それってもしかしてコンプライアンス違反?リフォーム会社が注意すべきポイント|住宅リフォーム経営コンシェルジュ
2017.08.10
目次
そもそもコンプライアンスとは
企業におけるコンプライアンスは一般的に「法令遵守」と訳されます。
昨今では、法律を守ることにとどまらず、企業倫理、社会的責任(CSR)をひっくるめて「やってはいけないこと、社会的に許されない行為を律する仕組み」という意味で使用されることが多くなってきています。
つまり、コンプライアンスという言葉が意味する範囲は多岐にわたっており、明確ではありません。
明確ではないということは、各企業が自分たちで「やっていいこと」と「やってはいけないこと」の線引きをする必要がでてくるということです。
すなわち、コンプライアンスを考えるうえでリスクを回避するためにどういったルールを自分たちで設定し、実行していくかが非常に重要だといえるでしょう。
なぜ今、コンプライアンスが重要なのか
最近、コンプライアンスという言葉をよく耳にするようになりましたが、これはなぜでしょうか?
もちろん理由は複数ありますが、以下の2点が大きく影響していると考えられます。
【雇用形態の変化】
1つ目には雇用形態の変化が挙げられます。昨今では、多くの企業が成果主義を採用し、人材の企業間移動量は増進傾向にあります。
それは、1つの会社で定年まで勤めあげるという概念が徐々に失われてきていることを意味します。
- 「定年まで勤めようと思っている会社ではないし…」
- 「自分を認めてくれる会社に転職して、スキルアップを目指したい!」
こういった考えは、働き方に多様性をもたらす一方で、会社への忠誠心や責任感の薄れを招く側面があるということも否定できないでしょう。
そうなると、かつては仲間意識により守られてきた「やってはいけないこと」が表に出てきやすくなることは、言うまでもありません。
このように「会社への忠誠心・責任感」に支えられ、コンプライアンスを意識しなくて良かった時代から、コンプライアンスを強く意識し、内容を整備すべき時代へと変化したといえるのです。
情報化社会に伴う拡散スピードの速さ
2つ目は、SNSの急速な普及です。Facebook、LINE、TwitterなどのSNSを利用した情報の拡散速度は計り知れません。
しかも、SNSによって一度世の中に流れ出た情報は完全に削除することが難しいといえます。
投稿後に慌てて削除したとしても、たまたまそれを見たひとがスクリーンショットを撮って、拡散してしまうといったケースも実際に報告されています。
そして、一度拡散してしまった情報は収拾がつきません。
顧客は依頼前にネットで評判を検索することがほとんどですから、その際にネガティブな情報が出ると会社の不利益につながる他、最悪の場合、行政に通報されることも想定されます。
情報化社会によって、多くの人に監視される世の中に変化したことも、コンプライアンスが注目される大きな要因になっているといえるでしょう。
では、リフォーム会社が気を付けるべきポイントとはなんでしょう?
リフォーム会社が気を付けるべきポイント
関連法令を把握する
やはりコンプライアンスを考えるにあたり、法令への理解は一番の課題となってきます。
- リフォームは行政への申請類が他の建築関係の仕事に比べて少ないから問題ない
- 法令遵守と言っても様々な工事種類があるので全部を把握できない
- 業界はみんな同じ事をやっているので大丈夫だ
こういった考えをお持ちの方は多くいらっしゃいます。
確かにリフォーム工事は、種類が多く、数も多くこなさないといけないため、何から何まで全てを把握することは困難です。
しかし、企業倫理やコンプライアンスを考えるうえで法令への理解は避けては通れない道です。
リフォーム会社と関係が深い法令を一覧にしてみましたのでご確認ください。
関連法案一覧 | |
建設業法 | 技術者の設置や、支払い等の適正な体制の形成が求められます。 |
労働基準法 | 労働関係の問題は他の法令とも多くの接点があり、その関係は複雑です。まずは労働基準法を確認しましょう。 |
建築基準法 | 建築業界の基本となる法令です。様々な規定が関係しますので高い理解度が求められますが、この業界においては必須法令といえるでしょう。 |
消防法 | 条令や消防署の指導があり、リフォーム業界のテーマになる法令です。 |
長期優良住宅法 | 国の施策を理解する上で大切な法令です。 |
品確法 | 最近改定があり今後リフォームでは理解の必要な法令といえます。 |
バリアフリー法 | 高齢者人口が増加している現代社会では重要な基準となります。しっかり理解を深めましょう。 |
よくある事例を確認する
マイナビの調査によると「自社従業員のコンプライアンス違反を知っている人(違反事例認知者)」の割合が多い業界の第三位が「建設業」になっています。
「1割がコンプライアンス違反を目撃 – 事例の多かった業界は?」(http://news.mynavi.jp/news/2014/03/31/032/)
この調査から見ても業界的にコンプライアンス違反が多いということがみてとれます。
では、どういった事例がよく起こり得るのか。実際に事例で見ていきましょう。
<会社の備品を私物化、持ち出し>
会社にある備品も会社の所有物です。ボールペン1本でもそれは会社の財産です。
特にコンプライアンスを考えるうえで注意が必要になるのは、スマホやPCといった情報端末の持ち歩きです。
個人情報保護の観点から取り扱いには十分注意すべきということは言うまでもありません。
現場に行くために持っていく、出張に持っていく、など完全に禁止することは難しいですが、必要最低限にとどめておく必要があるでしょう。
また、この事例の怖いところは、社員がコンプライアンス違反と気づかずに持ち出しを行っているケースがあるところです。
普段から、社内でのみ管理すべき備品は、私物化してはならないという意識を徹底させておく必要があるといえます。
<工事へのクレーム対応>
顧客から工事に関するクレームがあった場合、個人の判断で対応をすることは、れっきとしたコンプライアンス違反となります。
個人の判断を顧客に伝えることは、顧客を混乱させる可能性があるといえるからです。
その場で臨機応変に対応することも重要ですが、統一性のない顧客対応は企業の信頼を失うことにつながることもありますので十分注意してください。
<契約書の記入ルール>
顧客との契約書は大変重要な書類となります。
しかしながら、面倒だからということで手続きを簡略化してしまう事例があります。
たとえば、訂正印を押印しないことで顧客と争うといったことはよくある事例の一つです。
訂正印は法的に必須ではないにしても、後で顧客とのトラブルのもとになります。
ですから、社内ルールを徹底する必要があることといえます。
他にも、フリクションボールペンで記入した内容を巡って訴訟に発展した事例も存在しています。
フリクションボールペンは便利ですが、消せるという性質が契約書に合っていないといえますので、こういったルールも社内で検討しておく必要があるといえます。
コンプライアンスへの取り組みで重要な事とは
コンプライアンスは先ほどから申し上げておりますように、個人のレベルではなく、組織全体の課題として認識、取り組むことが重要となります。
個人的には、従業員に経営者の考え方を浸透させる機会を持つことが一番重要なのではないかと感じています。
これは業界問わずいえることだと思いますが、コンプライアンスは経営者の決意や意欲だけでは実際の現場で機能してきません。
現場業務は現場の従業員が行いますし、不祥事は実際の現場から発生することがほとんどです。
経営者がどういった考えを持っているのかを浸透させることが必要不可欠です。
実際のコンプライアンスマニュアルについては、以下の丸紅グループ(http://www.marubeni.co.jp/)のマニュアルがシンプルかつ芯を突いた行動規範で参考になる例として挙げられます。
『正義と利益のどちらかを取らねばならない状況に遭遇したら、迷わず正義を貫け』
※丸紅グループホームページ、コンプライアンスマニュアルより
この言葉はコンプライアンスを考えるうえで、非常に重要で核となる言葉といえるでしょう。
組織の課題やリスクは、それぞれ異なりますのでそのまま真似ても意味をなしません。しかし、大変参考になる例だと思いますので、一度ご覧ください。
まとめ
コンプライアンスは大きく抽象的な概念ということはご理解いただけかと思います。
抽象的な概念ということは、コンプライアンスという言葉で多くのことが過剰に制限され、縛られる可能性が出てきます。
もちろん、臨機応変に対応しなければいけないこともあるかと思いますので、あまり過敏になりすぎるのも良くありません。
ですが、この記事で記載した通り、時代は変化し、今はコンプライアンスを求められる世の中に変化しています。
今一度、社内でコンプライアンスについて検討し、社内でのルール決めを徹底してみましょう。
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