発注書と注文書の違いとは?役割や諸制度、記載項目を徹底解説
2022.12.17
発注書や注文書は文字通り、商品やサービスを依頼するときに取り交わす文書です。
- 発注書と注文書の違いは?
- 発注書の役割は?
- 発注書の記載内容は?
- 発注書は保管が必要?
など、普段何気なく発行している発注書ですが、詳しく理解していない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、発注書と注文書の違いや役割、諸制度、記載項目についてわかりやすく解説しています。
発注書についてより理解を深めたい経理担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
発注書とは
発注書とは、注文する側(発注者)が製品や商品、サービスなどを注文する際に、注文を受ける側(受注者)に対して発行する文書です。
発注書には、「注文しました」という意思表示を取引相手に伝え、注文内容を明確にする目的があり、取引内容や納期、支払い条件、有効期限などが記載されます。
発注書の交付に法的義務はなく、企業間取引であっても口約束で済まされて、発注書を発行しないケースも少なくありません。
しかし、発注ミスや納期遅れなどのトラブル防止や、事務処理をスムーズに行うためにも発注書を取り交わすようにしましょう。
発注書の役割
発注書には、主に次の2つの役割があります。
- トラブルを回避する
- 安心感を与える
発注書の役割①:トラブル回避
発注書には、商品名や数量、単価、納期などの取引内容が明記されているため、双方の認識違いで起きるトラブルを回避できます。
たとえば、発注者から「注文した内容と違う」とクレームが入ったとしても、発注書を確認すれば、大きな問題に発展しません。
しかし、発注書がなく口約束で取引内容を決めた場合、聞き間違いや注文忘れなどのトラブルが発生しやすくなります。
そのようなトラブルやミスを未然に防ぐため、発注書を発行して数量や単価、納期など具体的な取引内容を記載します。
発注書の役割②:不安解消・スムーズな取引
一般的に企業や個人の取引において、どうしても個人が弱い立場になりやすい面があります。
特に立場の弱いフリーランスや個人事業主の場合、発注書があることで不安が解消され、安心感を与えられるでしょう。
もし発注書がなければ、「本当にこの条件で履行されるのか」と発注に対して不安を覚えながらの取引になるかもしれません。
発注書は不安を解消する役割といつ、誰に対して、どんな商品を注文したのかを明確にして、スムーズに取引を進める役割があります。
受注者からは発注書を頼みにくい状況も多いため、発注者は発注書の交付を心がけましょう。
発注書と注文書、契約書や注文請書との違い
発注書と注文書及び契約書や注文請書との違いについて解説します。
発注書と注文書はほぼ同じ
結論からいうと、発注書と注文書はほぼ同じもので法的な違いはありません。
記載する項目や発行する時期、文書の役割、内容もほとんど同じです。
後述しますが、企業や業界によっては加工前の素材や原料には「注文書」、加工や作業が必要なものは「発注書」と使い分けている場合があります。
発注書と契約書との違い
契約書は、発注側と受注側の双方が取り交わす文書です。
契約は申込みと双方が承諾し合意すれば口頭でも成立しますが、一般的には契約書が交わされます。
契約書に発注側と受注側の署名と押印があれば、内容に承諾していることは明確です。
一方、発注書は注文する側が発注を申し込むための文書になります。
あくまで一方的な意思表示とみなされるため、発注書単体では原則的に法的効力がなく、契約も成立することはありません。
ただし、発注書に双方のサインや押印がある場合や見積もりに対しての申し込みである旨が記載されていれば、契約書と同じ効力を持つ場合があります。
発注書と注文請書との違い
発注書は前述の通り、「注文します」という意思を伝える文書です。
一方、注文請書は発注者からの「注文します」という意思表示に対して、「承諾しました」という意思を伝える役割があります。
民法では、双方の「申し込み」と「承諾」があれば、口頭でも契約が成立すると定めているため、必ずしも書面を発行する必要はありません。
しかし、注文や契約内容をめぐってトラブルが発生したとき、証拠となる書面がなければ、「言った」「言っていない」の水掛け論になってしまいます。
発注書と注文請書を発行しておけば、どのような注文内容で申し込みと承諾がなされたのかを、文書で残しておけるためトラブルを回避できるでしょう。
また、発注書で「申し込み」の意思を示し、発注請書で「承諾」の意思表示をすることで、双方の合意が明確になっている場合、契約は成立したとみなされます。
つまり、発注書と注文請書の2つがそろっていれば、契約書と同じ効力が得られるのです。
発注書と注文書との使い分け方
前述のように発注書と注文書はほぼ同じものと伝えましたが、企業や業界によって使い分けられるケースがあります。
発注書と注文書の使い分け方について、3つ紹介しますので参考にしてください。
発注書と注文書の使い分け方①:加工の有無
使い分け方のひとつ目は、加工や作業が必要か、不要かで分ける方法です。
企業によっては、加工前の素材や原料には注文書を用い、加工や作業が必要な商品は発注書を用いるというように、発注する商品の状態によって使い分けるケースがあります。
例えば、木材などの素材の依頼には注文書、木材を加工した机やイスなどの依頼には発注書という感じです。
発注書と注文書の使い分け方②:形の有無
使い分け方のふたつ目は、形がある、ないで分ける方法です。
依頼品に形があれば発注書、形がなければ注文書というように、発注する商品の形態によって使い分ける企業もあります。
例えば、机やイスなどの形あるものは発注書、記事執筆やWeb作成、サービスなど無形の場合には注文書という使い分けです。
発注書と注文書の使い分け方③:発注金額
発注する取引金額によって発注書と注文書を使い分けるパターンもあります。
例えば、会社が規定する発注金額より高額な場合は発注書、規定より低ければ注文書といった使い分けです。
このような発注書と注文書の使い分けは、企業が慣習的に行っている場合が多く、社内や取引先と共有して、統一しておくと良いでしょう。
発注書関係の諸制度
発注書に関連する諸制度について解説します。
下請法が適用される場合、発注書の交付義務
下請法が適用される場合には、発注書を交付する義務が発生します。
下請法とは、親事業者と下請け業者との関係を公正に保つための法律です。
親事業者は通常、優位的な立場にあり、下請け側は不利な側面があります。
下請法では、下請け企業が理不尽な扱いを受けたり、親事業者が優位的な立場を悪用したりしないように下記の義務を課しています。
出典:公正取引委員会「親事業者の義務」より
公正取引委員会「下請法の概要」を参考にして、自社の取引が下請法の適用取引対象に当てはまるかどうか、確認しておきましょう。
発注書の保存義務
発注書や注文書などの国税関係帳簿書類は、保管期間が定められています。
法人の場合、保管期間は確定申告提出期限の翌日から7年間、欠損金のある事業年度に関しては10年間です。
個人事業主の保管期間は5年間となっています。
収入印紙は必要
契約書や領収書といった課税文書であれば印紙税が課されますが、注文書に関しては収入印紙を貼る必要はありません。
ただし、以下のような場合は課税文書とみなされるため、収入印紙が必要です。
- 注文書の交付で契約が成立する
- 双方の署名または押印がある
- 注文書に見積書に対する申し込みである旨が明記されている
また、電子契約で取引すれば、印紙税が課せられないため収入印紙は必要ありません。
契約書のやりとりを書面でしている場合、電子契約に変更すれば印紙代を節約できるでしょう。
発注書を作成する際の注意点
発注書を発行するにあたり、注意したい5つのポイントを解説します。
発注書を作成する際の注意点①:発注書に間違いはないか
発注書を作成した際には内容に間違いがないかを、しっかりと確認してください。
特に商品名や数量、単価、納期の記載を誤って発注書が作成されてしまうと、「商品が届かない」「数が足りない」といったトラブルを生む可能性があります。
その結果、業務が完了できず工事が延びてしまったり、不良在庫を抱えてしまったりなど会社にとって大きな不利益を招く恐れも……。
さらに取引先との信頼関係に亀裂が入ることも考えられるため、発注書を発送する前には必ずチェックするように心がけましょう。
また、下請法が適用される取引の場合、支払い期限が納品から60日以内と「下請代金支払遅延等防止法第2条第2項」に定められています。
記載した支払い期日が、納品から起算して60日以内になっているかも、確認が必要なポイントです。
発注書を作成する際の注意点②:見積書と一致しているか
発注書を作成したら、見積書の内容と一致しているかを必ず確認しましょう。
発注書と見積書の記載内容が違っていると、どちらが正しいのかがわからなくなりトラブルに発展する可能性があります。
原価の高騰などにより、見積書の内容を変更する場合には、備考欄に変更点を明記しておくと、トラブルを未然に回避できるでしょう。
発注書を作成する際の注意点③:発注書はメール便で送らない
発注書は信書に該当する文書のため、法律で定められた方法で送達する必要があります。
信書の送達は、日本郵便株式会社もしくは国が認定した信書便事業者に限られているため、メール便では送れません。
この規定に違反した場合、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科せられるため、発送方法には注意してください。
発注書を作成する際の注意点④:下請法違反には罰則
下請法の適用を受ける取引では、発注側の親事業者は受注側である下請け事業者に対して発注書を発行する義務があります。
下請代金支払遅延等防止法に違反した場合、親事業者の代表者や代理人などに罰金が科せられたり、公正取引委員会から勧告を受けたりする可能性があるため注意してください。
発注書を作成する際の注意点⑤:メールで送る際は電磁的記録の規制
下請法が適用される取引の場合、親事業者は発注書を「電磁的記録」として作成し、保存しなければいけません。
下請取引における電磁的記録の提供は、電気通信回線を通して下請事業者が所有するパソコンなどのファイルに保存する必要があります。
そのため、書面の交付に代えて発注書をメールボックスで送信したり、ホームページ上で閲覧させたりするだけでは、ブラウザ上で確認できるだけなので不十分です。
発注書をメールで送信する場合は、下請事業者が保存できるように添付ファイルとして送信するようにしましょう。
また、ホームページで閲覧させる場合には、ダウンロード機能を持たせるなど下請事業者が記録できる対策を講じる必要があります。
参考元:公正取引委員会 下請取引における電磁的記録の提供に関する留意事項
発注書の記載項目
発注書の作成は法的な義務がなく、特に決められた書式はありません。
しかし、発注書は具体的な発注内容を伝えるために重要な書類です。
下記は、公正取引委員会が紹介している汎用的な注文書(発注書)の参考例になります。
引用元:公正取引委員会 下請代金支払遅延等防止法第3条に規定する書面に係る参考例
納品後にトラブルとならないためにも、発注書には以下の内容を記載しましょう。
文書タイトル
書類を受け取る相手がなんの書類が届いたのかがわかるように、上部に大きな文字で「発注書」と記載します。
取引先情報
取引先の名称や住所、電話番号を記載し、取引先が個人または個人事業主なら「様」、会社の場合は「御中」を名前の後につけます。
(例)
- ◯◯◯株式会社 御中
- ◯◯◯株式会社 ご担当△△様
発注番号・日付
同じ契約の発注であれば、見積書や請求書と同じ発注番号を振っておくと管理しやすくなります。
取引先から問い合わせがあった際に、番号を照会すればすぐに対応できるでしょう。
また、日付欄には発注書を発行した日を明記します。
自社情報
自社の名称や住所、電話番号、担当者名などの情報を記載します。
特に押印の必要はありませんが、発注書は取引内容や単価、納期など重要な情報を多く含んだ文書です。
そのため、押印して正式な書類であることを示したほうが、受注者は安心して取引を進められるでしょう。
注文内容
品名やサイズ、色、数量など、注文内容を詳しく記載します。
注文金額
注文金額を記載します。
税込価格は太字にしたり、拡大して表示したりするとわかりやすいでしょう。
記載する際には、見積金額と注文金額に相違がないか、確認してください。
支払条件・納期・有効期限
支払い条件や納期、有効期限を記載します。
支払い条件は、請求の締め日や支払日など企業ごとに異なるため、必ず記載してください。
備考
特に指定したい事項があれば備考欄に記載します。
あらかじめ上記の記載事項を網羅したテンプレートを作成しておくと、記載漏れや発注ミスを防止できるでしょう。
発注書作成をシステム化するメリット
取引先を何箇所も持つ企業であれば、発注書作成に手間がかかり、担当者にとっては大きな負担です。
そのため、クラウド型のシステムを導入して、発注書を作成する企業が増え、さらにペーパーレス化の推進により、発注書の電子化も進んでいます。
発注書をシステム化する・電子化するメリットは多くありますが、特に大きなメリットは次の3つです。
- 作業効率化
- 費用削減
- 下請法に対応
項目ごとに解説します。
発注書作成をシステム化するメリット①:作業効率化
発注書を紙ベースで作成する場合、印刷や切手貼り、宛名書き、封入、送付といった作業に手間と時間がかかります。
しかし、発注書作成をシステム化すれば、このような労力や作業時間を大幅に削減できるため、作業の効率化につながるでしょう。
さらにシステム化には、過去データをもとに自動入力できる機能や取引内容を一元管理できる機能があるため、業務の効率化も期待できます。
発注書作成をシステム化するメリット②:費用削減
発注書作成をシステム化すれば、印刷や郵送などの作業が不要になります。
紙の発注書と比べると用紙代やインク代、切手代もかからず、印刷や郵送にかけていた作業コストもカットできるでしょう。
データの場合、サーバーやクラウド上に保存するため、書類棚やキャビネットなどの保管場所を用意する必要がなく、保管コストを削減できます。
発注書作成をシステム化するメリット③:下請法に対応
前述のように、下請法が適用される取引の場合、親事業者は下請け業者に対して発注書を交付しなければいけません。
発注書の交付義務については理解していても、下請法に準じた発注書への対応ができていない業者も少なくありません。
下請法に反すると罰金だけでなく、企業名が公表され信用が損なわれるなど、大きなリスクがあるため注意が必要です。
システムには通常、下請法に対応した発注書作成機能が搭載されているため、下請法に違反してしまうリスクを回避できるでしょう。
まとめ
本記事では、発注書と注文書の違いや役割、諸制度、記載項目について解説しました。
発注書を発行せず、口約束だけで受発注が行われることも多くあります。
しかし、「言った」「言っていない」の口論になったり、注文ミスや発注ミス、請求金額が違うなどのトラブルが起きたりする可能性があります。
受発注をスムーズに取り交わすためには、発注書が有効です。
受注する側も安心して取引が行えるため、依頼する際には発注書を交付するように心がけましょう。
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