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安全協力会費における消費税区分の取り扱いと控除額算出方法を解説

2022.08.25

コラム

建設現場の安全と工事をスムーズに進めるため、協力会社や下請け業者から徴収される安全協力会費。

工務店が工事を依頼する際には、安全協力会費を徴収する立場となります。

  • 安全協力会費の使い道は?
  • 安全協力会の目的は?
  • 安全協力会費に消費税はかかる?
  • 安全協力会費は法律で定められている?

など、疑問も多いなか、正しく理解しないまま支払っている方もおられるのではないでしょうか?

そこで本記事では、安全協力会費の概要や消費税区分の取り扱いについて詳しく解説します。

毎月の控除額を効率よく算出できる方法についても解説していますので、参考にしてください。

安全協力会費とは

安全協力会費とは、工事現場の事故を防ぎ、安全に現場が完了するよう元請が現場に出入りする業者に対し、協力金の名目で徴収する会費のことです。

元請によっては、安全協力会費を徴収していない場合もありますが、支払った際の勘定科目は「諸会費」や「雑費」として貸方に計上し「費用」となります。

徴収する方法は、主に次の2通りです。

  • 規模の大きな現場では、協力業者の現場代理人や番頭を集めて毎月行う安全協議会の際に現金で徴収する
  • 注文書・注文請書にあらかじめ「安全協力会費として、支払額の◯%を申し受けます」と記載し、双方合意の上、支払額から相殺する

安全協力会費は、安全衛生協力費や安全会費とも呼ばれます。

安全協力会費の目的

安全協力会費は、元請が協力業者に対して、安全衛生に関する意識向上や技術研修会開催などの名目で徴収する会費です。

徴収した会費は、さまざまな取り組みに利用されます。

  • 人的ミスによる事故を防止するため、注意喚起のポスターやパンフレット、のぼりを作成し配布
  • 講師を招いて、労働災害事例の紹介や安全器具の着用方法などの講習会を開催
  • 工事現場の安全パトロールを実施
  • 安全に作業ができるようにヘルメットや安全帯(フルハーネス)などの保護具を配布
  • ヒヤリハットやKY活動を実施
  • 優良現場への表彰など

安全協力会費のしくみ

安全協力会費は、労災保険料などの社会保険料に充当される費用です。

建設業の労災保険は一般的な労災保険と違い、元請が加入する労災保険によって元請業者や下請け業者で働く労働者の労災保険を補償します。

そのため、協力会社や下請け業者は保険料を負担する必要はありません。

その代わりとして安全協力会費が徴収され、集めた協力会費は保険料の掛け金に充てられます。

しかし、すべての現場で安全協力会費が保険料の掛け金に充当されるわけではありません。

元請と下請け業者との立場関係によっては、義務的・強制的に安全協力会費が徴収される場合もあるようです。

安全協力会費は保険料の掛け金のほかに、

  • 安全衛生活動への取り組み
  • 懇親会費
  • 福利厚生費

などにも流用されます。

安全協力会費の法的な根拠(法律)

安全協力会費は主に「建設業法」と「建設業法施行令」の2つの法律に法的根拠があります。

建設業法

建設業法第24条第7項
(下請負人に対する特定建設業者の指導等)

「発注者から直接建設工事を請け負つた特定建設業者は、当該建設工事の下請負人が、その下請負に係る建設工事の施工に関し、この法律の規定又は建設工事の施工若しくは建設工事に従事する労働者の使用に関する法令の規定で政令で定めるものに違反しないよう、当該下請負人の指導に努めるものとする。」

引用元:e-GOV法令検索 建設業法

ただし、元請と協力業者双方の合意がなく、安全協力会費の名目で強制的に徴収される場合には、建設業法上違反となる場合もあるので注意が必要です。

国土交通省の建設業法令遵守ガイドライン(P.32)に、

「安全協力費については下請工事の完成後に当該費用の収支について下請負人に開示するなど、その透明性の確保に努め、赤伝処理による費用負担が下請負人に過剰なものにならないよう十分に配慮する必要がある。」

という記載があります。

元請は、安全協力会費としての収支報告を明白にし、会員である協力業者の費用負担に関して十分配慮しなければいけません。

参考

建設業法第18条

(建設工事の請負契約の原則)

「建設工事の請負契約の当事者は、各々の対等な立場における合意に基いて公正な契約を締結し、信義に従つて誠実にこれを履行しなければならない。」

引用元:e-GOV法令検索 建設業法

強制的な安全協力会費の徴収は、建設業法第18条に抵触する可能性があります。

建設業法施行令

上記の建設業法第24条第7項(下請負人に対する特定建設業者の指導等)を受けて、建設業法施行令第7条第3項で次のように規定されています。

「法第二十四条の七第一項の政令で定める建設工事の施工又は建設工事に従事する労働者の使用に関する法令の規定は、次に掲げるものとする。」

引用元:e-GOV法令検索 建設業法施行令

安全協力会費はどのくらい支払うのか?

安全協力会の運営方法や会則は、その協力会ごとの裁量に任されています。

よって、安全協力会費についても協力会によって千差万別です。

法的根拠でも述べたように、安全協力会費の費用については元請と協力会社間でしっかりと話し合い、費用負担が過剰にならないように注意する必要があります。

「定額」や「支払額の◯%」などの徴収方法を、双方合意の上で決定しておきましょう。

安全協力会とは

安全協力会は、元請と協力業者の連携と協力により、主に安全な工事と労働災害の未然防止などを図る目的で発足した組織です。

安全協力会では次のような活動を実施しています。

  • ケガや事故への注意喚起
  • 災害事例の紹介
  • ポスターや記念品の配布
  • 月1回の委員会
  • 年1回の安全大会
  • 安全や衛生、品質、技術に関する講習会
  • 安全パトロールなど

上記活動の目的は、

  • 業者間同士の親睦を深める
  • 現場の安全に対する意識向上
  • 作業品質の向上
  • スムーズな工程管理

など、元請と協力業者間で、共存共栄を図ることです。

また、それぞれの協力会によって以下のような「規約」を定めています。

  • 目的
  • 役員・組織図
  • 運営や会費など

安全協力会費は消費税の課税もしくは非課税対象?

安全協力会費において消費税の課税区分は、課税?非課税?どのようになっているのでしょうか。

一般的に、安全協力会費は「諸会費」のため、非課税扱いになります。

安全協力会費の支払いは原則、消費税の課税対象外(非課税)

安全協力会費は労災保険などの社会保険料に充当する場合や、協力会を運営する会費と見なされた場合は、対価関係がないため課税仕入れにはならず、非課税扱いとなります。

この根拠として、

「同業者団体や組合などに支払う会費や組合費などが課税仕入れになるかどうかは、その団体から受ける役務の提供などとの間に明らかな対価関係があるかどうかによって判定します」

と国税庁が明記しているからです。

引用元:国税庁タックスアンサー「No.6467 会費や入会金の仕入税額控除」

 

また、注意喚起が書かれたポスターやチラシの配布は、安全協力会費と「明らかな対価関係がある」と証明できないため、非課税対象になります。

安全祈願としてお守りを受け取った場合も、同様に課税仕入れと認められず非課税対象です。

消費税区分は課税?非課税?見分けるポイント

見分ける際のポイントは以下の2点です。

  • 事前に安全協力会が課税対象外であると通知している場合
    :「非課税」
  • モノやサービスの対価として支払いがあった場合
    :「課税仕入れ」

明らかに安全協力会費の用途が、懇親会や研修会などの交際費とみなされた場合は課税扱いとなる場合もあります。

対価性が不明で課税対象外と通知している場合は非課税

安全協力会でのセミナー受講や保護具などの備品を受け取っているとしても、安全協力会費や安全活動費の金額に見合わず、対価性があるかどうか不明な場合があります。

その場合、メールやはがきで安全協力会が「当会の安全協力会費・安全活動費は消費税の課税対象外として扱っています。」と通知していることが判断ポイントです。

通知した上で、安全協力会も協力会社もお互いに「課税対象外(非課税取引)」として経理処理している場合は、その取り扱いが認められます。

安全協力会費や安全活動費の対価性について不明な場合は、安全協力会に確認してください。

明白な対価関係がある場合は課税対象

安全協力会が協力会社や下請け業者に対して取り組む活動と安全協力会費との間に明白な対価関係(費用に見合った使い道)がある場合は、「課税対象」になります。

具体的な課税仕入れの対象は次の通りです。

  • 防災対策や安全教育セミナー・講習会
  • ヘルメットや安全帯など保護具の配布
  • 安全性の高い機械装置の導入
  • 事故防止の技術指導・研修会

なお、安全喚起のポスターやチラシまた記念品の配布などは、明白な対価関係があると必ずしも言えないため課税対象になりません。

安全協力会費の控除額算出方法

協力業者や下請け業者が安全協力会に参加し、協力会費を支払うことは法律で定められているわけではありません。

義務ではありませんが、危険が伴う建設現場では元請が主導のもと、協力業者も一緒になって安全衛生活動に積極的に参加していくことが望ましいでしょう。

ここでは、安全協力会費の算出方法について解説します。

お互いの合意のもとに

毎月の支払額から相殺される安全協力会費を、負担に感じている協力会社もいることでしょう。

しかし、仕事を請け負う立場からすると、安全協力会費を断ることは難しい問題です。

元請は安全協力会費の使途について事前に説明し、安全活動に関するポスターやパンフレットの配布など、常に安全面への配慮が必要になります。

工事現場に入る協力業者は、元請に自分の命をゆだねているという意識を持ち、お互いに配慮し合うことが重要です。

安全協力会費 画像1

引用元:国土交通省「建設企業のための適正取引ハンドブック」

請求額から自動計算する

工務店が仕事を発注する場合、業者ごとに支払額から決められた料率で安全協力会費を算出し、控除額を差し引いたのちに請求処理することが一般的です。

しかし、料率や条件が業者ごとに異なるため、経理担当者にとって毎月正確な支払金額を算出することは負担となります。

そこでエクセルを使用した、効率的な安全協力会費の算出方法の紹介です。

あらかじめ業者ごとに安全協力会費の料率を設定しておけば、請求額を入力するだけで自動的に安全協力費や請求額を算出できます。

安全協力会費 画像2

例えば◯◯会社の場合、200,000円の請求額に8%の料率を掛けた16,000円が、安全協力会費です。

立替金(5,000円)を控除すれば、振込支払額(179,000円)まで算出できます。

まとめ

本記事では、安全協力会費の概要と消費税区分の取り扱いについて解説しました。

基本的に安全協力会費は非課税扱いとなりますが、明白な対価関係がある場合には課税対象となるため注意が必要です。

安全協力会費の使い道が不透明なため、実態がわからず不要ではないかと捉える方もいますが、建設現場では危険を伴う作業が日常的に行われています。

そのため、元請と下請け業者が協力し合いながら、安全面に配慮して工程を進めていくことが大切です。

お互いに食い違いがないよう、元請は協力会社や下請け業者に対し、安全協力会費についてしっかりと説明し、双方に合意した上で契約を交わしましょう。

 

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