建設業における法定福利費とは?算出方法や見積書への記載方法について解説
2024.05.20
建設業では平成25年から法定福利費を含めた見積書の提出が義務付けられました。
とはいえ、見積書に法定福利費を記載していない、見積り金額に含まれていないという方も多いのではないでしょうか?
本来受け取るべきお金を受け取り、適切な保険に加入することが重要です。
この記事では法定福利費の算出方法や見積書の記入方法について詳しく解説します。
目次
法定福利費とは
法定福利費とは、従業員を雇用している事業者が負担しなければならない保険料のことで、雇用保険や健康保険など6つの保険種類があります。
法律で定められているため、事業主の負担が義務付けられており、年度や業種、地域によって負担額も変わってきます。
自社の法定福利費を正確に把握することが重要です。
それでは法定福利費の基礎について詳しく解説します。
法定福利費の率
法定福利費は、「労務費総額×法定保険料率」で算出されます。
ただし、保険料率は年度によって異なりますし、健康保険料率については各都道府県によっても異なるので注意が必要です。
該当する社会保険料率を正しく把握して法定福利費を算出することが重要です。
法定福利費の消費税
法定福利費は、労働基準法や健康保険法など法律で定められており、事業主が必ず負担しなければならない費用です。
健康保険料や厚生年金保険料などの社会保険料がそれに該当します。
なお、法定福利費には消費税はかかりません。
法定福利費と福利厚生費
よく勘違いされがちですが、法定福利費と福利厚生費は全く別のものです。
法定福利費は事業主に義務付けられているもの、福利厚生費は事業主が任意で提供しているものです。
法定福利費には消費税はかかりませんが、福利厚生費には消費税がかかります。(一部非課税あり)
法定福利費の内訳
- 雇用保険
- 厚生年金保険
- 健康保険
- 労災保険
- 介護保険
- 子ども・子育て拠出金
法定福利費の内訳には以上のものがあります。
この内、労災保険、子ども子育て拠出金は全額事業主が負担しますが、その他の法定福利費は事業主負担と従業員負担があります。
この章ではそれぞれの内訳について詳しく説明します。
雇用保険
雇用保険とは、労働者の生活および雇用の安定を図るとともに再就職の支援を行うことなどを目的とした制度です。
- 31日以上継続して雇用されることが見込まれる者であること
- 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
以上2つの条件を満たすことが、雇用保険の適応基準となります。
この条件を満たせば、パートやアルバイトでも雇用保険の加入対象になります。
厚生年金保険
厚生年金保険は事業所ごとに加入する保険で、会社員や公務員が入る公的な年金制度です。
国民年金に上乗せして加入する保険で、標準報酬月額(1等級~32等級)に9.15%をかけた額が給料から天引きされます。
実際に年金としてもらえるのは65歳からですが、繰り上げることも繰り下げることもできます。
健康保険
日本では国民皆保険制度が導入されており、全ての国民が公的医療保険に加入し、保険料を支払う仕組みになっています。
- 被用者保険(協会けんぽ、組合管掌健康保険、船員保険、共済組合)
- 国民健康保険
- 後期高齢者医療制度
被用者保険は、会社員や公務員またその扶養家族を対象とした健康保険で、窓口負担は3割です。
国民健康保険は、主に自営業や農業、無職の人を対象とした健康保険で、こちらも窓口負担は3割です。
後期高齢者医療制度は、65歳以上で障害を持つ人、75歳以上の人を対象とした健康保険で、窓口負担は1割です。
ケガや病気などによる休業、出産や死亡などの事態に備えるために加入者が保険料を払い、その財源を元に必要な人が必要な時に保険給付を受けられる医療保険制度なので必ず加入しましょう。
労災保険
労災保険(労働災害保険)は、就業中や通勤途中でのケガや事故、病気の際に労働者や遺族に、必要な保険給付を行う制度です。
労災保険の保険料は全額が事業主負担となり、従業員の負担はありません。
また、労災保険の保険料率は業種によって異なり、建設業界は災害の発生率が高いため他の業界より保険料率が高くなっています。
介護保険
家族における状況変化にともない、社会保障費が増大したのを背景に介護保険制度は産まれました。
核家族化や少子高齢化が進み、自宅での介護がむずかしくなる中で、介護保険制度は重要な社会保障となっています。
40歳以上になると介護保険の加入が義務付けられ、保険料を納付する必要があります。
40歳~64歳まで保険料を納付し、65歳以上からサービスを受けることができます。
子ども・子育て拠出金
以前の「児童手当拠出金」が2015年に名称が変わり、現在の「子ども・子育て拠出金」になりました。
- 児童手当の支給
- 地域子ども・子育て支援事業
- 仕事・子育て両立支援事業
拠出金の用途は以上の通り、子育てに役立つさまざまな支援事業に充てられています。
また、子ども・子育て拠出金は従業員の負担はなく、企業及び個人事業主が全額負担します。
法定福利費の計算方法
法定福利費は労務費総額×法定保険料率で算出することができます。
各法定福利費(雇用保険、厚生年金保険、健康保険、労災保険、介護保険、子ども・子育て拠出金)の料率が決まっているので、まずはそれぞれの保険料率を正しく把握することが重要です。
ここでは法定福利費の計算方法の注意点や見積書への記載方法について詳しく説明します。
料率は年度、業界によって違う
法定福利費はそれぞれの社会保険料率を元に算出します。
- 雇用保険料率:1.85%(建設事業の場合)
- 厚生年金保険料率:18.3%(労使折半)
- 健康保険料率:都道府県による
- 労災保険料率:9.5%(建設事業の場合)
- 介護保険料率:1.60%
- 子ども・子育て拠出金料率:0.36%
厚生年金保険、介護保険、子ども・子育て拠出金、以外は業界の参考値になりますが、年度や業界によって違いがあります。
法定福利費の計算方法の注意点
法定福利費の計算方法で注意するべき点は、前項で説明させて頂いた通りそれぞれの保険料率は異なっているということです。
年度や業界によって料率が異なり、特に建設業界は労働災害のリスクなども高いことから労災保険料率は他の業界よりも高い傾向にあります。
自社の保険料率を正しく把握し、間違いのないように計算することが重要です。
見積書への記載方法
建設業では、保険未加入の作業員が散見されるので、適正な保険加入を推進するためにも法定福利費の見積書への記載は必要不可欠です。
元請け業者は、下請け業者に対して法定福利費を明記した見積書を提示するようアナウンスする必要があります。
一方、下請け業者は自社の法定福利費を正しく把握し、見積書に明記することが重要です。
見積書に法定福利費を明記し、確実に受け取ることが重要です。
見積書の注意点
建設業界では未だに大雑把な見積書が散見されます。
法定福利費を明記しないまま契約に至ることも少なくありません。
「法定福利費は見積り単価に含む」と記載した見積書を作って下さい、と指示する元請業者も耳にしたことがあります。
法定福利費は単価に含むのではなく、単独で項目を作成して適正な法定福利費を算出して見積書に明記することが重要です。
見積り作成ソフトの活用
見積書を作成する上で一般的に多く使われているのがエクセルですが、汎用性が高い反面、属人化しやすい傾向にあります。
一方、見積り作成ソフトは規格や書式が統一されているので、法定福利費の明記漏れなども少なくなります。
導入には一定の費用はかかりますが、費用以上の効果が期待できるので導入するのも手段の一つです。
まとめ
建設業はさまざまな労働環境に関する問題を抱えており、それが原因で若い人材や優秀な人材が離れてしまうといった問題もあります。
法定福利費を正しく受け取り、適正な保険に加入することは、労働環境の改善につながる重要事項です。
本来加入するべき保険に加入していないと、公的保障を受けらない上、自己負担が増えてしまいます。
このような事にならないように、法定福利費を見積書に明記し、本来受け取るべきお金を受け取り、適切な保険に加入することが重要です。
見積り作成ソフトや業務管理システムなどを導入すれば、正確かつスピーディーに見積書の作成が行えるので是非活用してみましょう。
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