注文請書に収入印紙は必要・不要?基礎知識や割印について徹底解説
2022.02.15
建設業では、注文請書や注文書、契約書といった文書が頻繁に取り交わされます。
馴染みがある文書であるにもかかわらず、
- 注文請書がどういった文書なのか?
- 注文請書に収入印紙や割印は必要なのか?
- 注文請書と注文書の違いは?
など、注文請書について、よくわかっていないという方も多いのではないでしょうか。
本記事では、注文書と混同されやすい注文請書について、基礎知識や収入印紙が必要・不要なケース、割印の必要性などをわかりやすく解説しています。
注文請書の概要や収入印紙・割印のルールを理解して、トラブルを回避しましょう。
目次
注文請書とは?
注文請書とは、注文を受けた受注者が「注文内容について承諾した」という意思を明確にするための文書です。
請負契約は発注者側が問い合わせをし、受注者側が見積書を発行するという流れが一般的で、発注を決めた段階で発注者は受注者側に注文書(発注書)を発行します。
この注文書(発注書)に対する応答として「注文請書」が発行されるのです。
注文請書によって、受注者側は注文を受けた意思と注文内容を明確化できるため、請負契約ではよく利用される文書になります。
注文請書は必須ではありませんが、企業間取引では発行を求められるケースも多くあるため、注文請書について理解しておくとスムーズな対応ができるでしょう。
注文請書と注文書との違い
勘違いされやすい書類に、「注文請書」と「注文書」がありますが、
- 注文請書は、受注者側が発行する文書
- 注文書は、発注者側が発行する文書
を指します。
建設現場で「注文書」は、工事や材料を依頼する発注者が作成する文書です。
見積書で工事内容や金額を確認したのち、発注者が「注文をお願いします」と正式に書面で依頼します。
発注書とも呼ばれますが内容は、ほぼ同じです。
一般的に注文請書と注文書の両方が揃うことで、契約が成立したとみなされます。
契約書との違い
契約書は工事内容を含めたあらゆる取引条件について、受発注者が合意の上で発行した文書になるため、単体で取引があった事実を証明できます。
契約書は取引を証明するだけでなく、取引内容を明確にする文書でもあるため、金額の大きな取引では、注文請書よりも契約書が選ばれることが多いようです。
一方、注文請書は「受注者が注文を受けたことを伝える確認文書」であるという性質上、単体では契約が成立したという事実を証明できません。
注文請書に詳しい取引内容が記載されていても、注文請書や注文書の片方だけでは相手から同意があった事実を証明できないため、契約書とは大きく異なります。
注文請書の記載項目
注文請書の記載項目に特別な決まりはありませんが、以下の項目を記載することで受注者と発注者双方の認識違いを防止できます。
発行日
注文請書の発行日(取引日)は、注文請書を発行した日です。
発注者から指示があれば注文書の発行日と同日にする場合もありますが、基本的には注文書が発行された日以降の日付を記載します。
発注者情報
発注者が誰なのかを明確にするため、発注者側の会社名や住所、電話番号、部署名、担当者名などの発注者情報を記載します。
受注者情報
受注者が誰なのかを明確にするため、受注者側の会社名や住所、電話番号、部署名、担当者名などの受注者情報を記載します。
注文内容(工事内容)
注文を受けた工事やサービス内容(工事名称や商品名、納期、金額、単価、数量など)を具体的に記載します。
受注金額については、税抜き価格や消費税額、税込み価格を明記しましょう。
受注金額によっては、後述する収入印紙を貼り付ける必要があります。
支払条件
トラブルを回避するためにも合意した取引条件に従って、
- 支払期日:◯◯年△月△日
- 支払方法:月末締め翌月末払い
- 現金50%手形50%手形サイト60日
など、具体的な支払い条件を記載して、確認できるようにしておきましょう。
注文請書に収入印紙はなぜ必要?
すべての注文請書に収入印紙が必要なわけではありません。
具体的には、
- 売買契約に該当する注文請書は収入印紙が不要
- 請負契約に該当する1万円以上の注文請書は収入印紙が必要
になります。
請負契約に該当する注文請書は、印紙税法が定める第2号文書「請負に関する契約書」で課税文書に該当するため、印紙税を納めなければいけません。
参照元:e-GOV 印紙税法
下記は収入印紙が必要な第2号文書の例です。
- 工事請負契約書
- 工事注文請書
- 物品加工注文請書
- 広告契約書
- 会計監査契約書
- プロ野球選手や映画俳優などの専属契約書
請負契約とは、業務受注者が仕事を完成させることを約束し、完成した仕事の結果に対して報酬を支払う契約を指します。
民法632条で規定する「請負」のことです。
例えば、成果物を完成させて引き渡す建設工事や、警備や清掃、イベント設営など知識や技術、サービスの提供は、請負契約になるため収入印紙が必要になります。
一方で、物品の売買に該当する注文請書は、特約店契約や代理店契約のような継続的な取引になる第7号文書を除いて、収入印紙は不要です。
収入印紙が不要になる場合については、後述しますので参考にしてください。
収入印紙を貼り忘れたらどうなる?
課税文書に該当する注文請書に収入印紙を貼り忘れた場合、印紙税法違反になり過怠税が課せられます。
過怠税は自己申告すれば本来必要な収入印紙額の1.1倍、収入印紙に割印がない場合も納税したとみなされず、同等のペナルティが課せられるため注意が必要です。
自己申告ではなく税務調査で収入印紙の貼り忘れが見つかれば、本来貼るべき印紙税額の3倍の過怠税が課せられます。
過怠税は、法人税の損金や所得税の必要経費にはならないため、注文請書を発行する際には収入印紙の貼り忘れや割印に注意しましょう。
注文請書を作成する際に知っておきたい収入印紙の基礎知識
注文請書について最低限知っておきたい、次の項目について解説します。
- 収入印紙はどちらが負担する?
- 注文請書に貼る収入印紙の金額
- 収入印紙を購入するには
- 収入印紙には割印が必要
収入印紙はどちらが負担する?
注文請書の収入印紙を貼り付ける場合、契約書と同様に発注側と受注側が連帯して納税するのが民法上の決まりです。
一般的な契約書は2部作成されるので、基本的に収入印紙の負担は折半になります。
一方、注文請書は1部のみとなるケースが多いことから、金額が少ない場合は注文請書の作成者側が収入印紙を負担する状況も少なくありません。
取引金額が大きい場合には、トラブルを回避するためにも双方が事前に話し合って、どちらが負担するのかを決めておくと安心です。
注文請書に貼る収入印紙の金額
注文請書に貼る収入印紙の金額は法律で定められており、契約金額が大きくなるにつれて段階的に増えていきます。
印紙税の税額は、基本的に「消費税抜き」で記載された契約金額が基準になります。
しかし、消費税額を明確に記載していないと、税込金額を基準にして印紙税額が決められてしまうケースもあるのです。
例えば、「契約金額 税込220万円」という記載の場合、消費税額が明確ではないため220万円が基準となって、印紙税額は1,000円と解釈されてしまいます。
同じ内容でも「契約金額 220万円のうち消費税額等20万円」と記載していれば、消費税額がはっきりしているため、200万円が基準となって印紙税額は400円です。
記載方法で印紙税額が大きく変わってくるため、消費税に関する記述には注意しましょう。
収入印紙を購入するには
収入印紙を購入するには、郵便局の利用がおすすめです。
郵便局や法務局では、1円から10万円まで31種類(1円、2円、5円、10円、20円、30円、40円、50円、60円、80円、100円、120円、200円、300円、400円、500円、600円、1,000円、2,000円、3,000円、4,000円、5,000円、6,000円、8,000円、10,000円、20,000円、30,000円、40,000円、50,000円、60,000円、100,000円)すべての収入印紙を取り扱っています。
ただし、規模の小さい郵便局の場合では、50,000円以上の収入印紙を取り扱っていない場合も……。
一括して購入したい場合は、事前に在庫を確認しておきましょう。
郵便局以外でも、次のような場所で収入印紙を購入できます。
- コンビニ
- 金券ショップ
- 法務局
- 役所
- ヤフオク
- タバコ屋・酒屋
郵便局や法務局以外の場所では、取り扱う収入印紙の種類が少なく、コンビニやタバコ屋では場所によって取り扱っていない場合もあるので注意してください。
収入印紙には割印(消印)が必要
注文請書に収入印紙を貼り付けた際には、割印を忘れないようにしてください。
割印には収入印紙の再利用を防ぐ目的がありますが、もし割印がなければ収入印紙を貼っていないとみなされます。
万が一、割印を忘れて税務署から指摘を受けると、収入印紙と同額の過怠税が課せられるため注意が必要です。
割印を押す位置に決まりはないため、収入印紙の上下左右どこに押印しても問題ありません。
一般的には、注文請書と収入印紙にまたがって押印し、割印が境界線の中央にくるようにします。
また、割印に使うハンコは会社の角印でも、注文請書を作成した人の認印やシヤチハタでもOKです。
印鑑がなければ、ボールペンなどによるサインでも代用できますが、鉛筆のようにすぐに消えてしまう筆記用具は認められていません。
注文請書に収入印紙が不要な場合
注文請書に収入印紙が不要なケースについて解説します。
契約金額が1万円未満
前述したとおり、注文請書に記載された契約金額が、1万円未満であれば収入印紙は不要です。
ただし、契約金額が記載されていなければ、収入印紙200円を貼る必要があります。
税込価格が1万円以上の注文請書の場合には、収入印紙が必要です。
税込価格が1万円以上であっても、税抜価格が1万円未満の契約であれば、収入印紙は不要になるので、注文請書には明確に税抜価格や消費税額を記載しましょう。
売買契約に該当する注文請書
前項で税込価格が1万円以上の注文請書に収入印紙が必要と伝えましたが、すべての注文請書が印紙税の対象になるわけではありません。
継続的な売買契約となる第7号文書をのぞく、物品売買に関する注文請書については、契約金額がいくらであっても収入印紙は不要です。
請負契約になるのか、売買契約になるのかを判断することは難しいため、注文請書を作成する際には国税庁のサイトを確認してください。
契約書に収入印紙を貼り付けている
請負契約と同じ案件で、注文請書とは別に契約書を交わしていることがあります。
その場合、注文請書に契約書を作成する旨が記載され、契約書に収入印紙が貼られているのであれば、注文請書に収入印紙を貼る必要はありません。
電子契約
電子契約のみの取引においては、どのような注文請書であっても収入印紙を貼り付ける必要はありません。
印紙税法で定める課税対象は、紙など用紙で交付する文書であって、電子契約におけるデータのやり取りは課税文書に該当しないからです。
- メールでのPDFファイル添付
- FAX送信
- タイムスタンプや電子署名での契約
上記のような電子契約であれば、収入印紙は不要です。
ただし、メールに添付されたPDFファイルを印刷して発行した場合は、課税文書となってしまうため、収入印紙を貼らなければいけなくなるため注意しましょう。
また、電子契約で交わした契約は、クラウド上やサーバーに保管された注文請書が原本になります。
従って、プリントアウトしたものは写しに当たるため、収入印紙を貼る必要はありません。
まとめ
本記事では、注文請書の基礎知識や収入印紙が必要なケース、不要なケースについて解説しました。
売買契約に該当する注文請書は収入印紙が不要、請負契約に該当する1万円以上の注文請書に関しては収入印紙が必要になります。
収入印紙が必要な場合は、契約金額に見合った収入印紙を貼り、割印を忘れずに押印するようにしてください。
収入印紙の貼り忘れや割印の押し忘れは、ペナルティが課せられるため注意しましょう。
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