【建設業】工事発注書の役割とは?書き方や注意点をわかりやすく解説
2022.02.04
建設工事の現場は簡単な手すりなどの取り付けから、いくつもの工区に分かれる大型施設の工事など実に多彩な場面が想定されます。
例えば、軽微な工事の場合、口頭だけで契約する場合もあります。
しかし、数か月に及ぶ工事になると、口約束だけでは認識にズレが生じ、取引先とトラブルに発展してしまう恐れも……。
トラブルになれば工事自体が遅れるだけでなく、不要な経費も増えて粗利の減少につながりかねません。
そのような事態を避けるため建設業界では、工事を契約する際には一般的に工事発注書を作成します。
今回は工事発注書の役割を解説しながら、書き方や注意したいポイントについてわかりやすく解説しています。
目次
工事発注書とは
工事発注書とは工事発注者が受注者に対して作成する契約文書のひとつで、一般的に
- 工事内容や工期
- 取引先の名称
- 注文金額
- 支払い方法
などの情報を記載します。
工事発注書の主な役割
工事発注書の主な役割は次の2つです。
- 認識のズレを防ぎ、トラブルを回避する
- 発注意思を示し、注文を確定する
建設業では口約束だけで契約を取り決めたり、工事発注書を交わさずにメールだけで発注したりする場合が多々あります。
口頭だけであいまいに契約してしまうと、発注者と受注者との間に認識のズレが生まれ、トラブルやクレームに発展する恐れも……。
具体的には以下のようなトラブルが考えられます。
- 想定していた施工内容とは違う工事が行われた
- 追加工事が増えて、予想外に費用がかかった
- 工事日程の聞き間違いで、予定通りに工事が進まなかった
上記のようなトラブルが発生した場合、工事発注書がないと「言った、言わない」の水掛け論になりかねません。
そうならないためには工事に関する詳しい情報を工事発注書に記載し、書面で残しておく必要があります。
工事発注書の保存期間
工事発注書は法人税法で帳簿書類に該当し、以下の保存期間が定められています。
工事発注書を受け取った企業は、確定申告の提出期限から7年間保存しなければいけません。
書面を受理したら、自社の都合で破棄してしまわないように注意してください。
保存は原則、紙での保存となります。
しかし、すべてのデータを紙で保存していたら、莫大な量となり保存場所の確保も大変です。
そのため、工事発注書をスキャナーで読み取り、電子データとして保存する方法をおすすめします。
これまでは電子データで保存する場合、一定条件を満たし所管の税務署に申告・許可を得る必要がありました。
しかし、令和3年度の税制改正で電子帳簿保存法が改定され、税務署長による事前承認制度が廃止となりました。
令和4年1月1日以後に保存する書類について適用されます。
工事発注書と工事注文書、注文請書との違いとは
工事発注書と似通った書類が工事注文書や注文請書です。
工事発注書との違いについて解説します。
工事発注書と工事注文書の違い
工事発注書と工事注文書は、言葉が違うだけで法律的に大きな違いはありません。
ただし、取引する対象によって工事発注書と工事注文書を使い分けている企業も見受けられます。
例えば、施工や作業のように形がないものは工事発注書、形がある資材や製品には工事注文書にするなど形の有無で使い分けるケース。
また、素材や原料をそのまま加工せずに使う場合は工事発注書、加工が必要な場合には工事注文書にするなど、加工の有無での使い分けです。
上記のように企業によって使い分けが多種多様なため、わからない場合は事前に区別の仕方を確認しておくと良いでしょう。
工事発注書と注文請書の違い
工事発注書と工事注文書に法律上の違いはありませんが、工事発注書と注文請書は異なります。
工事発注書は発注者が注文の意思を取引先に示し、注文を確定するための書類に対して、注文請書は発注を受けた業者が、その注文を引き受けたことを示すための書類です。
したがって、契約は工事発注書が発行されたあとに注文請書が発行される流れとなり、工事発注書と注文請書をやり取りすることで契約が完了します。
注文請書は印紙税法の課税文書(第2号文書)にあたるため、工事を請け負う金額に応じた収入印紙が必要です。
参考:国税庁「印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」
工事発注書の書き方・記載項目
工事発注書に所定の様式はありませんが、業者同士でトラブルにならない程度の記載項目が決められています。
工事発注書を書くときは、以下の項目が記載されているか確認してください。
- 発注先業者名:工事を依頼する協力業者
- 発注日:協力業者に工事を依頼または注文した日
- 施工現場名:工事現場の名称
- 工事納期:依頼する工事期間
- 支払い期日:支払いする期日
- 支払い条件:支払い方法を明記
- 発注者名:発注した元請業者の名称、書類作成者と記載される場合も
- 発注明細:工事の具体的内容や工事明細
- 発注合計金額:工事を依頼する合計金額
- 備考欄:特記事項や補足事項に利用
上記のなかでも特に、「発注先業者名」「発注日」「発注者名」「発注合計金額」に関しては、国税庁が記載を推奨している項目のため、必ず記入するようにしましょう。
工事発注書の作成方法
工事発注書の書き方と記載項目について確認しました。
次の工事発注書を作成するための4つの方法について解説します。
市販のテンプレートを使用する
ひとつ目の作成方法は市販のテンプレートを用いた方法です。
市販されている工事発注書を購入して、必要な記載事項を手書きで記入してください。
パソコン操作が苦手な方におすすめの方法です。
ただし、修正する際に書き直す必要がある点、テンプレート購入に費用がかかる点に注意しましょう。
ワードで作成する
2つ目はワードを用いた作成方法です。
インターネット上には無料で提供されている工事発注書のワードテンプレートが多数公開されています。
そのなかから、自社に合ったテンプレートをダウンロードして必要事項を入力してください。
ある程度のパソコン操作ができる方なら、手書きで記入するよりも迅速で能率のよい作成が可能です。
工事発注書が完成すればデータとしてメールで送受信できるため、やりとりがスムーズでペーパーレス化などコスト削減にもつながります。
エクセルで作成する
3つ目はエクセルを用いた作成方法です。
エクセルは関数を使った計算やデータ集計ができるため、スムーズかつ正確に工事発注書を作成できます。
ワードと同じく、インターネット上に無料のエクセルテンプレートが公開されているため、活用しましょう。
システムを利用する
4つ目は専用のシステムを用いた作成方法です。
建設業に特化したシステムには、業務を効率的に進めるための機能が多数搭載されています。
例えば、顧客情報や見積もり情報、工程などを一元管理できるシステムであれば簡単に工事発注書の作成が可能です。
また、システム内のテンプレートを用いれば、必要事項が記載済みであったり、編集が容易に行えたりなどの利点があります。
導入にはコストがかかりますが、作業のムダを省いて能率アップを図りたい方には専用システムの活用がおすすめです。
工事発注書を作成する際の注意点
工事発注書作成に関する注意点は次の4つです。
- 工事発注書の訂正方法
- 押印の有無について
- 印紙の有無について
- 契約約款の有無について
項目ごとに解説します。
工事発注書の訂正方法
工事発注書に記入ミスが発覚した場合、原則として訂正を加えた工事発注書を再発行しなければいけません。
しかし、工事発注書を再発行できない状況であれば、間違った箇所に二重線を引き、線を引いた上あたりに正しい文字を書いて訂正印を押します。
訂正印には工事発注書に使用したものと同一の印鑑を用いてください。
取引企業によっては独自の訂正方法を設けている場合があるため、勝手な判断で訂正するのではなく、先方に確認してから訂正するように心がけましょう。
押印の有無について
工事発注書への押印は必須ではありませんが、印鑑や社印がなくても取引は成立します。
しかし、工事発注書の発注者名に重なるように社印を押すことが一般的です。
工事発注書には発注明細や納期、工事金額などの詳しい情報が記載されています。
工事発注書の押印は、これらの情報や契約が正式な内容であることを示すと同時に改ざん防止にも役立ちます。
印紙の有無について
工事発注書は発注意思を示すための書類なので、基本的に収入印紙を貼る必要はありません。
しかし、工事発注書のみで契約や同意が完了する場合には課税文書に該当するため、収入印紙が必要になってきます。
工事発注書に収入印紙が必要な場合は次の通りです。
- 基本契約で工事発注書のみで契約が成立する旨に合意している場合
- 工事発注書が見積書に対しての申し込みであることが明記されている場合
- 工事発注書に当事者双方の署名や押印がある場合
工事発注書にプラスして注文請書を作成する場合には、収入印紙は必要ありません。
契約約款の有無について
工事発注書を作成する際には、もうひとつ注意すべき点があります。
工事契約が頻繁にある取引先の場合、個別に基本契約を結んでいれば約款の添付は不要です。
工事発注書に「記載事項以外については、基本契約書通り」と明記しておきましょう。
約款とは不特定多数の者と取引するために、あらかじめ作られた定型的な契約条項です。
しかし、取引先と基本契約を結んでいない場合には、注文書の裏面や別紙に約款を添付する必要があります。
その際、約款が複数ページとなる場合には割り印が必要です。
まとめ
本記事では工事発注書の役割や書き方、注意点について解説しました。
建設業では、いまだに口約束や簡単なやり取りだけで契約することが多くあります。
しかし、発注者と受注者との間に認識のズレがあればトラブルが発生する恐れもあるため、工事発注書を作成して書面で残しておくことが大切です。
工事発注書には決まった書式はありませんが、発注先業者名や発注日、発注合計金額、発注者名など必ず記載する項目は決まっています。
工事発注書を作成する際に不明点や気になる項目がありましたら、ぜひ今回の解説を参考にしてください。
正しく工事発注書を作成して、互いに気持ちよく仕事に取り組める環境にしていきましょう。
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