VE(バリューエンジニアリング)とは?建築業で期待される効果や進め方をわかりやすく
2022.10.11
VE(Value Engineering)=バリューエンジニアリングという言葉をご存じでしょうか?
製造・サービス・建設プロジェクトなど多くの現場で広まっている、『価値』を高めながら『コスト』の削減を図るというとても理想的な手法です。
中小の建築事業者には、資材価格や労務費の高騰をそのまま施主や元請業者へ転嫁できず、お困りの方も多いのではないでしょうか?
この記事では、建築業においてVEの概要や期待される効果、進め方を紹介します。
建築業界のICT化やDX(デジタルトランスフォーメーション)と同様に粗利の確保に向けた取り組みの一つとして、参考にしてみてください。
VEとは
VE(バリューエンジニアリング)とはコストをおさえながら、機能を向上させ価値を高める考え方です。
日本では建築業では、受注した側からの提案となり、VE提案とも呼ばれます。
基本計画の段階で図面や仕様、施工といった各部分の変更で品質や機能を維持しながらコスト削減を図ります。
VEはなぜ必要?
製造業では、製造過程において使用する材料や製法の変更を通して、コスト削減と品質の維持や向上が利益の確保につながります。
一方で他の業種とは異なった特徴を持っている建築業では、VEの必要性も少し違うものになります。
大きな特徴としては、次の点が考えられます。
- 計画~工事完了まで期間が長い
- 自社だけでなく工事に直接関わる他の業者が多い
建築業におけるVEは、設計・施工といった各段階で取り組むことが期待できます。
それぞれの段階での目的や効果は大きく異なります。
VAやCDとの違い
VEと似た意味を持つ言葉に『VA』や『CD』があります。
VA(Value Analysis)は、既存製品の品質はそのままでコストを削減する方法を提案することです。
例としては、原料の仕入先変更や作業効率の向上です。
品質・性能を向上させた新しい商品や工法を提案しながらコストを抑えるVEとは意味が若干異なります。
CD(コストダウン)は、製品の機能を抑えることでコストを下げる方法です。
VEは、品質を向上させつつコスト削減することで利益の上昇が見込める理想的な考え方と言えるでしょう。
建築業で期待されるVEの効果
労務費や仕入材料・光熱費の高騰が続く中で粗利の確保が難しくなっている中小の建築業界。
VEによる利益の上昇は経営安定化を望む建設業の経営者にとって理想的な方法です。
それでは具体的にどんな効果が期待できるのでしょうか?
ここでは建築業で期待されるVEの効果について3点紹介します。
コスト削減による経営安定
建設業では、工期が長い場合が多く予定通りに進めることが困難な場合が多くあります。
VEによる初期の設計段階での変更提案は全体の工事に与える影響はそれほど多くありません。
一方で施工段階での変更は、材料の再発注や不良在庫を抱えるなどコストの増加による粗利の減少の心配があります。
VEによって初期段階でのコスト削減が、経営安定化につながります。
自社の技術評価が上がる
多くの建築業者の中で、これまで通りの提案を続けていても自社の製品や施工に対する評価を高めることは不可能です。
積極的にVEを行うことで、新しい製品や施工方法を生み出し、自社の技術力が向上することで評価も高まることでしょう。
顧客満足度UPと受注増加
VEを提案することで品質は維持しながら、コストを抑えた工事を進めることで、顧客や元請の満足度もアップします。
従来通りの建設工事を提案しても顧客の評価は変わらず粗利の増加も期待できず、自社にメリットはありませんでした。
VEを行えば同業他社との差別化を図り、今までよりも性能のよい商品や施工方法提案で受注機会の増加が見込まれます。
VEの基本原則5つ
VEをスムーズに進めるためには、以下の5つの原則を知ることが必要となります。
VEの基本原則①:使用者優先の原則
第一に顧客であるユーザーを知ることが大前提です。
- どのような機能をもとめているか?
- 機能の中で何に価値を置いているか?
- 必要としているものは何か?
- どのような使用を考えているか?
VEの基本原則②:機能本位の原則
その製品の持っている機能を確実に知ることにより改善します。
VEの基本原則③:創造による変更の原則
今まで通りのやり方にとらわれていては新しい発想はできません。
- 自由で柔軟な発想
- 創意工夫
新しいアイデアの発想が必要です。
VEの基本原則④:チームデザインの原則
各分野から知識や技術・これまでの経験を集めチームとして改善します。
建築業界の工程であれば次の5つの段階です。
- 基本計画
- 基本設計
- 実施設計
- 施工者選定
- 施工段階
VEの基本原則⑤:価値向上の原則
常に機能とコストの関係を分析をすることで価値が向上します。
VEの進めかた
VEによる提案は、VEの原則を理解し、対象となる顧客を理解することから始めます。
ここではVEの進め方について紹介していきます。
情報の収集
事前にVEを提案すべき対象となる分野を選びます。
この対象の使用方法や販売・製造技術やコストなどに関係する情報を集めます。
この段階で顧客の希望や重視する点の確認し、競合他社の情報も集め他に同じ働きをするものがないか?調べておきましょう。
必要な機能の定義づけ
対象となる製品や施工方法の機能を顧客本位(ユーザー目線)で洗い出します。
対象となる機能の働きや役割、目的を理解して情報を整理しながら進めます。
コストの分析
集めた情報と機能を分析し実際に可能かどうか?判断します。
実現可能であればコストを算出し、目標となるコストを決定します。
各機能の価値を評価しながら優先順位をつけて本当に必要で実現可能な機能であるか?分析します。
改善案の作成
改善案として作成したものの技術性や価値の評価をおこない顧客に提案します。
これまでの機能や工法からの改善点やコスト付けの定義、品質保証などをわかり易く明確にし説明します。
せっかくの提案が無駄にならないように公共工事や入札の場合は、発注者からの指示書を確認し書式や提出方法も事前に確認しておきましょう。
VE提案のポイント
建設プロジェクトにおいてVEを提案するさいにはいくつか押さえておくべきポイントがあります。
初期段階での提案
建設プロジェクトでのVEはコストの削減を目的としている場合が多く、品質とのバランスが大切です。
そのため最もコスト削減効果が高い初期段階のVEの検討が非常に重要です。
平面や構造計画の決定が工事費に大きな影響を与えることはよく知られています。
実際に建設コストの確定度は設計段階から実施設計開始までに工事費全体の約80%に達します。
細かな部分の設備計画などの変更は後から可能ですが、この部分でコスト削減しても工事費に与える影響はそれほど多くありません。
このような建築業界の特徴から、大きなコスト削減を目指すのであれば、初期のVE提案が非常に重要になります。
現場の声を聴く
建設現場では、実際に施工を担当する職方の意見を取り入れて作業効率を見直すことも必要です。
使用する材料の素材の特徴をつかみ、施工する際の取り扱い方も、常に実際現場で作業をしている人の方が良く分かっていることも多いでしょう。
自社だけでなく、多くの人の意見を集め、検証することがVEを提案するための近道となるでしょう。
まとめ
建設業において、機能とコストを同時に改善し、価値と収益アップを図る手法は、競合他社と差別化し、経営安定化にとても重要です。
建設プロジェクトのVEは、基本計画段階でコスト削減の効果が大きく得られます。
VE提案は、顧客・受注者のどちらにもメリットがもたらされるので、今後ますます需要が高まっていくでしょう。
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