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【建設業】工事原価の労務費とは?重要性や計算方法、管理方法を解説

2023.03.09

コラム

  • 「建設業において労務費とは?」
  • 「労務費の計算方法がわからない」
  • 「労務費ってどんな費用?」

といった悩みはありませんか?

ざっくりとしたイメージはあっても具体的にどのような費用なのか、理解していない方も多いのではないでしょうか。

本記事では建設業における労務費の重要性や計算方法、管理方法について詳しく解説しています。

正確に労務費を算出できれば、利益確保や労働環境の改善につながるため、本記事を参考にして労務費についての理解を深め、経営に役立ててください。

工事原価における労務費とは

工事原価における労務費とは、製品を生産するときにかかる人件費のひとつです。

建設業においては、工事に必要な人員の賃金や給料、福利厚生費などのことを指します。

ちなみに、工事現場に直接かかわらない現場代理人や事務員にかかる費用は、労務費から除外対象です。

ここでは労務費の内訳と人件費との違いについて解説します。

労務費の内訳

労務費を構成する費用は、主に次の5つです。

  • 賃金
  • 雑給
  • 賞与
  • 退職給付金
  • 法定福利費

労務費というと給料をイメージする方も多いでしょう。

しかし、現場で働く方に支払われるお金には給料以外にも上記のような項目が含まれているのです。

項目ごとに解説します。

賃金

賃金とは、作業の対価として支払われる報酬を指します。

建設業においては、建設現場で働く直接雇用の職人に対して支払われる給料のことです。

パートやアルバイトに対して支払われる雑給とは区別される点に注意しましょう。

ちなみに役員自らが建築現場で働いている場合は、賃金と役員報酬を分けて計上しなければいけません。

雑給

雑給とは、一般的にアルバイトやパートとして働く臨時職員に対して支払われる給料や手当を指します。

直接雇用の職人に対して支払われる給料とは区別され、次のような方に支払われるものが対象です。

  • パートタイム労働者
  • アルバイト
  • 日雇い・月雇いの職人
  • 期間工など

上記のような方に支払われる給与は雑給として計上されます。

賞与

賞与とは、給料とは別に支払われる給与全般のことです。

賞与と聞くとボーナスを想像してしまいますが、ここでいう賞与とは次のような手当全般を指します。

  • 従業員のボーナス
  • 扶養手当
  • 通勤手当
  • 家賃補助など

上記のような手当は賃金としてではなく、賞与として計上される点に注意しましょう。

退職給付金

退職給付金とは、工事現場にかかわる従業員が退職する際に支払われるお金のことです。

多くの場合、退職に備えて退職給付金を積み立てておきます。

法定福利費

法定福利費とは、社会保険料や健康保険料として支払われる費用のうち、企業が負担する分のことです。

健康保険法や雇用保険法などの法律により、企業が一部を負担しなければいけません。

福利厚生費の対象は次の通りです。

  • 健康保険料
  • 介護保険料
  • 厚生年金保険料
  • 労災保険料
  • 雇用保険料
  • 子ども・子育て拠出金

上記費用は、条件を満たした場合に支払い義務が発生します。

企業にとって支出は増えますが、従業員を守るために必要な費用です。

労務費と人件費の違い

工事原価における労務費と人件費は混同されやすい費用です。

そのため、工務店や小規模建設業者では労務費と人件費を明確に分けていないケースも見受けられます。

正確にいうと、労務費は人件費の一部であり、どちらも労働者に対して支払われる意味では同じです。

労務費は、建設現場で働く職人に対して支払われる賃金や賞与、福利厚生費などの総称を指します。

しかし、建設会社で働く人は職人だけではありません。例えば、工事に直接かかわらない事務員や人事、経理、営業、販売担当者などがいます。

人件費は、それらすべての部門で働く人に対して支払われる費用全般のことです。

つまり、建設会社で働くすべての人に支払われるお金が人件費と呼ばれます。

その一方で、建設現場で働く人に対して支払われるお金が労務費です。

建設業における工事原価の4要素

工事原価の4要素は次の通りです。

  • 材料費
  • 労務費
  • 外注費
  • 経費

項目ごとに解説します。

工事原価の4要素①:材料費

材料費は、工事に使用する材料や製品を仕入れるときに発生する費用です。

例えば、セメントや鉄筋、材木、ガラス、砂利など。

特定の工事で使われた機械や工具類も材料費に計上され、直接材料費と呼ばれます。

一方で複数の現場で使う目的で仕入れた接着剤や塗料、ドライバーなどの機械や材料は間接材料費と呼ばれますが、これら全額が工事原価に含まれるわけではありません。

間接材料費は複数の現場で振り分けて、それぞれの工事原価に計上します。

基本的に材料費は決算書の原価報告書に記載された金額を転記しますが、完成工事原価と未完成工事支出金を分ける必要がある場合には注意が必要です。

工事原価の4要素②:労務費

労務費とは、建設現場で働く職人に対して支払われる賃金や給料、福利厚生費などです。

工事にかかる労働力すべてにかかる費用のため、パートタイムやアルバイト、正社員など雇用形態に関係なく支払われたお金すべてが労務費に含まれます。

ただし、建設現場に直接かかわらない現場代理人や事務員に支払われる賃金などは、労務費に含まれません。

上記のような管理部門の賃金などは人件費として、「販売費」や「一般管理費」に計上されます。

また、特定の工事に直接的に計上される直接労務費とは、対象となる工事に直接携わった職人や技術者、現場監督などの賃金のことです。

適切に直接労務費を計上するために、各現場にどのくらいの人員を費やし、どのくらいの作業日数を要したか、など詳しく記録しておく必要があります。

工事原価の4要素③:外注費

一般的な原価計算では材料費と労務費、経費の3つに区分しますが、建設業では外注費が加わります。

建設業では作業や加工を外注するケースが多く、工事原価に占める外注費の割合が大きいためです。

工事に関する作業を他の業者に依頼して代金を支払った際は外注費として計上し、工事原価に含めます。

ただし、材料費を自社で負担し施工のみを委託した場合や人員不足で他社に応援を依頼した場合にかかった費用は「労務外注費」に含まれることが一般的です。

工事原価の4要素④:経費

他の3要素(材料費・労務費・経費)に該当しない原価はすべて経費になります。

  • 水道光熱費
  • 通信費用
  • 重機のレンタル費用
  • 警備費
  • 設計費
  • 租税公課
  • 保険料
  • 事務用品費
  • 交際費
  • 雑費

などは、すべて経費の対象です。

建設工事は受注生産が多いので間接工事費(工事にかかる間接的な費用)の項目があります。

しかし、材料費や労務費、外注費は実務上、間接工事費に振り分けられることは少なく、直接工事費(工事に直接かかる費用)に含まれるケースがほとんどです。

それに対して経費は直接工事費のほかに、間接工事費も含まれます。

工事現場ごとに原価管理を行う際には、この間接工事費を現場ごとの工事原価に按分して割り当てる作業が必要です。

工事原価における労務費の重要性

工事原価における労務費の重要性は以下の通りです。

  • 労働環境の改善
  • 正確な見積もり
  • 時間外労働の上限規制

項目ごとに解説します。

労働環境の改善

工事原価において労務費を正しく把握できると、コスト削減だけでなく労働環境の改善に有効です。

例えば、長時間労働。

働き方改革関連法でも是正が求められている長時間労働は、建設業が抱える課題のひとつです。

長時間労働を見直すためには、現場ごとに正確な労務費をはじき出して、作業工程に適した人員を配置することが大切になります。

正しい人員調整は、現場のムリやムダを減らし長時間労働の防止につながるでしょう。

また、労務費を管理して賃金体系や諸手当制度の導入など労働環境を改善すれば、従業員満足度も向上します。

正確な見積もり

労務費の徹底的な管理は、正確な見積もりに直結します。

精度が低い見積もりをした場合、完成工事高と大きな差が生まれて金額が合わなくなったり、利益率が減少したりするかもしれません。

そのため、見積書を作成したら何度も確認することが大切です。

日常から労務費をしっかり管理し、見積もりをする際には過去の資料や情報を参考にして精度の高い見積もりを心がけましょう。

時間外労働の上限規制

2019年4月施行の「改正労働基準法」において、36協定に関する時間外労働の上限規制が改定されました。

建設業は長時間労働の常態化や深刻な人手不足などから、5年間の猶予が与えられていましたが、2024年4月1日から時間外労働の上限規制が適用となるため注意しましょう。

次のルールを守らなければ、罰則(6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金)が科される恐れがあります。

  • 時間外労働が年720時間以内
  • 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
  • 時間外労働と休日労働の合計について、「2ヶ月平均」「3ヶ月平均」「4ヶ月平均」「5ヶ月平均」「6ヶ月平均」が全て1ヶ月当たり80時間以内
  • 時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6ヶ月まで

引用元:厚生労働省「時間外労働の上限規制」

上記規制への課題として「週休2日制の導入」や「労務費など処遇の見直し」が挙げられるため、労務費管理ができていない企業は新たに体制を構築しなければいけません。

今から体制を整えて労務費管理に取り組んでいけば、2024年問題にも適応できます。

労務費の種類と計算方法

労務費の種類は以下の2つです。

  • 直接労務費
  • 間接労務費

それぞれの概要と計算方法について詳しく解説します。

直接労務費

直接労務費とは、工事現場で作業している職人に対して支払われる賃金のことです。

労務費の内訳で解説しましたが、現場で直接雇用される職人に支払われる「賃金」と現場で臨時的に雇われる作業員に支払われる「雑給」が直接労務費になります。

職人によっては、複数現場を担当するケースもあるので、賃金を直接作業時間で割った賃率と合わせて計算するのが一般的です。

直接労務費を計算式で表すと、

  • 賃率
    =直接工の賃金÷直接作業時間
  • 直接労務費
    =賃率×施工完了までの時間

になります。

移動時間などは間接労務費に当たるため、計算式に反映しないように注意してください。

間接労務費

間接労務費とは、直接労務費に該当しない労務費です。

間接労務費の具体例として

  • 福利費
  • 退職金の積み立て
  • 賞与・通勤手当などの各種手当
  • 有給手当・休業手当
  • 間接作業のみを担当する作業員の賃金
  • 直接工が製品を運搬している間の賃金
  • 直接工が機械のメンテナンスをしている間の賃金

などの費用が挙げられます。

間接労務費を計算式で表すと、間接労務費=労務費-直接労務費です。

労務費率とは

労務費率とは、請負金額に占める労務費の割合を指し、建設業では労災保険料を算出するために用いられる数値です。

他の業種において労災保険料は「賃金×労災保険率」の計算式で求められます。

一方、建設業の場合は下請け労働者の数も多く、現場全体の賃金総額が把握しにくいため、この計算式では正確な数値を算出できません。

そこで、厚生労働省は賃金総額の特例として、建設事業の種類によって労務費率(下図参照)を定めて賃金総額を算出します。

計算式は次の通りです。

賃金総額=請負金額×労務費率

労務費 画像1

引用元:厚生労働省「労務費率について」

ただし、労務費率は定期的な見直しにより改定される可能性があるため、常に最新の情報を把握しておきましょう。

労務費の管理方法

建設業の労務費管理は、下請け職人の数も多くデータも膨大になるため、非常に複雑で正確な算出が困難です。

そのため、「労務費計算に時間がかかる」「ミスをしやすい」といった悩みを持たれている方も多いのではないでしょうか。

そこでおすすめしたい労務費の管理方法は次の2つです。

  • エクセルで管理
  • 専用システムで管理

労務費を徹底的に管理できれば、労働環境の改善や正確な見積もりができるだけでなく、自社の経営状態を把握し改善ポイントが見えてきます

エクセルで管理

労務費計算を効率よく管理する方法のひとつ目は、エクセルを用いた管理方法です。

労務費だけでなく工事原価の計算では、あらゆるデータが使われるため計算ミスが起きやすいといったリスクが考えられます。

しかし、エクセルの数式やマクロを活用すれば、計算ミスによるリスクを解消できると同時に作業の効率化につながるでしょう。

エクセルはビジネスで使用するパソコンであれば、インストールされていることの多いソフトのため、取り組みやすい一面もあります。

エクセルで管理するメリット・デメリットは以下の通りです、参考にしてください。

エクセルで管理するメリット
  • 導入コストがかからない
  • 使い慣れたソフトなので対応しやすい
  • 無料テンプレートが豊富にありダウンロードして使える
  • スキルを身につければ自分専用にカスタマイズできる
  • 関数やマクロが豊富で作業を効率化できる
エクセルで管理するデメリット
  • 工事原価を計算する専用ソフトではない
  • テンプレートを自作する場合には専門的な知識が必要
  • オンラインで共有できない
  • 手入力で行う範囲もあるため人的ミスが起こりやすい

専用システムで管理

エクセルで労務費を管理するデメリットを補う管理方法として、建設業向けの専用システムを用いた管理方法がおすすめです。

建設業向けの専用システムを導入すれば、労務費率など複雑な計算が多い労務費管理を効率化できるでしょう。

また、複数現場に携わる際に面倒だった勤怠管理や就業管理、工数管理などが正確に把握可能です。

労務費管理だけでなく、見積もり管理や工程管理などを一元化できるシステムもあるため、そのようなシステムを導入すれば、業務効率化や情報の共有化を図れます。

専用システムで管理するメリット・デメリットは次の通りです、参考にしてください。

専用システムで管理するメリット
  • 建設業向けに設計されているため労務管理すべてに対応
  • 情報を社内共有しやすい
  • オンラインで場所を問わず労務費を管理できる
  • クラウド上で情報を一元化できる
  • 経営の安定化を図れる
専用システムで管理するデメリット
  • 導入や運用にコストが必要
  • 操作するには研修が必要

まとめ

本記事では労務費の概要や内訳、計算方法、管理方法について解説しました。

まとめると次のようになります。

  • 労務費とは現場で働く人に支払われる賃金や賞与などの総称、人件費の一部
  • 労務費の内訳は賃金・雑給・賞与・退職給付金・法定福利費
  • 労務費には直接労務費と間接労務費があり、それぞれに計算方法が異なる
  • 労務費の管理にはエクセルや専用システムがおすすめ

建設業において労務費は工事原価を算出する上で非常に重要な費用です。

企業の利益確保や労働環境の改善を図るためにも、労務費について理解を深め正確に算出できるようにしましょう。

 

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