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工事請負契約書に貼る印紙代はいくら?|軽減措置や節税方法を解説

2022.02.03

コラム

発注者から不利な条件を課せられることを避けるため、近年、建築業界においてさまざまな契約を結ぶ場面が増えています。

建設会社や工務店が工事を請け負う際には、発注者との間で「工事請負契約書」を取り交わさなくてはなりません。

工事請負契約書は課税文書になるため、収入印紙を貼り付ける必要があります。

  • 課税文書とは?
  • 収入印紙ってなに?
  • 契約書に印紙税は必要?
  • 印紙税を節約する方法とは?

など、契約を前に不安になるケースも少なくありません。

本記事では、工事請負契約書の概要や印紙税について解説しています。

さらに、税額や軽減措置、節税方法についても触れていますので、契約書を作成する際の参考にしてください。

工事請負契約書について

工事請負契約とは、発注者が請負業者に対して工事を受注する際に取り交わす書類のことです。

工事請負契約書を締結する場面には、次のような工事が挙げられます。

  • 新築工事
  • 改修工事
  • 増改築工事
  • リフォーム
  • 内装工事
  • 外装工事など

工事請負契約書は建設業法第19条で、

「契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。」

と明記されており、記載内容についても次の項目が定められています。

工事請負契約書の記載内容

工事請負契約書には、16項目の記載事項が義務付けられています。

(建設業法19条より引用)

  1. 工事内容
  2. 請負代金の額
  3. 工事着手の時期及び工事完成の時期
  4. 工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容
  5. 請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法
  6. 当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があつた場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め
  7. 天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め
  8. 価格等(物価統制令(昭和二十一年勅令第百十八号)第二条に規定する価格等をいう。)の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更
  9. 工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
  10. 注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め
  11. 注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
  12. 工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
  13. 工事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容
  14. 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
  15. 契約に関する紛争の解決方法
  16. その他国土交通省令で定める事項

引用元:e-GOV法令検索 建設業法

工事請負契約書の目的

工事請負契約書には、なぜ多くの記載事項が義務付けられているのでしょうか?

工事請負契約書の目的や役割について解説します。

工事請負契約書の目的①:双方の考えを確認

発注者と請負業者間で工事内容や成果物に対して認識違いがあれば、当初の合意内容と違った結果になる可能性があります。

双方の考えや意思疎通を図る上でも、工事請負契約書の締結は重要です。

工事請負契約書には工事内容や問題が起きた際の解決方法などを詳しく記載し、トラブルや紛争を回避しましょう。

工事請負契約書の目的②:請負業者を守る

発注者と請負業者との関係性は、平等な立場でなければいけません。

しかし、発注者側が優位な立場となるケースも多く、その立場を利用して請負業者に対して不利な契約(片務契約)を強要してくる場合があります。

具体的には次のような不利な契約です。

  • 代金支払い時期が不確定
  • 一方的に変更指示があり、請負業者は損害賠償請求ができない
  • 資材購入先を指示・強要されるなど

このような請負業者側が不利になる契約では、公正な取引とは言えません。

請負業者を守る観点からも、双方に不利益とならない条件を工事請負契約書に明記しておきましょう。

工事請負契約書に印紙は必要か?

工事請負契約書には契約金額に見合った印紙が必要になります。

なぜなら、工事請負契約書は印紙税法で定められた課税文書に該当するからです。

契約金額が100万円以下なら印紙代は200円というように、印紙は契約金額によって税率が変わります

工事請負契約書に印紙税が必要な点を理解しておきましょう。

参考元:国税庁「印紙税額の一覧表」

収入印紙とは

工事請負契約書に貼付が必要な収入印紙について解説します。

工事請負契約書に貼り付ける「収入印紙」の意味

不動産譲渡や請負に関する契約書、また領収書などのように、金銭のやり取りが発生する契約には、税金が課せられます

この税金は「印紙税」と呼ばれ、その手数料を支払うために発行される証票が「収入印紙」です。

このように印紙税が課せられる文書を「課税文書」と呼び、工事請負契約書も「課税文書」にあたります。

印紙税の負担者

印紙税はどちらに負担義務があるのでしょうか。

印紙税法第3条の項目で次のように定められています。

課税文書の作成者は、その作成した課税文書につき、印紙税を納める義務がある。」

「一の課税文書を二以上の者が共同して作成した場合には、当該二以上の者は、その作成した課税文書につき、連帯して印紙税を納める義務がある。」

引用元:e-GOV法令検索 印紙税法

印紙税法第3条をまとめると、

  • 印紙税の負担者は文書を作成した側にある
  • 共同で作成した場合は、お互いに印紙税を負担する

ということになります。

トラブルを避けるためにも、あらかじめ当事者間で契約書の作成方法や保管方法について、確認しておきましょう。

印紙税の金額

前述のように課税文書に該当する工事請負契約書は、印紙税法で定める印紙税を納めなければいけません。

また、印紙税は契約金額によって異なります。

現在、租税特別措置法により、工事請負契約書に対して軽減措置がとられ、印紙税の税率が引き下げられています

軽減措置の対象は、契約金額が100万円を超える工事です。

契約金額が100万円以下の工事の場合は、軽減措置の対象外となり税率は200円となります。

ちなみに、契約金額が1万円未満の工事は非課税です。

詳細は下表をご覧ください。

軽減措置は、平成26年4月1日から令和6年3月31日までの期間に作成された請負に関する契約書が対象です。

工事請負契約書 画像1

引用元:国税庁「建設工事請負契約書の印紙税の軽減措置」

工事請負契約書にかかる印紙税の軽減措置とは

租税特別措置法の一部改正により、工事請負契約書の印紙税に軽減税率が適用されます。

ここでは、印紙税の軽減措置について見ていきましょう。

軽減措置とは

印紙税の軽減措置とは、「工事請負契約書」や「不動産譲渡契約書」など「請負に関する契約書」の印紙税を軽減する特別措置のことです。

「所得税法等の一部を改正する法律」により、租税特別措置法の一部が改正され印紙税の軽減措置が適用されました。

建設工事や不動産取引は、契約書の記載金額が大きくなります。

そのため、印紙税の負担を軽減する目的で軽減措置が定められました。

軽減措置の対象

軽減措置の対象となる「工事請負契約書」の範囲は以下の通りです。

印紙税法の別表第2号の「請負に関する契約書」のうち、建設業法第2条の第1項に規定される「建設工事の請負に係る契約」に基づいて作成される契約書を指します。

建設業法に規定される「建設工事」とは、土木建築に関する工事に限定される点に注意が必要です。

建設工事に該当しない設計や建設機械の保守、船舶や家具、機械の製造の請負契約書だけでは軽減税率が適用されません

軽減措置の期間

法改正前は、令和4年3月31日までに作成した工事請負契約書が軽減税率の対象でした。

しかし、租税特別措置法の一部が改正されたことで、令和4年3月31日から令和6年3月31日までに作成される工事請負契約書に関しても軽減措置が適用されます。

参考元:国税庁「不動産譲渡契約書」及び「建設工事請負契約書」の印紙税の軽減措置の延長について

印紙を貼らなかったら?

工事請負契約書は前述のように、課税文書に該当するため収入印紙を貼り付けて印紙税を納める義務があります。

もし、課税文書に収入印紙を貼らなかった場合はどうなるのでしょうか?

契約は無効にならない

収入印紙を貼り忘れて印紙税を納付していなくても、契約は有効です。

しかし、契約文書に収入印紙を貼らなかった場合は、脱税行為とみなされ印紙税法の違反に当たります。

単なる貼り忘れや収入印紙に関する理解不足の場合でも扱いは同じです。

契約文書に収入印紙を貼っていないことは、印紙税法の違反であり、契約そのものは無効にはなりません

印紙税法違反になる

契約文書に収入印紙を貼り付けず、印紙税を納めていないことが税務調査で発覚した場合、過怠税という罰則が課せられるため注意してください。

罰則の金額は規定の印紙税を納めた上で、さらに課税文書に本来貼るべき印紙税の2倍に相当する金額を支払わなければいけません

仮に自分で貼り忘れに気付いた際は、自己申告してください。

過怠税が本来納付すべき税額の1.1倍に減税されます。

また、収入印紙を貼っていても割印(消印)を忘れていると、その契約書に貼るべき印紙代が過怠税として課せられるため、注意してください。

誤って納税した場合

  • 規定の印紙代以上の収入印紙を貼ってしまった
  • 印紙が不要な書類に収入印紙を貼ってしまった

など誤って納税した場合には、所轄の税務署長に誤った文書の原本を提示し、誤納の事実確認を受けることで印紙税が還付されます

印紙税についてわからない場合

  • 契約書が軽減措置の対象に該当するかわからない
  • 税額がわからない
  • 還付の手続き方法がわからない

など、印紙税について不明点があれば、最寄りの税務署(電話相談センター)に相談してください

また、国税庁のホームページにも税に関する情報が掲載されています。

印紙税の節税方法3つ

印紙を貼付する際に、いくつかポイントをおさえることで節税が可能です。

ここでは、3つの節税方法について解説します。

  • 契約書をまとめる
  • 消費税を明記する
  • 電子契約書にする

契約書をまとめる

設計段階も含めた建設工事を請け負う場合、設計請負に関する契約書については軽減措置が適用されません

前述したように、設計は建設工事に該当しないからです。

例えば、300万円の設計請負契約書と8,000万円の工事請負契約書をそれぞれ作成した場合は、

  • 300万の設計請負契約書
    ⇒印紙代:1,000円
  • 8,000万の工事請負契約書
    ⇒印紙代:30,000円

となり、合計31,000円の印紙代が必要です。

しかし、この契約書をひとつにまとめると8,300万の工事請負契約書になり、印紙代は30,000円になります。

個別に契約書を作成するよりも、まとめて契約書を作る方が設計請負の印紙代1,000円分の節税が可能です。

消費税を明記する

本体価格と消費税を分けて契約書に記載することで、印紙税を節税できる場合があります。

例えば、工事請負金額460万の場合、次のような記載です。

  • 工事本体価格:460万円
  • 消費税:46万円
  • 合計:506万円

上記の場合は、工事本体価格460万円に対する印紙代1,000円のみの貼付で済みます。

しかし、本体価格に消費税をプラスした506万円を契約書に記載していると、5,000円分の印紙代が必要です。

消費税を合算した契約書よりも、工事本体価格と消費税を別々に記載した契約書の方が印紙代を節税できます

電子契約書にする

上記2つの方法は契約書の記載金額によって印紙代を節税できる点がポイントでしたが、最も効果があり、確実に節税できる方法は電子契約書にすることです。

なぜなら、電子契約で交わされる契約書は書面でないため、課税文書に該当せず印紙税が課税されないからです。

内閣府「電子契約の推進」によると、

「電子手続では印紙税法の課税物件が存在しないため、印紙税納付がありません。」

と記載されています。

また、電子契約書にすれば印紙税が不要になるだけでなく、

  • 押印が不要
  • 交通費や郵送費を削減
  • 郵送にかかる手間を削減
  • 書類保管費用を削減

など、あらゆる観点から節約が可能です。

今後更に、ペーパーレス化が進み、建築業界においても電子契約を導入する企業が増えてくるでしょう。

まとめ

本記事では、工事請負契約書に貼る印紙代の概要や目的、税額、節税方法について解説しました。

工事請負契約書を締結する際に収入印紙は必須です。

貼り忘れがあると過怠税など大きなペナルティが課せられるため、注意してください。

また、令和6年3月31日まで軽減税率が適用される点も頭に入れておきましょう。

工事請負契約書を結ぶことは、発注者と請負業者が対等な関係で仕事を進めていくために重要です。

正しく契約内容を理解し、契約書を作成する際の参考にしてください。

 

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