建設業に必須の実行予算とは?目的や策定手順についてわかりやすく解説
2022.10.17
実行予算といわれても、ピンとこない方が多いのではないでしょうか。
この記事では、実行予算の目的や策定手順についてわかりやすく解説しています。
緻密な実行予算の策定は、把握が困難な建設現場の収支を管理したり、赤字や損失を回避したりすることにつながります。
実行予算を立てて、コストや収益の管理に役立てたい建設業の方は、ぜひ参考にしてください。
実行予算とは
実行予算とは、着工前に現場で使う資材などの原価を割り出して組む予算のことです。
事前に予算を想定しておくと、工事全体の目標原価を設定できるため原価管理や利益管理が行いやすくなります。
建設業の仕事は、製造業のように同じ製品を繰り返し生産するわけではなく、現場ごとに携わる構造物が異なります。
そのため、コストや収益率を管理することが困難です。管理面が不十分な状態では、赤字や損失を招きかねません。
綿密に予算を計画すれば、現場の作業内容が一定ではない建設業の収支状況をしっかりと管理・把握できます。
実行予算を立てる目的
実行予算を計画する目的は次の通りです。
- 現場や契約ごとに予算を管理できる
- 実際原価との比較で収支状況を把握できる
- 現場管理者の能力アップを図る
それぞれの目的について解説します。
現場や契約ごとに予算を管理できる
建設業は前述のように現場ごとで作業内容が異なるため、予算が一定ではありません。
予算額は各現場の大きさや人件費、使用建材、工期などで変動するため、現場や契約ごとに予算内容を管理することが困難です。
しかし、実行予算を事前に計画しておけば、コストや収益率をあらかた把握でき、現実的な営業目標や収支計画を立てる際に役立ちます。
実際原価との比較で収支状況を把握できる
着工後に発生する原材料費などの実際原価と実行予算を比較すれば、コストや収益率をリアルタイムに管理できます。
原価と予算の差が大きい場合には、その原因を突き止めて修正することで赤字や損失を未然に食い止めることができるでしょう。
原価と予算をチェックすることで削減可能なコストが見える化され、想定していた利益の確保が可能になります。
現場管理者の能力アップを図る
実行予算の策定は、現場管理者の管理能力と責任感向上につながります。
実行予算は工事全体の予算以外にも、工程や工種ごとに策定されるため、発注元や外注業者について熟知するなど工事全体を管理するスキルが求められます。
実行予算の策定に現場管理者が携わることで、責任感や判断力が育まれ、管理者としてより高い当事者意識を持つことができます。
実行予算の立て方
実行予算の計画は次の手順で行われます。
- 策定者を決定する
- 見積書に沿って計画する
- 予算案の調整と決済
手順ごとに解説します。
1.策定者を決定する
まず、誰が実行予算を策定するのかを明確にします。一般的には、現場管理者が策定者に選ばれます。
現場管理者は発注先や外注業者の状況をよく理解しています。自ら判断して予算を策定することで責任感が芽生え、利益やコスト面に関して厳しい目で業務を遂行できるでしょう。
2.見積書に沿って計画する
実行予算は契約した見積書の数値をもとに、仕分け作業を行いながら策定していきます。
策定者の個人的な感情や主観が入った予算では意味がなく、見積書に書かれた客観的な数値をベースにして策定しましょう。
実行予算は各現場の収支を管理する重要な指標です。各予算は客観的かつ根拠のある数値でなければなりません。現実味のない数値にならないよう注意しましょう。
3.予算案の調整と決済
予算案が出来上がれば、各部署と協議して最終案を決定していきます。
策定した予算案を各部署にチェックしてもらうメリットは次の通りです。
- より高精度な予算を策定できる
- 各部署との情報共有や連携が期待できる
工事が開始すれば、現場管理者が全ての工程を把握できません。そのため、各工程の責任者に判断を委ねる必要があります。
予算案の段階から各工程の責任者が参加すれば、当事者意識が向上し、現場管理者がタッチできない部分でも安心して任せられるでしょう。
実行予算を策定する注意点
実行予算はポイントを押さえて作り込まなければ、原価との差異が生まれて赤字となる可能性があります。
予算を策定するときに注意したいポイントについて解説します。
見積段階から適切な原価を割り出す
建設業者が契約を進めていくためには、見積書の提出は必須です。
見積書は工事図面などから材料の数を拾い出して計算した積算原価から割り出されます。
契約後の原価と実行予算との差異を最小限にするために、見積段階から慎重に原価を算出することが重要です。
綿密な価格交渉
実行予算を立てる段階で工程表に合わせて建材や資材、外注業者への発注計画を組んでいきます。
発注をかけるときには予算案に基づいて、過去の実績や資材の品質を考慮しながら、綿密に価格交渉を進めていく必要があります。
施工管理システムを有効活用する
適切な原価を割り出して収益率アップを実現するためには、社内での情報共有や連携強化、業務フローの改善など社内構造を再構築する必要があります。
その手段として、「施工管理システム」の活用が有効です。施工管理システムは工事関連データをデジタル化して業務の効率化を図るシステムです。
施工管理システムを導入すれば、現場の進捗状況をリアルタイムで把握できるため、計画的に工事を進められるでしょう。
予算実績を管理する
策定した実行予算の達成率を確認するため、予算実績を管理します。
予算実績の管理とは、策定した予算と実績との差異を確認することです。
予算と実績がかけ離れている場合は、予算設定に不備がある可能性も考えられます。次に実行予算を立てるときには、それらの問題点を考慮して策定に臨みましょう。
効率的に予算実績を管理するためには、実行予算と実績をリアルタイムに把握する必要があります。
実行予算と実績の差異を最小限にするためにも、最低でも月に一度は予算実績を管理し、現状を把握した上で対策を考えることが大切です。
実行予算と基本予算、積算・見積の違いについて
建設業で用いられる予算関連の用語について解説します。
実行予算と基本予算の違い
予算を大きく分けると、次の2つに分類されます。
- 実行予算
- 基本予算
基本予算とは、1会計期間の経営方針や経営計画に基づいて立てられる予算のことです。
実行予算が現場や工事ごとに組まれる予算であるのに対して、基本予算は会社での活動全てが予算対象になります。
基本予算の具体的な予算項目は次の通りです。
- 営業活動に関する予算
└完成工事高
└営業費 - 施工活動に関する予算
└材料費
└労務費
└外注費
└工事経費 - 広報活動に関する予算
└広告費
└研究開発費 - 管理活動に関する予算
└一般管理費
基本予算で対象とする項目は、あくまでも大まかな費用です。上記の予算項目から活動内容ごとに具体的な予算を立てていきます。
両者の違いをまとめると、実行予算は現場ごとに原価を割り出した予算で、基本予算は会社が年度ごとに弾き出した大まかな予算になります。
実行予算と積算・見積の違い
積算とは工事図面などから材料費や人件費、その他諸経費など工事にかかる費用を割り出す工程のことです。
見積とは積算で計上された額に、利益分を乗せて発注先やお客様に提示する金額になります。
積算で割り出した概算的な費用(原価)を実際の現場状況に当てはめて、より具体的に原価を弾き出したものが実行予算です。実行予算から見積金額を差し引いたものが会社に残る粗利益になります。
実行予算を策定する手順は以下のようになります。
- 積算
- 見積策定
- 見積を元にして実行予算を策定
緻密な実行予算を策定するためには、積算の段階から正確に原価を割り出すことが重要です。
まとめ
この記事では、実行予算の概要や策定手順、ポイントについて解説してきました。
実行予算を策定することで、作業内容が現場ごとに異なる建設業の収支をしっかりと管理できると同時に、赤字や損失の原因を素早く見つけることができます。
さらに、施工管理システムの活用や予算実績の管理を実施すれば、現場状況をリアルタイムで把握でき、自社の収益性向上につながります。
そのためにも正確な実行予算の策定が非常に重要です。目的意識を持って実行予算に取り組み、業績アップを目指しましょう。
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