i-Constructionとは? 建設現場の生産性向上へ
2022.04.29
建築業界の長年の悩みである人手不足・高齢化。
この問題に対し国土交通省が大学の研究室や民間企業と一緒に進めている取り組みをi-Construction(アイ・コンストラクション)と言います。
「Information and Communication Technology」の略であるICT(情報通信技術)を取り入れた建設現場の生産性向上を目指しています。
本格的にi-Constructionの取り組みが始まって数年経っていますが、実際に詳しい内容までわかっている方は、それほど多くないのではないでしょうか?
この記事ではi-Constructionの目的や取り組み・導入のメリットについてわかり易く解説します。
今後、中小企業や地方の経営者層への講習や研修を通した普及が増えることが予想されます。
是非この記事を参考にしていただき、今後の事業のあり方の参考にしてください。
目次
i-Constructionとは?
2016年建設業界の生産性向上を目指し、国が主導でi-Constructionが本格的に始動しました。
ICT(情報通信技術)を装備した重機類(ICT建設機械)を実際の建設現場に積極的に取り入れ、生産性向上や安全面の確保を目指しています。
つまりITツールによる効率化が進んだ事務作業のように、建設現場でも人手や時間をかけず、効率よく工事を行うことが期待されるプロジェクトです。
熟練の作業員の高齢化や若年層の建設現場への就労が減る中で、限りある人員を有効活用し、生産性を上げ、利益確保を目指します。
i-Construction導入の目的
今日では次のような最新の技術が生活様式全般に取り入れられている今日。
- DX(デジタルトランスフォーメーション)
デジタル技術を取り入れた生活やビジネスの変容 - IoT(モノのインターネット)
家電や自動車をインターネットに接続すること
i-Constructionの導入は、建設業界でも技術の進歩に伴う業務効率化を取り入れ、生産性の向上を目指し、安全で魅力ある職場へ変化することも視野に入れています。
ITの進化により社会全体の労働環境改善が進む中、建設現場では、今でも3Kと呼ばれる(きつい・危険・きたない)過酷な労働条件のイメージが残っています。
建築業界は、若年層に労働条件のイメージから敬遠されがちなうえ、今後高齢の作業員の現場離れが予想され苦境に立たされています。
また、老朽化したインフラの改修整備や大規模な気象災害が増える近年では、復旧工事も増えることが予想されます。
こうした課題を解決する目的で、建設現場の生産性を向上させるプロジェクト=i-Constructionが始まりました。
i-Constructionの3本柱
建設業や工種別の生産性の現状から、土工やコンクリート工などでは、今後更なる改善の余地が残っているとの試算がされています。
参考:国土交通省の「i-Constructionの推進」より
i-Constructionでは次のように3つの柱を掲げています。
ICTの全面的な活用(土工)
土工工事の効率化をはかるため調査・測量・設計・施工なとあらゆる場面においてICTの導入促進をはかる
【建設現場におけるICT活用事例】
- 3次元測量
⇒ドローン等の活用による調査日数削減 - 3次元データ設計図
⇒3次元測量点群データと設計図面との差分から施工量の自動計算 - ICT建機を活用
⇒3次元設計データにより、自動制御やサポートされたICT建機を用いた施工
規格の標準化(コンクリート工)
規格の標準化 ✖ 全体最適設計 ✖ 工程改善
⇒コンクリート工の生産性向上による省力化や工期短縮によるコスト削減
施工時期の平準化
公共工事は、第一四半期(4月~6月)に工事が少なく偏りが激しい
⇒施工時期を標準化して工事量を安定化
- 技能者⇒収入安定
- 受注者⇒人材・機材の効率的配置
- 発注者⇒計画的な業務遂行
参考:国土交通省資料
i-Construction導入メリット
国が主導するi-Constructionを導入すると、どのようなメリットがあるのでしょうか?
次の3点について詳しく説明します。
建設現場の生産性向上
- ドローンによる3次元測量
⇒短時間で正確な測量 - 自動制御されたICT建機導入
⇒オペレーター経験が浅くても操作ミスが減り作業効率が上がる
3Kイメージからの脱却
- 建設現場の生産性の向上
- ICT建機使用による現場作業の遠隔支援、人と重機の接近検知など、安全衛生面の向上
- きつい、危険、汚いの3kのイメージ
⇒給与が高い、休暇が取れる、希望が持てるの新3Kへ
人手不足の解消
- 自動化・業務効率化
⇒人員を他の作業に当てられる - 生産性向上による労働条件の改善
⇒若年層の就業希望者が増えることが予想
i-Constructionの具体的な取り組み
国土交通省では、i-Constructionの推進に向け、「ベストプラクティス」として優れた事例を紹介し、「i-Construction大賞」として表彰しています。
国土交通省のホームページで確認できます(参考リンク:i-Construction推進コンソーシアム)。
ICT分野では、日々新しく技術が進歩しており、国土交通省もICT分野の普及に向けて、補助金などの制度も見直しが図られています。
各企業それぞれに合った制度を時機を逃さず取り入れて、自社に合うプランを導入するために、情報収集は欠かせません。
i-Construction導入にあたっての課題
i-Construction導入によって、生産性向上や安全面の推進など建設現場の人手不足解消に向けたメリットがありますが導入にあたり、いくつかの課題も見えてきます。
費用負担が大きい
建設機械やドローン等の利用におけるコストの増加
3次元データの作成・活用など、ソフトウェアの利用や管理のための費用
ITツール活用のための技術取得
自動制御されたICT建機の利用については、導入前に購入メーカーなどで行う研修に参加・技術習得が必要
3次元設計データ作成や施工データに基づくICT建機利用のための必要なIT知識習得
優れたICT建機やデータ作成ソフトウェアも、現在仕事に従事している高齢者にとっては、使いこなすことが難しい
費用対効果の見きわめ
i-Construction導入にあたり、国や地方自治体では、設備導入の際に活用可能な補助金や税優遇措置を行っています。
また人材開発支援の面でも助成金があり活用できます。
ただし、機械等設備の導入にかかる費用を早急に回収することは難しく、費用対効果の面で導入前にしっかりとした計画が必要です。
i-Constructionの今後の取り組み
i-Constructionの現状については、年度を重ねるにつれて、以下の国土交通省資料からもわかるように、公告件数に占める割合が,各工種ともに徐々に増加しています。
参考:国土交通省資料(i-Constructionの推進状況)より
国土交通省では土工から更なる活用を進めるべく、今後工種の拡大へと新たな取り組みを始めています。
参考:国土交通省資料(ICT施工の基準類の策定・改定の取組)より
中小企業への普及拡大
ICT施工の積極的な取り組みが進んでいる全国規模のゼネコンに対し、建設業界を支えている中小企業や地方での工事では、あまり進んでいないのが現状です。
主に小規模工事を請負う中小や地方の建設業界では、電話やFAXによる受発注業務も続いており、ITツールに慣れていない高齢者が従事しているのが現状です。
参考:国土交通省資料(i-Constructionの推進状況)より
今後は、小規模工事における対応や一部分のみ選択可能な簡易型ICT活用工事の導入、中小企業の経営者層向け講習会実施など、すそ野を広げた取り組みが始まっています。
人材確保・育成
今後は、ICT施工を積極的に取り入れている大手ゼネコンやメーカ担当者による情報の共有や成功事例の紹介を通じた、より一層の人材育成が期待されています。
建築業界全体では、高齢の従事者が占める割合が高く、ITツール技術の習得には、時間がかかりハードルが高いのが現状です。
今後は、建設業界も積極的にITツールを取り入れていることを発信し、若年層の人材の確保が急務になります。
まとめ
i-Constructionは、生産性を上げることで、建設業界を取り巻く高齢化や若年層の離職による人手不足に対応できる取り組みです。
中小企業にとっては、機材の導入に伴う費用や人材の確保の問題があり、すぐに取り掛かることが難しいのが現状です。
それでもこのままの旧態依然の施工を続けていては、先端技術を取り入れた企業との格差が目に見えてきます。
i-Constructionについて理解することで、助成金を利用しながら機材や人材の確保を進め、将来の事業の安定につなげていけるでしょう。
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