工事請負契約書に貼る印紙とは?|工事請負契約書の役割と収入印紙の基礎知識
2022.02.03
建設会社や工務店が工事を請負う際には、発注者との間で工事請負契約書を取り交わさなくてはなりません。
請負側に発注者からの不利な条件が課せられることを避けるため、近年、建築業界において様々な契約を結ぶ場面が増えています。
ここでは、発注者や元請の建設会社との契約の際に必要な工事請負契約書に関する疑問や貼付する印紙税について解説していきます。
一般的に使用されている注文書と注文請書との相違点もまとめてみましたので、参考にしてください。
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目次
工事請負契約書について
新築、改修工事等、規模の大小問わずトラブルが発生することがあります。
例えば工期遅れによる高額な延滞金請求、追加工事費の請求ができない、工事による近隣のクレーム処理費用の肩代わりなど様々です。
このようなトラブルを避ける為、工事の発注者と請負側の原則を定めた契約書が工事請負契約書です。
工事請負契約書の内容
工事請負契約書には、必ず明記しなければならない14項目が義務付けられています。
~建設業法19条~
- 工事の内容
- 請負代金の額
- 工事着手及び工事完成の時期
- 「前払金」「出来高払」「工事完了部分」など支払の取り決めをする場合は、その支払方法や時期
- 「設計変更」「工事着手の延期」「工事中止」等申し出があった場合、「工期変更」「請負代金の額の変更」「中止による損害の負担と算定方法」
- 「天災など不可抗力による工期変更」や「損害の負担及びその額の算定方法」
- 価格変動及び変更に基づく請負代金の額の決め方、工事内容の変更の方法
- 工事の施工により第三者が損害を受けた場合の賠償金の負担に関する定め
- 注文者が工事に使用する資材・建設機械を提供または貸与する際は、その内容・方法に関する定め
- 注文者が工事の一部の完成、または全部の完成を確認するための検査の時期・方法・引き渡しの時期
- 工事完成後の請負代金の支払い時期・方法
- 工事の目的物が契約内容に適合しない場合、その責任または当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容
- 履行遅滞時の利息・違約金、損害金について
- 契約に関する紛争解決方法
これに加え新法が追加(2020年10月~)
- 工期を施工しない日
- 時間帯
工事請負契約書の目的とは?
工事請負契約書には、なぜこれほど多くの項目明記が義務付けられているのでしょうか?
それでは工事請負契約書の目的や役割を理解することで自らの会社が不利にならないよう確認してきましょう。
工事請負契約書の目的①:双方の考えを確認
工事の内容について双方の認識不足により、当初の合意内容と違った結果になる場合があります。
そのようなトラブルを起こさないようにするため、工事請負契約書に工事内容を詳細に記載するのです。
工事請負契約書の目的②:請負業者を守る
本来であれば建設工事は発注者と請負者との間で平等な立場で行うことが基本です。
しかし、残念ながら発注者側がその立場を利用して、請負者に対して不利な契約を強要してくる場合があります。
このような請負者側に不利な契約を結ばざるを得ないことが請負契約の片務性です。
不利な例は次のとおりです。
- 代金支払い時期の不確定
- 一方的な変更指示により、請負者が損害賠償請求をできない
- 資材の購入先を指示・強要される など
注文書、注文請書との違い
注文書・注文請書もそれぞれ建築工事の際、頻繁に作成・送付されている文書です。
しかしながら、どちらも単体では法的に取引の存在を証明することができません。
それぞれが「一方的に文書を作成・通達」しているからです。
それに対し、契約書を結ぶことによって、取引条件を定めた同一内容について、双方の当事者が「合意した」ことを証明できます。
注文書と注文請書をセットにしてそれぞれ作成・保管する場合は双方の意思が明らかになり法的にも証明されます。
収入印紙とは?
次に、工事請負契約書に貼付する収入印紙について説明します。
工事請負契約書に貼付する『収入印紙』の意味
不動産譲渡や請負に関する契約書や領収書など金銭のやり取りが生じる契約の際には、税金が課せられます。
これが「印紙税」にあたり、その手数料を支払うために発行される証票を「収入印紙」と呼びます。
このように印紙税が課せられる文書を「課税文書」と呼び、工事請負契約書も「課税文書」にあたります。
印紙税の負担者
印紙税を負担するのは、原則として文書を作成した側になります。
契約書のように2通作成し、それぞれが保管する場合は、お互いに1通ずつ負担する場合もあります。
トラブルを避けるため、あらかじめ当事者の間で契約書の作成や保管について、取り決めをしておきましょう。
印紙税(経過措置)の金額は?
印紙税の金額は、領収書や契約書など内容に応じて異なります。
建設工事の請負の際に作成される契約書のほか、工事金額や工期等の変更の際に作成される変更契約書についても課税対象となります。
なお平成26年4月1日から令和4年3月31日までの間に作成されるものについては、以下の通り軽減措置が適用された印紙税額になります。
契約金額 | 印紙税額 |
1万円を超え 200万円以下のもの | 200円 |
200万円を超え 300万円以下のもの | 500円 |
300万円を超え 500万円以下のもの | 1千円 |
500万円を超え1千万円以下のもの | 5千円 |
1千万円を超え 5千万円以下のもの | 1万円 |
5千万円を超え 1億円以下のもの | 3万円 |
1億円を超え 5億円以下のもの | 6万円 |
5億円を超え 10億円以下のもの | 16万円 |
10億円を超え 50億円以下のもの | 32万円 |
50億円を超えるもの | 48万円 |
~国税庁「建設工事請負契約書の印紙税の軽減措置」参照~
印紙を貼らなかったら?
ここでいくつか注意が必要です。
収入印紙とは、課税文書に貼付し、割印(消印)することで支払う税金です。
割印することで使い回しではないことを証明しますので忘れないようにしましょう。
このような契約文書に収入印紙を貼らなかった場合は、脱税行為とみなされます。
単なる貼り忘れや収入印紙に関する理解不足によるものでも扱いは同じです。
過怠税(本来納付すべき税額の3倍)が課せられるので注意しましょう
仮に自分で貼り忘れに気付いた際は、自己申告で過怠税が本来納付すべき税額の1.1倍に減税されます。
印紙税の節税ポイント
印紙を貼付する際には、いくつかポイントをおさえることで節税が可能です。
やらないと損なので、印紙を添付する際に役立ててください。
契約書をまとめる
設計段階も含めて建設工事を請負った場合、設計請負に関する契約書については、軽減措置が適用されません。
例えば、300万円の設計請負と8,000万円の工事請負の契約書をそれぞれ作成した場合は、次のとおりです。
- 300万の設計請負契約書 印紙代:1,000円
- 8,000万の工事請負契約書 印紙代:30,000円
合計で31,000円の印紙が必要です。
これを一つにまとめた契約書にすると、8,300万の工事請負契約書『印紙代:30,000円』のみ必要なので設計請負分の印紙代が節約できます。
消費税明記
契約書において本体価格と消費税を分けて記載することで印紙税を節税できる場合があります。
例えば、工事請負金額460万の場合は次のとおりです。
- 工事本体価格:460万円
- 消費税:46万円
- 合計:506万円
本体価格の460万円に対する印紙1,000円の貼付で済みます。
もしこの場合、本体価格に消費税込の506万円のみ記載されていると5,000円の印紙が必要になります。
電子契約書とは?
今後更に、ペーパーレス化が進み、建築業界においても電子契約を導入する企業が増えていきます。
内閣府の電子契約の推進によると『電子手続では、印紙税法の課税物件が存在しないため、印紙税納付がありません。』と記載されています。
また印紙税とは、『用紙等に課税事項を記載』(参照:国税庁「印紙税法基本通達第44条」)とあり、電子契約書は、印紙税の対象にはあてはまらないと理解できます。
まとめ
工事請負契約書の役割と収入印紙に関する解説でした。
あらゆる工事について工事請負契約書を結ぶことは、発注者と請負者が対等な関係で仕事を進めていく上で重要なことです。
将来にわたり継続的な工事物件を扱う上で、発注者や工事を依頼する請負業者とのトラブルは絶対に避けなくてはなりません。
工事請負契約書には、押印や印紙の貼付など、必要項目の記載にとどまらず適正な処理が必要になります。
正しく契約内容を理解し、契約書を作成する際の参考にしてください。
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