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見積書に有効期限を設ける目的とポイントは?有効期限を利益につなげる

2022.05.31

コラム

普段何気なくやり取りしている見積書に、有効期限があることをご存じでしょうか。

建設業にかかわらず、一般的な見積書にも有効期限はつきものです。

では、なぜ有効期限が設定されているのでしょうか。

有効期限には、材料価格の変動に備えて赤字受注のリスクを回避したり、顧客に発注を促したりする目的があるのです。

そこで本記事では見積書の有効期限をどのように考えて活用すれば良いのか解説します。

ぜひ本文を参考にして、賢い受発注ができるようにしましょう。

見積書とは

見積書とは、発注者に対して提供する商品やサービスの金額、数量、期間、工程、期限などをあらかじめ提示するための文書です。

見積書に記載された内容を確認して、契約の有無を比較・検討します。

見積もりを依頼する場合、1社だけではなく複数の業者から見積もりをとって比較する方も多いでしょう。

そのため、他社と比べられても、自社が選ばれるような提案を工夫することが大切です。

見積書は証憑書類(取引の事実を証明する書類)に分類されるため、一定期間の保存義務があります。

保管期間は、法人は原則7年間、個人事業主は原則5年間です。

見積書の作成は法律で義務付けられているわけではなく、商習慣によって発行される書類になります。

memo

ただし、建設業においては建設業法第20条

「建設工事の注文者から請求があつたときは、請負契約が成立するまでの間に、建設工事の見積書を交付しなければならない。」

と定められているため、注意しましょう。

見積書の記載項目

見積書に記載する項目は、特に決まった形式はありません。

そのため、自社に適したテンプレートを作成してもいいですし、インターネット上に公開されている多くのテンプレートから選ぶのもいいでしょう。

また、表計算ソフトやワープロソフトにも標準的なテンプレートが入っています。

ただし、見積書を作成する際には以下の項目を必ず記載するようにしましょう

タイトル

「見積書」や「見積もり書」、「お見積書」、「御見積書」などタイトルを書類上部の中央に記載します。

発行日

発行日を記入すれば、どの時期に見積もった内容なのかを明確にできます。

作成者

会社名や部署名、住所、電話番号、担当者名を明記します。

記載位置は見積書の右側上部で、見積書を提出する宛名より少し下です。

また、会社名や住所に重なるように右寄りに社印を押します。

顧客名

見積書を提出する相手先の宛名を記載してください。

宛先が法人なら「△△御中」、個人であれば「⬜︎⬜︎様」です。

ただし、会社名と担当者名を記入する場合は、下の例のように御中をつけずに担当者名の後ろに様をつけます。

  • 株式会社△△ 御中 (会社宛)
  • 株式会社△△ 代表取締役◯◯様 (社長宛)
  • 株式会社△△ ◯◯部 ⬜︎⬜︎様 (担当者宛)

見積番号

見積番号は必須項目ではありません。

しかし、見積書ごとに番号を割り振って管理しておけば、顧客ごとの取引内容や履歴が把握しやすくなります

また、相手先によっては何度も見積書を見直したり、変更したりするケースがあります。

見積書の変更状況を明確にするためにも、1通ごとに番号を割り振っておきましょう。

件名

工事やプロジェクトの件名を記載してください。

官公庁の工事であれば、指定された工事名を記載します。

施工日

工事予定日が決まっている場合は、具体的な日付を記載してください。

未定の場合は、受注後どのくらいで着工できるのかを示します。

施工現場名

施工場所の記載です。

住所を明記することもありますが、「◯◯マンション修繕工事」など固有名詞を記載する場合もあります。

見積金額

見積もりの合計金額を大きく記載してください。

小計や消費税額、総合計金額を記載する場合は、項目ごとに明記します。

見積明細・内訳

資材名や規格、数量、単価など、見積の内訳を記載します。

「⬜︎⬜︎工事一式」などと、まとめて記載せずに資材ごとの明細を細かく示すようにしましょう。

資材や工事ごとの内訳を記載すれば、見やすくてわかりやすい見積書になります。

有効期限

見積書の有効期限を明記します。

もし、見積金額の変動が想定される場合には短めの有効期限を設定しましょう。

有効期限を設けると期限までに早めの発注を促す効果があります。

具体的には次のような記載です。

  • 見積書有効期限:◯年◯月◯日
  • 見積書有効期限:発行日から2週間以内

備考

見積もりに関する補足事項や注意書き、連絡事項があれば記載します。

見積書の有効期限とは

見積書の有効期限とは、見積書に記載してある価格や仕様で発注できる期限のことです。

そのため、有効期限内であれば、見積書通りに商品やサービスを納品してもらう権利があります。

逆に見積書を発行した側は、有効期限内に注文を受けたら、記載内容通りに納品しなければいけません。

memo

また、有効期限が切れた場合には、再見積もりが必要です。

民法523条に、以下の条文があります。

「承諾の期間を定めてした契約の申込みは、撤回することができない。」

承諾の期間とは有効期限のことを指し、有効期限を設定した契約は自由に撤回できない点に注意してください。

有効期限の記載場所と記載方法

有効期限の記載場所は一般的に見積書の表紙、もしくは最初のページに記載します。

記載方法は主に以下の2種類です。

  • 「令和〇年〇月〇日まで」など期限の日付を記載
  • 「発行日より〇ヶ月間有効」など発行日から期限の日付を逆算

しかし、有効期限の記載場所や記載方法には、決められたルールはありません

企業によっても異なるため、見積書を受け取った際には、有効期限の記載内容を忘れずにチェックしましょう。

具体的な有効期限について

一般的に見積書の有効期間は、2週間〜6ヶ月です。

有効期間の長さに決まりはないため、有効期間が短くても長くても、問題があるというわけではありません。

ただし、前述のように有効期限を設定した見積書は、発行後に撤回できない点に注意が必要です。

見積書に有効期限がない場合

企業によっては、見積書に有効期限を記載していない場合があります。

有効期限が、必ずしも発注側の利益につながるわけではありません。

しかし、有効期限が記載されている方が、契約文書としての信憑性は高まります。

有効期限が見積書に見当たらない場合は、念のため発行元に問い合わせると良いでしょう

民法525条第1項に、「承諾の期間の定めのない申込み」について以下のように定められています。

「承諾の期間を定めないでした申込みは、申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは、撤回することができない。」

つまり、有効期限のない見積書の場合、申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間が過ぎるまでは撤回できません。

この先ずっと撤回できないわけではありませんが、もし商品やサービス内容に変更があっても、相当な期間が経過しなければ、取引条件を変更できない点に注意が必要です。

見積書の有効期限が過ぎた場合

見積書に記載された有効期限が切れている場合、効力がなくなってしまうため再発行が必要です。

取引先に見積もり内容を問い合わせて、価格や取引内容に変更がないか確かめてみましょう。

取引内容に変更がなくても再発行する際には、前回の見積内容とまったく同じものが出てくるとは限りません。

材料費の変化や企業方針などにより、価格や仕様が変更になる場合があります

発注側には「以前の見積書と同じ内容にして欲しい」と要求できないため、見積書の有効期限には注意しましょう。

見積書に有効期限を設定する理由・目的

なぜ、見積書に有効期限を設けるのでしょうか。

取引先に有効期限を示すだけでなく、2つの理由があります。

  • 材料価格の変動に備えるため
  • 顧客に発注を促すため

材料価格の変動に備えるため

見積書に有効期限を設定するひとつ目の理由は、材料価格の変動に備えるためです。

建設工事では使用する資材の量が多く、材料単価や燃料費のわずかな変動で工事全体の費用が大きく影響を受けます。

ウッドショックやアイアンショックによる木材や鉄鋼価格の高騰であったり、ガソリン価格の高騰があったりすれば、有効期限のない見積価格では赤字になってしまいます。

また、コロナ禍でのロックダウンのように工場停止や縮小があれば、供給量が低下して納品が困難になる可能性もあるでしょう。

昨今では人手不足の問題もあり、人件費も高騰傾向にあります。

このように変動が激しい状況下では、取引先が発注を検討する期間を計算に入れて、有効期限を短く設定することも大切です。

見積書に有効期限を設定すれば、材料価格の変動に備えるだけでなく、赤字受注のリスクを回避できます

顧客に発注を促すため

見積書の有効期限を明示すれば、顧客に発注を促す効果があります。

見積書の有効期限が切れて再見積りをした場合、価格高騰や仕様変更がないという保証はありません

その結果、「迷っている間に価格が変わってしまうかもしれない」という心理作用が生まれ、発注に結び付きます。

顧客によっては有効期限があることを知らない方もいるため、見積書を発行する際には口頭で知らせておくとより効果が上がります。

しかし、あまりしつこいと相手に不快感を与えるため、あくまで軽く触れる程度にしておき、相手が迷っている際に背中を押すくらいのタッチで伝えましょう。

見積書に有効期限を設ける際のポイント

見積書に有効期限を設定する際のポイントは次の2点です。

  • 建設業に適した有効期限を設定する
  • 見積書で設定した有効期限は撤回できない

詳しく説明していきましょう。

建設業に適した有効期限を設定する

見積書に設定する有効期限の期日に、法的な規制や制約はありません。

一般的な有効期限は2週間から6ヶ月ですが、業種によって適切な有効期限も違ってきます。

しかし、設定に規制がないからといって、有効期限を長期にすると前述のように価格高騰があった場合、赤字受注となりかねません。

有効期限が1年、2年と長期になると、誘引力も下がり、材料価格の変動にも対処しかねます

そのため、建設業に適切な有効期限を設定し、顧客の購買意欲を促す心理的効果を与えることが大切です。

見積書で設定した有効期限は撤回できない

民法第523条第1項により、有効期限のある見積書を提示した発行者は、取引先に契約を申し込んだことになるため、有効期限内は契約を撤回できません

また、同条の第2項には、「承諾の通知」について以下のように定めています。

「申込者が前項の申込みに対して同項の期間内に承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う。」

有効期限のある見積書はその期間を過ぎても、承諾する(契約する)通知がない場合、その見積書は効力を失うことになります。

つまり、見積書に記載した内容で契約を結ぶ必要がなくなるのです。

この規定により、有効期限内に材料価格が高騰しても、有効期限が切れれば再見積もりできるため、赤字受注のリスクを回避できます

見積書の有効期限を利益につなげるには

見積書の有効期限をどう設定するかによって、会社の利益は大きく左右します。

なぜなら、有効期限内における発注費用や受注費用が、すでに決定しているからです。

有効期限を利益につなげるためには、次の2点を意識して設定しましょう。

  • 原価が変動するタイミング
  • 顧客の検討期間

上記の2つは、発注側と受注側の双方にとって重要なポイントです。

企業によって適切な有効期限は異なるため、自社の状況に照らし合わせて検討してください。

見積書を顧客に提出する場合

自社の見積書に有効期限を設定する場合、頻繁に取引する材料は何かを考え、原価が変動する可能性について考えてみましょう

例えば、住宅建築が主な事業の施工会社であれば、頻繁に取引する材料は木材です。

倉庫や工場建設の場合は、木材よりも鉄骨やコンクリートを重視すべきでしょう。

さらに、顧客が契約の検討にどのくらいの期間を要するのかを考えることも大切です。

有効期限が長すぎると、顧客は急いで決めなくても良いと感じ、逆に有効期限が短すぎると、顧客は十分に検討できず、発注に結びつかない結果になってしまいます

見積書を提示してもらう場合

見積書を他社から提示してもらう場合、有効期限と社会情勢を確認するとともに、値上がりのタイミングを見極めた上で検討してみましょう。

必要な材料を値上がり前に押さえておくことは、単に自社の利益につながるだけではなく、材料をキープしておくという意味でも重要です。

また、普段から取引のある会社との関係を良好にしておくと良いでしょう。

特に建材店と信頼関係を築いていれば、材料が値上がりするタイミングを前もって教えてもらえたり、「値上がり前に見積書を出して欲しい」と頼めたりする利点があります。

世の中の情報にアンテナを張る

社会情勢や取引先との関係に気を配ることは、適切な発注時期や受注のタイミングを検討する際にとても重要です。

単にニュースを見るだけではなく、起こったことが建設業界にどのように影響するのか、具体的に想像してみましょう

例えば、新型コロナウイルスの影響を受けて各国がロックダウンを実施した際に、取引先の工場がロックダウンした国にあれば、どのような影響があるでしょうか。

工場の縮小や停止も考えられます。

それに伴って供給が一気にストップする、ということまで想定できれば、同じ材料を取り扱う他の会社を探したり、今ある材料を押さえたりなど、新たな動きが取れるでしょう。

まとめ

本記事では、見積書の概要と有効期限を設ける目的について解説しました。

見積書の有効期限は、意味もなく設定されているわけではありません。

材料価格の変動に備えたり、顧客の発注を促したりなど、大切な目的があるのです。

民法でも見積書に設定した有効期限は、撤回できないと定められています。

発注や受注ひとつとってもただ漠然と進めるのではなく、有効期限に注意を払い、価格変動などのタイミングを見計らって契約することが重要です。

そうすることで、より他社との差別化を図れ、強みのある存在へと成長できるでしょう。

 

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