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【建設業】標準化のメリットと目的|業務を標準化する方法とコツを解説

2022.12.16

コラム

慢性的な人手不足が深刻な建設業では、業務効率化と生産性向上が早急の課題です。

その障壁となるのが業務属人化。

業務を属人化させていると業務手順や進捗が特定の人にしかわからず、担当者の負担も大きくなります。

人手不足のなか効率よく業務を行うには「業務標準化」が不可欠です。

業務標準化は業務の効率化や生産性向上だけでなく、属人化を解消するメリットも。

本記事では業務標準化の概要や目的、メリット、標準化の進め方についてわかりやすく解説しています。

「特定の人にしかできない作業」や「担当者によって成果物にバラツキがある」など属人化による問題を抱える建設業者はぜひ参考にして下さい。

目次

業務標準化とは

業務標準化は社員全員で共通の基準を定め、その基準をもとに誰もが業務を習得でき同じ成果を出せる状態をいいます。

共通の基準とは社員全員でどうやるべきか、どういう手順で行うかなど最適な基準を決めた業務フローや誰もが理解できるマニュアルのことです。

マニュアルを作成する際に業務プロセスを洗い出せば、作業のムダを排除でき業務改善につながる効果があります。

業務が標準化すると同じ業務でも人によってやり方が違うとか、その人にしかできないといった、いわゆる属人化が起こりにくくなります

業務効率化との違い

業務標準化に類似した言葉に業務効率化があります。

業務効率化は業務上にある「ムリ・ムダ・ムラ」を省いて改善し、会社全体の生産性向上を図る取り組みです。

業務標準化がマニュアルによって業務を遂行していく手段に着目しているのに対し、業務効率化は現状をより効率的にしていく結果にコミットしています。

なぜ標準化が進まないのか

業務標準化が進まず、属人化していく原因はどこにあるのでしょうか。

業務が属人化する主な要因に、

  • 業務に求められる専門性が高い
  • 業務が多忙のため教育や指導する時間がない
  • 自分の地位を守ろうとする

などが挙げられます。また、

  • 多忙でマニュアルを作成できない
  • 属人化した業務を担当すれば高評価になりやすい
  • 属人化した業務は過失や不正がわかりにくいブラックボックス状態となる

ため、標準化を進めたくない人もいることでしょう。

しかし、業務が特定の人に集中するとスキルやノウハウを伝えられません

属人化によるリスク

属人化によるリスクはトラブルが起きた際に、特定の人しか対処できず業務が止まってしまう点です。

また、スキルやノウハウを持つ人材が急に休職や退職した場合、技能や知識が失われるリスクも考えられます。

専門性のある業務にベテランだけが取り組んでいれば、若者も成長できません。

若者が育たず技術承継できていない会社はスキルやノウハウを引き継げず、さらに属人化してしまうといった負のループから抜け出せなくなる可能性があります。

業務標準化の種類

業務標準化は「業務フローの標準化」と「タスクの標準化」に分類できます。

業務標準化を効果的に進めるには、業務フローとタスクの双方について標準化に取り組むことが大切です。

それぞれの標準化について解説します。

業務フローの標準化

業務フローの標準化に取り組むと、すべての従業員が業務の流れを把握できるため業務手順が統一化されます。

業務手順が統一化すれば、担当が違っても互いの業務についてわかりあえるので、担当が急に代わった場合でもスムーズな引き継ぎや運営が可能です。

スムーズな運営を具現化するためにも、最適な業務フローを設計し会社全体で業務に対する認識や考え方を同一化しましょう。

業務フローを標準化する手順

業務フローを標準化する手順とポイントは以下の通りです。

1.既存の業務フローを見える化する
  • 既存の業務フローがあれば見える化する
  • 属人化している業務の担当者にヒアリングする
  • 見える化することで属人化している業務の標準化がしやすくなる
2.見える化で明確になった課題を整理してフロー化する
  • 業務フローを見える化すれば改善すべき課題が見えてくる
  • 課題を分析して工数や手順、難易度などを数値化する
  • 数値化した項目から業務フローをまとめる
3.フロー化した業務内容を標準化する
  • 業務フローを設計する
  • 誰にでも実行しやすい業務フローを作成する
  • 日常業務などはテンプレート化する

業務全体の流れを見える化して課題を改善し、わかりやすい業務フローを作ることで標準化を進めやすくなります。

タスクの標準化

タスクの標準化に取り組むと誰がいつ作業しても安定した品質を確保できる状態になります。

タスクの標準化はすでに実績のある方法を用いて標準化することが望ましいです。その方法をもとにしてマニュアル化を進めましょう。

マニュアルがあれば業務品質が安定し、誰が担当しても業務内容の共有や習得ができるためスムーズな業務遂行を実現できます。

  • 社員によって作業効率や品質にばらつきが出ない
  • 誰もが業務に携われる環境
  • 業務属人化を防止

を目指して、誰が見てもわかりやすいマニュアルづくりを心がけましょう。

タスクを標準化する手順

タスクを標準化する手順とポイントは以下の通りです。

1.タスクの洗い出し
  • 業務や工程に携わるすべての従業員からヒアリングを実施する
  • ヒアリングにより、業務全体を把握する
  • 全体を把握することでタスクを明確にでき標準化しやすくなる
2.タスクを分析してマニュアルを作成
  • 洗い出したタスクを分析してマニュアルを作る
  • 業務の全体像や仕事の目的を意識して手順を考える
  • 画像や動画を活用するとよりわかりやすいマニュアルになる
3.誰にでも手に取れる場所にマニュアルをセット
  • マニュアル作成後は従業員が手に取れるようにマニュアルを配備する
  • マニュアルの配備場所は標準化を進める上で重要
  • 配備場所をどこにするか検討を重ねる

異動や退職で担当者が変わったり、新入社員が配属されたりした場合でも、マニュアルを用いて誰もが業務に取り組める環境を作ります。

業務標準化の目的

業務標準化を進める目的は属人化の解消です。

内閣府の「令和5年版高齢者白書(下図)」によると国内では少子化が進行し、15〜64歳の労働人口が2022年の7,421万人から2070年には4,535万人になると推測されています。

人手不足が課題の建設業にとって、働き手を確保すると同時に重要なことは業務の効率化です。

標準化とは 画像1

引用元:内閣府「令和5年版高齢社会白書 高齢化の現状と将来像」

2018年公布の「働き方改革」では人手不足を解消するために、働き手の増加と出生率の上昇がスローガンとして掲げられています。

その課題となるのが、

  • 長時間労働の是正
  • 多様で柔軟な働き方の実現

です。

日本経済団体連合会の調査結果(下記グラフ)によると、長時間労働になりやすい職場慣行の事例として「業務の属人化」が1番の要因に挙げられています。

長時間労働を是正し属人化を解消するためには、企業全体として業務の効率化と生産性向上に努める必要があり、業務標準化が求められています。

標準化とは 画像2

引用元:日本経済団体連合会「2017 年労働時間等実態調査」

業務標準化がなぜ必要なのか

業務が属人化していても仕事は回りますが、人に頼り切った業務は作業効率の低下やムダなコストの発生など、さまざまなリスクが生じます。

リスクを回避するためには、組織的に業務標準化を進め、安定的な体制に変えていく必要があるでしょう。

この項では業務標準化が必要な3つの理由について解説します。

人員変動に対応するため

スキルのある人材が急に休んだ場合、スムーズに対応できるでしょうか?

業務が標準化されていないと引き継ぎができずに作業ミスを起こしたり、対応が遅れてしまったりするかもしれません。

また、利益や信用を失って取引停止となる可能性もあるでしょう。

急な人員変動に対応するためには、業務標準化に取り組む必要があるのです。

業務品質にバラツキが生じるため

業務が標準化されていなければ、社員のスキルや知識によって業務品質に差が生まれます。

品質や仕上がりが不安定になれば、顧客から継続依頼や信用がなくなり、売上にも大きく影響します。

安定した品質をキープするためにも業務の標準化は欠かせません。

業務負担が偏るため

業務が属人化していると、その業務担当者だけに作業が集中してしまいます。

仕事量が偏ると、その担当者の稼働状況によって業務進捗が影響を受けてしまい、結果的にボトルネックの原因となりかねません。

ボトルネックとなれば業務全体の遅れやクレーム発生につながる可能性も……。

また、その担当者だけに残業が続いてしまうとワークライフバランスが乱れ、スキルのある人材が離職してしまうことも考えられます。

業務の属人化を解消するためにも企業全体で標準化を進めていきましょう。

業務標準化のメリット・効果

業務標準化のメリット・効果は次の5つです。

  • 品質が安定する
  • 属人化を解消
  • 業務効率の向上
  • 成果目標の明確化
  • 多能工化の実現

項目ごとに解説します。

品質が安定する

業務標準化により同じ手順で全員が作業に取り組めるため、スキルや知識によるバラツキがなく会社全体の業務品質が安定します。

業務品質が安定してミスや不具合が減れば、顧客からの信頼も回復し売り上げアップや利益拡大が期待できるでしょう。

属人化を解消

業務を標準化できれば、特定の人に業務が集中する属人化を解消できます。

属人化が進むと急に担当が変わった場合、業務が停滞し迅速に対応できません。

業務標準化を実施すれば作業ノウハウや手順、進捗状況を社内で共有できるため属人化が起こりにくい状態となります。

また、人員異動の際にも後任者をサポートできる体制のため、スムーズな引き継ぎが可能です。

業務効率の向上

業務標準化は次のような状況を生み出します。

  • 仕事の幅が広がる
  • 作業内容がわかる
  • 誰にでも取り組める

標準化で業務内容が見える化されると、時間配分を考えて作業したり、次の段取りを進めながら仕事を回せるため業務効率が向上します。

また、多くの仕事に携われるため、やりがいや自信、積極性が育つでしょう。

適切な業務フローはムダな作業を削減できるだけでなく、社員一人ひとりの業務負担を軽減(業務負担の分散化)できるメリットもあります。

成果目標の明確化

業務が属人化されていると業務フローが不明瞭なため、数字だけで成果を評価しきれない部分があります。

成果に至るまでのプロセス評価も重要ですが、標準化により業績を数値化して客観的に把握・評価できれば、より成果目標を設定しやすくなるでしょう。

従業員にとっても具体的な目標がある方が目的意識を持って業務に取り組めるため、やるべき行動が取りやすいといったメリットがあります。

多能工化の実現

ひとりで複数の業務や作業に対応できる多能工を育成できる点も、業務標準化のメリットです。

標準化を進めていくとマニュアルや手順書に沿って業務を習得しやすい環境が生まれるため、作業員のスキルアップ(多能工化)を図れるでしょう。

また、多能工化の実現は会社全体の技術力を底上げさせ、急な人員変動でも互いにフォローしあいながら安定的に業務を進められる利点があります。

業務標準化のデメリット

業務標準化のデメリットは次の3つです。

  • マニュアル頼りになる
  • モチベーションの低下
  • 標準化に適さない業務がある

項目ごとに解説します。

マニュアル頼りになる

マニュアルを作成して業務標準化に取り組めば、安定した水準で業務遂行が可能です。

しかし、マニュアルに頼りすぎると記載されていない項目に手をつけなかったり、自発的な行動ができなかったりするデメリットが生じます

そのため、どの業務を標準化するべきか検討を重ねる必要があるでしょう。

モチベーションの低下

業務のマニュアル化は決まった動作の繰り返しやルーティン業務となりやすいので、単純作業に不満を持つ従業員がいるかもしれません。

誰にでも取り組める業務は単調でパターン化しやすいため、従業員のモチベーションを低下させてしまう可能性があります。

標準化に適さない業務がある

標準化への取り組みで業務効率化や生産性向上を図れます。

しかし、すべての業務を標準化できるわけではありません

そのため、標準化に適した業務を選んで取り組む必要があります。

  • 専門性のある業務
  • 高いスキルや知識が求められる業務
  • 難易度が高い業務
  • センスや感性を要する業務

などの業務は、誰もが取り組めて安定した品質を求める業務標準化には向いていません。

業務標準化を進める5つのステップ

業務標準化を進める5つのステップは次の流れです。

  1. 現状把握・業務の洗いだし
  2. 標準化する業務の選定
  3. 業務フローの整理
  4. 業務フロー・マニュアル作成
  5. 定期的な見直し・改善

ステップごとに解説します。

1.現状把握・業務の洗い出し

  • 社内でどのような業務が行われているか
  • どの工程が遅れやすいか
  • 属人化している業務はないか

など、いつ誰がどこでどのような作業しているのかを洗い出して業務状況の全体像を把握します。

業務担当者にヒアリングして、業務の詳細を知ることが大切です。

2.標準化する業務の選定

  • 属人化している業務
  • 工程が遅れやすい業務
  • ムダが多い・手間がかかる業務
  • 品質にバラツキがある業務

など、標準化する業務の優先順位を決めます。

標準化の成果がでやすい業務から選ぶと成功事例となって、社員のモチベーションアップにつながるでしょう。

いきなり多くの業務に対して標準化を目指しても、上手くいかない可能性が高いです。

まず、属人化している業務や課題の多い業務から標準化を進めていくと良いでしょう。

3.業務フローの整理

標準化する業務が決まれば業務フローの整理です。

作業担当者にヒアリングして、業務内容や作業手順を明確にします。

業務の流れだけを確認するのではなく、作業のコツや注意点も合わせて整理しておきましょう。

作業のコツがわかると業務をスムーズに行えるだけでなく、作業に不慣れな社員が行っても品質が安定します。

業務フローをまとめる際は専門用語や難しいことばを避けて、誰が見てもわかりやすい内容を心がけましょう。

随所に写真や動画を盛り込むと業務の全体像が掴みやすくなるのでオススメです。

4.業務フロー・マニュアル作成

初めから完璧なマニュアルを作る必要はありません。

まずは簡単な業務の流れを記載しておき、少しずつ追記しながら内容を充実させていきましょう

マニュアルには次のような項目を記載します。

  • 業務の概要
  • 作業目的
  • 具体的な業務手順
  • 注意点
  • 作業のコツ
  • トラブル対処法

マニュアルは未経験者がみてもわかりやすい内容にすることが大切です。

5.定期的な見直し・改善

業務標準化はマニュアル化すれば完成ではありません。

実際にマニュアルに沿って業務に取り組んでみると、作業上の問題点や業務手順の改善点が次々と表に出てきます。

業務標準化を進めてからも、従業員からヒアリングを繰り返してマニュアルを改良していきましょう。

常に手順を見直しできる体制が重要です。

前述した業務標準化のメリットや効果が得られるように、従業員と定期的に意見交換しながら、内容を繰り返し見直してマニュアルの改善に努める必要があります。

業務標準化を成功に導くコツ

業務標準化を成功させるためのコツを解説します。

標準化する目的の共有化

業務標準化を成功に導くコツは、業務標準化に取り組む目的を従業員と共有することです。

  • 属人化の防止
  • 作業品質の向上
  • 作業時間の短縮

など、目的を定めて共有すれば、会社全体が一致団結して業務標準化に取り組めます。

そのためには一方的な押し付けにならないよう、従業員と十分にディスカッションを繰り返して意見を交換し、お互いに納得して進めていくことが大切です。

現場の意見を取り入れる

前述のようにマニュアルは作成すれば終わりではなく、常に改善を繰り返して使い勝手のよいマニュアルに作り変えていく必要があります。

質の高いマニュアル作りのためには、現場の意見を取り入れることが最も効果的です。

実際に作業する従業員だからこそわかるマニュアルの問題点や不満点、また改善ポイントを定期的にヒアリングして、マニュアルに活かし業務改善を図りましょう。

ITツールを活用する

ITツールを活用すれば業務標準化をより効率的に進めやすくなります。

例えば、マニュアルを作成できるツールを利用すれば、ワードやエクセルで一から作る手間が省け、業務負担を軽減できるでしょう。

また複数の業務システムやプロセスを見直して最適化するBPMを導入すれば、PDCAサイクルの循環を促進できます。

基幹システムであるERPを導入し、業務フローの見直しやムダを省いた合理的な業務プロセスを採用すれば、標準化や効率化に有効です。

手間と時間を節約するため、ITツールを活用して業務標準化を図ることをおすすめします。

まとめ

本記事では業務標準化の概要や目的、メリット、標準化の進め方について解説してきました。

業務が標準化されると業務効率や作業性の向上、品質の安定化などのメリットが生まれ、属人化の解消にも有効です。

特に建設業の場合は業務内容が多岐にわたるため、適切な標準化が求められます。

適切に業務標準化を進めていけば施工品質も安定し、顧客満足度の向上に加えて、更なる企業成長と収益アップが期待できるでしょう。

本記事を参考にして、社内の業務標準化に取り組まれてはいかがでしょうか。

 

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