建設業の事業承継とは?建設業許可の引き継ぎや3つの承継方法を解説
2023.02.28
中堅および中小建設業の経営者にとって、事業承継や後継者問題は避けて通れない経営課題です。
その反面、事業承継はまだ早いと先延ばしにしている経営者の方も多いのではないでしょうか。
いつまでも健康でいられるとは限りません。
急に病に伏せた場合、後継者がすぐに見つからず、スムーズに事業承継が行えない可能性もあります。
スムーズに事業承継を行うためには事前準備をしっかりと進めることが大切です。
本記事では建設業の事業承継について、建設業許可の引き継ぎや承継方法、メリット・デメリットについて解説しています。
後継者不足や経営の先行きに不安を抱えている経営者の方はぜひ参考にしてください。
目次
建設業の事業承継とは
事業承継とは事業を後継者に引き継ぐ手続きのことです。
中堅および中小建設業ではオーナー社長のビジネスセンスや才覚が、経営存続の礎となっている企業が多くあります。
そのため、「後継者選びや事業の引き継ぎをどのように行うのか」が重要な経営課題です。
事業承継は次期経営者を誰にするのかという引き継ぎの問題だけでなく、
- 「自社株をどうするのか」
- 「後継者をどう教育して育てるのか」
という点も考慮する必要があります。
事業承継後に持続的な成長を続けるためには、後継者と今後の経営について協議し、注意深く進めていくことが大切です。
建設業界における事業承継の現状
政府と民間を合わせた建設投資額は、ピーク時の平成4年(84兆円)から令和3年には30.5%減となる58.4兆円まで落ち込みました。
また、全盛期(平成11年)には約60万あった建設事業者数が、令和3年には20.9%減の約47.5万まで減少し、建設業界全体が右肩下がりの傾向がみられます。
しかし、老朽化したインフラの維持管理やマンションの大規模修繕、さらに2025年の大阪万博や2027年予定のリニア中央新幹線などもあり、建設需要は高まる予想です。
需要が高まるなか、建設業は他の職種と比べて、従業員の高齢化や人手不足が深刻化している問題があります。
そのため、退職や採用難による労働力不足で事業継続が難しくなり、倒産してしまうケースも少なくありません。
昨今、建設業における事業承継も増加傾向にあり、M&Aも活発化している現状です。
その背景には前述の労働力不足や建設需要の高まりが関係しており、同業種からのM&Aだけでなく異業種からの介入も増えています。
建設業許可の引き継ぎ
建設業の事業承継で注意したい点は、建設業許可の引き継ぎです。
以前は建設業許可の引き継ぎができませんでした。
そのため、事業承継後に改めて許可申請の必要があり、許可が下りるまで建設業を営むことができない問題がありました。
令和2年10月1日に建設業法が改正されたことで、建設業許可の引き継ぎが可能となり、営業が滞ることなく事業承継できるようになりました。
ただし、建設業許可の要件を満たさずに事業承継を行った場合、許可を取り消されるため注意しましょう。
建設業許可の要件
建設業許可を承継するためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 経営業務について一定期間の経験を有する管理責任者の在籍
- 実務経験や資格を有する専任技術者の在籍
- 営業所がある
- 誠実性があり財産的な基礎を有する
- 申請書に虚偽や記載漏れなど欠格要件がないこと
上記の要件を整えていなければ、許可が取り消され、日常業務が停滞するため注意してください。
個人事業主の法人成りによる承継
建設業法の改正前までは、個人事業主が法人成りをする場合、個人が持つ建設業許可を法人に引き継ぐことができませんでした。
そのため、廃業の手続きを経て、再び法人として建設業許可を取得する必要がありました。
許可が下りるまでは空白期間があり、営業ができません。
しかし、令和2年の建設業法改正で、要件をクリアすれば、個人事業主から法人成りへの建設業許可の引き継ぎができるため、建設業の事業承継がさらに取り組みやすくなりました。
建設業許可が不要な場合
建設業を営む際には建設業許可を取得する必要があります。
しかし、軽微な工事のみを請け負う場合には、建設業許可を取得する必要はありません。
建築工事における軽微な工事とは次のような工事になります。
- 工事1件の請負金額が1,500万円未満の工事
- 延べ面積が150㎡未満の木造建築工事
- 建築一式工事以外の工事に関しては500万円未満の工事
上記条件のいずれかに当てはまる工事であれば、建設業許可が不要な軽微な工事となります。
建設業における事業承継の方法
建設業で事業承継を行う主な方法は次の通りです。
- 親族承継
- 親族外承継
- M&A
上記、3つの方法について解説します。
建設業の事業承継方法①:親族承継
親族承継は経営者の兄弟や息子、親戚などを後継者とする方法です。
親族継承のメリット
親族承継を行うメリットは次の3つです。
- 後継者を選びやすい
- 後継者教育に時間をかけられる
- 取引先に受け入れられやすい
項目ごとに解説します。
後継者を選びやすい
親族承継は他の承継方法と比べると、後継者の選択肢が限られているのでスムーズに選べます。
気心も知れているため、承継後の条件や待遇面などの交渉を持ちかけやすい点もメリットのひとつです。
後継者教育に時間をかけられる
早い段階で後継者を決めておけば、後継者を教育するための準備期間を十分取れます。
後継者教育に時間をかけられるため、社内での経験値を高めるだけでなく、社外で経験を積んで見聞を深めるなど、さまざまな育成方法が選択できる点もメリットです。
取引先に受け入れられやすい
中小建設業の場合、親族が経営を引き継ぐケースが一般的な慣習となっており、周知の事実として取引先や従業員から受け入れられやすいでしょう。
後継者を育成する準備時間をしっかりと取って、関係者からの協力や理解を得られる環境を作り上げることが大切です。
親族継承のデメリット
親族承継を行うデメリットは次の2点です。
- 後継に適した人材がいない
- 親族間でトラブルが発生する
それぞれのデメリットについて解説します。
後継に適した人材がいない
親族のなかに後継者としてふさわしい人材がいない場合があります。
たとえ経営者の子供であっても、後継者として資質に欠けていれば、事業承継後の企業存続が難しくなるでしょう。
企業存続を最優先に考えるならば、親族継承に固執せず親族外承継やM&Aなど第三者に承継する検討も必要です。
親族間でトラブルが発生する
社内に後継者候補が複数いる場合、後継者選びで意見が食い違うと親族間でトラブルが起きる可能性があります。
後継者選びや相続、株式譲渡などを含め、親族間でしっかりと話し合う機会を設けて計画的に事業承継を進めていくことが大切です。
建設業の事業承継方法②:親族外承継
親族外承継は血縁や親族以外の社内役員や従業員または社外人材を後継者とする方法です。
親族外継承のメリット
親族外承継を行うメリットは以下の通りです。
- 会社を深く理解した後継者を選べる
- 後継者の選択肢が多い
各メリットについて解説します。
会社を深く理解した後継者を選べる
企業理念や経営方針を深く理解している役員や従業員が後継者候補であれば、承継後も一貫性のある経営が行えます。
もし、事業承継後に経営方針が変わってしまうと、従業員が馴染めずに離職してしまうかもしれません。
会社に対して理解の深い後継者であれば、企業経営を保持できるため人材流出を防止できます。
後継者の選択肢が多い
親族外承継は社内のみならず社外からも後継者候補を選出できるため、幅広い選択肢から選べるメリットがあります。
社外からヘッドハンティングして優秀な人材を登用したり、勤務態度や業績を踏まえて適切な後継者を選出したりなどが可能です。
優れた人材を後継者に迎え入れることができれば、企業の業績や利益向上が期待できます。
親族外継承のデメリット
親族外承継を行うデメリットは、次の2つです。
- 後継者には資金が必要
- 個人保証の引き継ぎ
それぞれのデメリットについて解説します。
後継者には資金が必要
事業承継をする場合、株式や会社の資産を引き継がなければいけません。
株式取得には多額の資金が必要なため、後継者への負担が大きく経済力のある人材が求められます。
個人保証の引き継ぎ
経営者が個人保証人となって金融機関から融資を受けている場合、後継者は個人保証の引き継ぎが必要になります。
個人保証を後継者が拒否すると事業承継が実現できない可能性もあるため、あらかじめ話し合いを行って後継者の意思を確認しておきましょう。
建設業の事業承継方法③:M&A
M&AはMergers and Acquisitions(合併と買収)を略したもので、資金移動を含む企業の合併と買収を指します。
人手不足や経営者の高齢化に伴い、近年では建設業でもM&Aによる事業承継が増加傾向です。
M&Aのメリット
M&Aを行うメリットを紹介します。
- 売却益がある
- 企業成長が期待できる
メリットごとに解説します。
売却益がある
M&Aで事業を売却すれば、経営者はまとまった資金を獲得できます。
獲得した資金は新規事業への立ち上げや負債を抱える事業へ流用することが可能です。
廃業を検討している場合には、解雇する従業員への補償や税務処理、在庫処分費用などの資金として役立ちます。
企業成長が期待できる
M&Aを戦略的に用いて優良企業へ売却を行えば、さらなる事業継続と企業成長が期待できます。
また買い手企業の資金力を活用すれば、スムーズな資金繰りや業務体制の強化など、より安定した経営が行えるため、市場競争での生き残りが可能です。
事業承継のポイント
建設業において事業承継を行う際のポイントは、経営業務の管理責任者と専任技術者です。
建設業許可の新規申請や引き継ぐ場合、管理責任者と専任技術者は重要なポジションになります。
建設業での経営実務経験が5年以上あれば、管理責任者の要件を満たすため引き継ぎ申請が円滑に行えます。
また、専任技術者は一定期間の実務経験や専門士などの資格が要件となるため、時間をかけて事前準備を行うことが事業承継を成功させるポイントといえるでしょう。
事前準備を怠って建設業許可の引き継ぎができなければ、業務に支障をきたすため注意しましょう。
まとめ
本記事では建設業の事業承継について、建設業許可の引き継ぎや承継方法、メリット・デメリットについて解説しました。
建設業での事業承継は年々増加傾向にありますが、人手不足のうえに経営者の高齢化など多くの課題が山積み状態です。
事業承継は事業自体の引き継ぎにとどまらず、株式などを引き継ぐため事前に打ち合わせを重ねて、後継者の意思を確認しておく必要があります。
事業承継の際にトラブルにならないためにも、取引先や従業員へ説明を繰り返し、理解と協力を得ることが大切です。
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