脱炭素社会を目指す建築業|現状と課題、取り組み事例について解説
2023.02.27
日本国内で脱炭素社会に向けた動きが活発化している現状をご存じでしょうか。
脱炭素社会に向けた取り組みは日本だけではありません。
脱炭素は地球規模の課題であり、世界中が脱炭素社会を実現するための取り組みを行っています。
使用建材や施工段階でのCO2排出など、地球温暖化への影響が懸念される建設業にとって、脱炭素社会への取り組みは非常に重要です。
本記事では脱炭素社会について、現状と課題、建設業における取り組み事例を解説しています。
ぜひ、最後までご覧ください。
目次
建築業2050年までに目指す脱炭素社会
地球温暖化の原因とされる温室効果ガスをいかに削減するのかが、脱炭素社会を目指すうえでのキーポイントになります。
建設業が2050年を目標に取り組んでいる脱炭素社会について解説します。
脱炭素社会とは
脱炭素とは地球温暖化を進行させるCO2やフロンガスなどの温室効果ガスを、ゼロにする取り組みを指します。
温室効果ガスが実質ゼロになった社会を脱炭素社会といい、国内では2050年までに目標を達成するため、さまざまな試みが行われています。
脱炭素社会は日本だけが目指している取り組みではありません。
地球温暖化を懸念する世界中のあらゆる国が、未来の地球環境を守るための対策に取り組んでいます。
2050年カーボンニュートラル宣言
2020年10月、管善偉元首相は2050年までに温室効果ガスの排出量を実質的にゼロにする「カーボンニュートラル宣言」を行いました。
カーボンニュートラルとはCO2を含む温室効果ガスの排出量から、植林や森林が吸収する量を差し引いた合計が実質ゼロとなる下図のような状態をいいます。
2050年までのカーボンニュートラル実現を表明している国は世界中で125ヶ国。
出典:経済産業省 資源エネルギー庁「カーボンニュートラル」って何ですか?(前編)
2060年までの実現を表明している中国を合わせると、世界中で約3分の2の国がカーボンニュートラルを目標に掲げています。
脱炭素社会の必要性
下図は2019年の日本における温室効果ガスの排出量を示しており、年間で約12億トンを排出しています。
国内では脱炭素社会とカーボンニュートラル実現のため、2050年までに吸収量と除去量を差し引いた温室効果ガス排出量を実質ゼロにする必要があります。
国内だけでなく脱炭素社会は世界共通の課題です。
2015年には「パリ協定」が採択され、以下の世界共通目標が掲げられました。
- 世界中の平均気温上昇を産業革命以前と比較して、2℃より低く保つこと
- 21世紀後半に温室効果ガスを実質ゼロにすること
上記のように脱炭素社会は国際的にも必要とされています。
脱炭素社会に向けた挑戦は、次世代が安心して生活できる持続可能な経済社会を生み出します。
そのため、国や自治体だけでなく企業や個人も積極的に取り組む必要があるでしょう。
建築業におけるCO2排出量の現状と課題
国内のCO2排出量の約3分の1は建設業を含む産業部門が占めている現状です。
建設業では建築や解体作業を行う際に、多くのCO2を排出しています。
施工工程で排出されるCO2をいかに削減できるかが今後の課題です。
建設機械や発電機に使われる燃料や電力がCO2排出の要因といわれており、バイオマス燃料や水素エンジン、ハイブリッド、EV建機などの導入が期待されています。
脱炭素社会に向けた建築業の取り組み
建設業における脱炭素社会への取り組み事例を紹介します。
再生可能エネルギーへの転換
建設業では再生可能エネルギーの導入を推進しています。
太陽光や地熱、風力、バイオマスなどの再生可能エネルギーは、温室効果ガスを排出しない特徴を持ち、国内で生産可能な低炭素エネルギー源です。
脱炭素社会に向けて、温室効果ガスを発生させる石油や石炭などの化石燃料から、温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギーへの転換が積極的に行われています。
また、効率的にエネルギーを使って、建築物の消費エネルギーを大幅に削減するZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の普及も脱炭素社会に向けて求められています。
出典:環境省 ZEBとは?
原材料のカーボンニュートラル化
建設で使用する原材料に対しても、脱炭素社会に向けた取り組みが行われています。
資材調達から設計、施工、解体に至るまで建設にかかわる活動全てにカーボンニュートラル化が必要です。
例えば、新建材のカーボンリサイクル・コンクリートは廃コンクリートから取り出した炭酸カルシウムを原料としており、製造過程でのCO2削減効果が期待されています。
また、環境にやさしい低炭素材によるグリーン購入の推進や照明をLEDに変更して省電力化を行うなど環境負荷を考えた動きが活発です。
建築物省エネ法の制定
2017年、脱炭素社会に向けた取り組みとして、「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)」が施行されました。
建築物省エネ法は、建築物の省エネ性能の向上を図る目的で制定された法律です。
2022年には建築物省エネ法が改正され住宅・非住宅を問わず、すべての新築物件に対して、省エネ基準をクリアすることが建築確認の条件となりました。
さらに地球温暖化の原因となるCO2を吸収する木材の積極的な利活用も盛り込まれました。
国内のエネルギー消費量の約3分の1を占める建築業では、法律制定など脱炭素社会の実現に向けた取り組みが急ピッチで進められています。
国内建築業界での取り組み事例
スーパーゼネコンといわれる大手建設会社の脱炭素社会に向けた取り組み事例を紹介します。
鹿島建設
鹿島建設では排出されるCO2の約90%が施工段階であることに着目し、現場での軽油や電力使用量を抑えてCO2を削減する次の取り組みを行っています。
- 現場の全工程から排出されるCO2を月単位で把握できる「環境データ評価システム(edes:イーデス)」を開発
- 工事規模に合わせてCO2の削減量が算出できる「現場deエコ」を開発
施工段階のムダをなくし、化石燃料の消費を抑えてCO2削減および脱炭素社会を目指した活動に注力しています。
さらに、建築物に住み始めてからのエネルギー消費が少なくて済むように、環境や省エネを意識した設計を心がけています。
竹中工務店
竹中工務店では脱炭素社会に向けて木材の利用を推進しています。
木を構成する成分の50%は炭素です。
そのため、建材に木材を用いれば木材内部の炭素が大気中に放出されず固定したままの状態で留まります。
また、解体で出た廃材を木質バイオマスとして再利用すれば、一旦はCO2が放出されますが、森林サイクルを維持していれば、CO2が吸収されるため均衡を保てます。
このように、建築から解体に至るプロセス全般で、CO2の削減が可能です。
さらにCO2排出量をゼロに近づける「ゼロカーボン建築」や自給したエネルギーの余りを他の建築に利用する「カーボンマイナス建築」など、脱炭素社会に向けた取り組みを行っています。
清水建設
清水建設では持続可能な社会を目指すため、「脱炭素社会」「資源循環」「自然共生」の3つを重視した「SHIMZ Beyond Zero 2050」という目標を掲げています。
事業活動で排出されるCO2と設計施工段階や運用時に排出されるCO2を2050年にゼロにする目標です。
また、環境にやさしい軽油代替燃料の積極的使用や、既存のコンクリート表面にコーティングして大気中のCO2を吸収・固定する「DAC(Direct Air Capture)コート」の開発などCO2削減に向けた取り組みがあります。
まとめ
今記事では建築業における脱炭素社会とは?をテーマに脱炭素社会が必要な理由や取り組み事例について解説しました。
脱炭素社会は日本だけでなく世界的な目標であり、実現に向けた取り組みは世界中で行われています。
国内のCO2排出量の3割が建設分野にかかわるため、脱炭素社会に向けて建設業が担う役割は非常に重要です。
SDGs(持続可能な開発目標)の視点からも重要であり、取り組み事例などを参考にして未来の住環境をよりよくするための行動を始めてみましょう。
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