインには、受発注者が協力し合いながら、長時間労働の是正や働きやすい労働環境の改善を実現する目的があります。
給与や社会保険への取り組み
給与や社会保険を見直して、働き手のスキルや経験に見合った給与体系や社会保険加入の徹底への取り組みを行います。
具体的には、次のような取り組みです。
- 建設キャリアアップシステムの構築
⇒技能者の就業実績や資格を登録でき、能力に適した処遇を行う - 能力評価制度の策定
⇒技能者の能力や技術を評価して、適切な待遇を行う - 退職金共済制度の普及
- 社会保険の加入業者に限定
⇒下請け業者も含め、すべての工事施工は保険加入業者に限定する - 建設業の許可・更新
⇒保険未加入の建設業者は、建設業の許可や更新ができない仕組みを構築する
給与体系の見直しや社会保険への加入は、離職者の削減や従業員のモチベーションアップにつながります。
生産性の向上への取り組み
i-Constructionを軸とするICTの活用により、生産性向上への取り組みを行います。
具体的には、以下にあげる取り組みを実施します。
- 建設業者へのICT導入を促進
⇒公共工事の積算基準を改善 - i-Construction大賞の拡大
⇒生産性向上に積極的に取り組む建設業者を表彰 - 申請手続きの電子化
⇒建設業許可などの手続き負担を軽減 - 工事書類の作成負担を軽減
⇒公共工事関係の基準類を改定
⇒IoTや新技術導入により施工技術向上と省力化を図る - 技術者配置要件の合理化
⇒限られた人材を有効的に活用する - 下請次数を削減
人材や資材の有効的な活用は、慢性的な人材不足問題を抱える建設業にとって大きなメリットになります。
活用できる助成金
働き方改革への取り組みで活用できる、次の3つの助成金について紹介します。
- 働き方改革推進支援助成金
- 業務改善助成金
- キャリアアップ助成金
助成金を上手く活用して、働き方改革に取り組みましょう。
働き方改革推進支援助成金
「働き方改革推進支援助成金」は、労働時間の短縮と有給休暇の促進のため環境整備に取り組む中小企業事業主に実施費用の一部が助成される事業です。
働き方改革推進支援助成金には、4つのコースがあります。
- 労働時間短縮・年休促進支援コース
- 勤務間インターバル導入コース
- 労働時間適正管理推進コース
- 団体推進コース
参照元:厚生労働省「労働時間等の設定の改善」
業務改善助成金
「業務改善助成金」は、生産性向上の支援と最低賃金の引き上げを図るための事業です。
生産性向上を目的とした機械設備やPOSシステム導入などの設備投資を実施し、事業場内の最低賃金を一定額以上引き上げた中小企業や小規模事業者に費用の一部が助成されます。
参照元:厚生労働省「業務改善助成金:中小企業・小規模事業者の生産性向上のための取組を支援」
キャリアアップ助成金
「キャリアアップ助成金」は、非正規労働者のキャリアアップ促進のため、正社員化や処遇改善に取り組む事業者を支援する事業です。
キャリアアップ助成金には、次のコースがあります。
- 正社員化支援
⇒正社員化コース
⇒障害者正社員化コース - 処遇改善支援
⇒賃金規定等改定コース
⇒賃金規定等共通化コース
⇒賞与・退職金制度導入コース
⇒選択的適用拡大導入時処遇改善コース
⇒短時間労働者労働時間延長コース
参照元:厚生労働省「キャリアアップ助成金」
まとめ
これまで、働き方改革の概要と時間外労働の上限規制について解説してきました。
注目すべきは、2024年4月から建設業に対して、「時間外労働の上限規制(罰則付き)」が適用となる点です。
時間外労働の上限規制に合わせて、生産性向上や適正な工期設定への取り組みが必須となります。
建設業では休日出勤や慢性的な人手不足など、多くの問題を抱えています。
問題を解決するためには、長時間労働の見直しや給与・社会保険への取り組み、生産性の向上といった働き方改革を実行していく必要があります。
働き方改革を通じて、働きやすい職場作りを目指していきましょう。
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