工事請負契約書の作成方法は?目的や項目を理解しトラブルを回避しよう
2022.08.29
工事の大小にかかわらず、発注者と請負業者とのトラブルを防ぐために工事請負契約書を結ぶことが重要です。
ところが注文書や注文請書、工事請負基本契約書など、多くの契約書類がある中で、工事請負契約書とは、具体的にどのようなものなのでしょうか?
こちらの記事では、工事請負契約書の目的や記載項目、作成方法についてわかりやすく解説します。
併せて、注意すべきポイントについても説明しますので、実際に工事請負契約書を作成・取り交わす際の参考にしてみてください。
工事請負契約書とは
工事を発注し、請負業者が工事に取り掛かるには、事前に工事請負契約を結ぶことが一般的です。
ここでは、工事請負契約書を結ぶことで発注者や請負業者にとってどのような意味を持つのか?
工事請負契約書の目的や必要性について説明します。
工事請負契約書を結ぶ場面
事前に見積書を提出し、工事を着工する際に、事前に発注者と請負業者の間で工事請負契約書を作成します。
工期の長い建築工事だけでなく、住宅リフォーム工事など、いざ実際に工事に取り掛かると事前に見積りしていた通りには、いかない場面が増えてきます。
- 追加工事の請求は?
- 工期延長の場合は?
- 近隣住民からのクレーム対応は?
工事が進むにつれて、起こり得るさまざまな場面を想定し、工事に取り掛かる前に工事請負契約書を取り交わすことが重要になります。
『工事に取り掛かる前に』が、工事を請負う側にとって非常に重要になります。
工事請負契約書を作成する理由
事前に工事について双方で設計書や見積書を取り交わして着工となりますが、発注者と請負業者の間では、トラブルを防ぐため工事請負契約書を作成することが通常です。
特に住宅建築やリフォーム・修繕工事においては、内容が多岐にわたり、双方の意見の食い違いでトラブルが生じやすく、工事請負契約書の確認が大切です。
発注側と請負側、双方のトラブルを避ける
建築やリフォーム工事に関する契約では、扱う項目も多く、事前にどのようなことが問題になるのか?内容を把握しておくことが理想です。
事前に見積書で確認している部分についても、双方の認識の違いによって施工時に意見の食い違いが見られることがあります。
そのようなトラブルを防ぐためにも工事請負契約書には、詳しい内容を記載してお互いに合意の上で工事を進める必要があるのです。
請負側が不利にならないように
工事を発注してもらう立場から、どうしても請負業者が不利となる契約を結ばざるを得ないケースが多く見られます。
請負業者に不利となる契約を結ぶことを請負契約の片務性と言い、経営基盤の弱い下請業者にとって非常に問題となっています。
- 代金支払い時期や支払方法の変更など
- 資材の購入先やリース先を一方的に指定される
- 天候や災害などによる不可抗力による損害負担を請負業者へ負わせるなど
このような問題を防ぐためにも事前に双方が納得のうえで工事請負契約書を結ぶことが重要です。
工事請負契約書に必要な記載項目
ここでは、実際に工事請負契約書を作成するにあたり、具体的に必要となる項目について説明します。
工事請負契約書には、法律により記載すべき16の項目が決められています。
(2020年の法改正以前の14項目に2項目が追加となりました。)
建設業法で記載が義務付けられている16項目
~建設業法19条~
- 工事の内容
- 請負代金の額
- 工事着手及び工事完成の時期
- 「前払金」「出来高払」「工事完了部分」など支払の取り決めをする場合は、その支払方法や時期
- 「設計変更」「工事着手の延期」「工事中止」等申し出があった場合、「工期変更」「請負代金の額の変更」「中止による損害の負担と算定方法」
- 「天災など不可抗力による工期変更」や「損害の負担及びその額の算定方法」
- 価格変動及び変更に基づく請負代金の額の決め方、工事内容の変更の方法
- 工事の施工により第三者が損害を受けた場合の賠償金の負担に関する定め
- 注文者が工事に使用する資材・建設機械を提供または貸与する際は、その内容・方法に関する定め
- 注文者が工事の一部の完成、または全部の完成を確認するための検査の時期・方法・引き渡しの時期
- 工事完成後の請負代金の支払い時期・方法
- 工事の目的物が契約内容に適合しない場合、その責任または当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容
- 履行遅滞時の利息・違約金、損害金について
- 契約に関する紛争解決方法
これに加え新法が追加(2020年10月~)
- 工期を施工しない日
- 時間帯
工事によって内容が異なる8項目
工事請負契約書は、工事によって内容が変わってくる項目があります。
具体的には以下の8項目となりますので、テンプレート利用や以前に作成した契約書を再利用する際には、必ず変更しましょう。
- 工事名
- 工事場所
- 工期(工事着手および工事完成の時期)
- 工事を施工しない日、施工しない時間帯
- 請負代金額
- 請負代金の支払い時期と方法
- 調停人(定めない場合は削除する)
- その他の項目
工事請負契約書の付属書類
工事請負契約書の添付書類には、工事請負契約約款があります。
工事請負契約書では、どうしても工事を発注する側に有利となる片務契約が多くなってしまいます。
このようなトラブルを防ぐために工事請負契約書に添付する工事請負契約約款を作成します。
代表的な物として以下の4つがあります。
公共工事標準請負契約約款 (公共工事用)
国の機関、地方公共団体、政府関係機関が発注する工事の請負契約対象。
民間建設工事標準請負契約約款(甲) (民間工事用)
民間の比較的大きな規模の工事を発注する者と建設業者との請負契約対象。
民間建設工事標準請負契約約款(乙) (民間工事用)
個人住宅などの民間の比較的小さな規模の工事を発注する者と建設業者との請負契約対象。
建設工事標準下請契約約款 (下請工事用)
公共工事や民間工事に関係なく、建設工事の下請契約全般対象。
ただし、国土交通省が作成している約款は、発注者側に有利となる項目もあるのできちんと確認して独自に作成することをおすすめします。
- 違約金
- 工期の延長
- 追加工事代金・支払義務
- 近隣クレーム対応など
その他にも契約図面や見積書を添付して、工事請負契約書を取り交わし双方の認識相違によるトラブルを未然に防ぎます。
工事請負契約書作成時のポイントは?
工事請負契約書を効率よく作成するには、パソコンやテンプレートを利用する方法があります。
以下の記事を参考にしてみてください。
それでは、工事請負契約書作成にあたり、注意すべき点を具体的に説明します。
遅延の際の違約金
民間建設工事標準約款(乙)第33条では、工事業者の責任により、完成・引き渡しが遅れたときは、代金全額に対して年14.6%の違約金を請求できる内容になっています。
参照:民間建設工事標準請負契約約款(乙)より
しかし、法律上、通常、遅延に対しては年5%または6%で計算することとされており、14.6%としている標準約款は法律よりも高い違約金支払いとなり、粗利が無くなるどころか、赤字になる危険がありますのでより注意が必要です。
工事遅延に関する違約金については、発注者側と協議し適切な金額をあらかじめ定めておくことをおすすめします。
工期延長の際の取り決め
建築工事では、様々な理由により工期の延長が起こります。
工事が遅延した場合に、工期延長の違約金を課されることを避けるためにも、工事請負契約書を作成する際に工期を延長できる規定を設けておく必要があります。
ただし標準請負約款では工期の延長は、発注者側と協議をして定めるとなっていますので、「天候不順」や「発注者の仕様決定の遅れ」など、発注者の同意がなくても、延長できるようにしておくと良いでしょう。
追加工事代金発生について
工事が進むにつれて、当初の予定よりも追加の工事代金が発生することがあります。
標準請負約款では、追加工事代金は、発注者側と協議のうえ定めるとなっています。
追加工事の代金が発生した場合は、追加代金の請求が可能になる旨をしっかりと明記しておきましょう。
近隣住民からのクレーム対応
近隣からの工事に関するクレーム対応についても注意が必要です。
クレーム対応により工期が延長された場合には、違約金の支払いをせずに工期の延長ができるように明記しましょう。
また、あきらかに工事業者に責任がない場合の近隣住民からのクレームには、発注者側の責任や費用により問題解決を目指すと明記すると請負業者にとって理想的な工事請負契約書となるでしょう。
地中に障害物があった場合の対応
また標準請負約款では、『土壌汚染、地中障害物の発見などにより請負金額に変更がある場合は、発注者側と協議のうえ決定する』となっています、
当初想定外の地中障害物発見による追加代金の請求は、発注者の承諾がなくてもできるように明記しましょう。
工事請負契約書の印紙税とは?
請負にかかわる契約書には、印紙税がかかります。
印紙税は、通常契約書を作成した側が負担しますが、2通作成しそれぞれが保管する場合は、お互いに負担することもあります。
詳しい内容はこちらの記事を参考にしてみてください。
印紙税の軽減措置
租税特別措置法により、建設工事の請負に伴って作成される請負契約書について、印紙税の軽減措置が講じられ、税率が引き下げられています。(記載金額が100万円を超えるもので平成26年4月1日から令和6年3月31日までに作成されたもの)
まとめ
工事請負契約書の目的や作成方法についての解説でした。
建設工事において認識の相違によるトラブルは今後の受注や発注にむけて双方ともに避けなくてはなりません。
工事請負契約書に必要な項目や作成する上での注意すべき点を考慮して、自社にあった適切な契約書を作成または取り交わすようにしましょう。
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