自社工務店の利益率、30%確保できていますか?
2023.02.06
利益率(粗利益)は工務店を健全に経営していくための大切な数値の一つです。
ところで社長様にご質問です。従業員の方々は現場毎や受注金額に応じた利益率を確保できているでしょうか?
同じく、なぜ利益率を確保することが大切なのかが浸透していますか?
- 利益率は把握しているものの、設定された利益率はなぜその数字なのか?
- 利益率を上げるためにはどう改善するべきなのか?
利益の確保は会社の存続に繋がり、従業員の給与や賞与、設備投資の原資でもあります。
売上を伸ばし、生産性を高め、利益率の向上を目指すポイントを以下の3つに纏めてご紹介します。
- リフォーム中心の工務店の適正な利益率は30%前後
- 利益率を確保するための手段
- 利益率を上げるための3つルール
基本的なポイントを知り、対策を講じるだけでも利益率改善に役立つため、利益率を高めたい工務店経営者は参考にしてください。
目次
リフォーム中心の工務店の適正な利益率は30%前後と言われる
工務店が設備投資を行い、経営を拡大できる利益率は30%前後と言われます。
しかし、利益率は高くとも経費を除いた純利益はそれほど高くありません。
リフォーム工事は新築住宅と比較して次のような特徴があります。
- 材料などに掛けられる原価が低い
- 小規模工事が多いため職人へ支払う施工費は高くなる
- 社内経費(営業、設計、施工管理部門の手間)が新築に比べて多く掛かる
そのため、利益率(粗利率)が高くとも最終的な純利益が低くなりやすい傾向にあります
利益率が20%を下回ると赤字になる
リフォーム工事の場合、利益率が20%を下回ると営業利益は1%台か、場合によっては赤字になります。
特別な理由がない限り、30%前後を確保する必要があります。
これは、リフォーム工事の多くが80万円前後の小規模工事であること。
1件あたりの経費が通常より多く掛かる事が原因です。
80万円の工事で利益が20%の場合、社内に残るのは16万円ほどです。
社員が打合せから引き渡しまで2日間拘束されたとして、利益はいくら残るでしょうか。
下手を打てば経費が嵩んで赤字になりかねません。
手間の掛かるリフォーム工事では、利益率30%が会社を存続させるための一つの目安となります。
利益率の重要性
現場を動かす社員は利益率の重要性をどこまで承知しているでしょうか?
会社にとって、利益率が重要なこと、引いては利益がなぜ必要なのかを伝え理解してもらうことが必要です。
利益は、売上から原価(外注費や材料代)を引いた残りのお金です。
ここから更に会社の必要経費を差し引いて残ったお金が利益となります。
利益が大事なのは
- 売上がいつもあるとは限らない。売上の減少に備えるために必要
- 将来の設備投資に備えるため
- 新規開拓を行うため
- 突発的な事故などに備えるため
これらすべて、会社の将来に関わってくる話です。
利益を確保しろとあれこれ指示するのは簡単ですが、「なぜ利益を出す必要があるのか」を伝えるのはとても大切な事です。
参考:https://www.sansokan.jp/akinai/faq/detail.san?H_FAQ_CL=0&H_FAQ_NO=1455
利益率を確保するための手段
利益率を確保するための手段は、以下の4つに大まかに分けられます。
- 売上を増やす
- 原価を減らす
- 固定費を減らす
- 付加価値を増やす
利益率を増やすためには基本的にこの4つです。
どんなに会社規模が大きくてもこの4つに治まります。
大切なのは経営者が「どの手段を中心として利益を上げていくか」の方針を決めることです。
売上を増やす
最もシンプルな方法ですが件数、売上を増やすことで利益率の改善につながります。
特に1件あたりの売上高を増やすことは利益率改善に直結します。
1件あたりの単価を高くすることで、売上に占める利益の割合が高くなり、利益率を上げられます。
利益率の計算を、売上が向上した場合と比較してみます。
■利益率(%)=利益額÷売上×100
例えば、100万円の工事を80万円のコストで行った場合の利益率は
100万円(売上)ー80万円(原価)=20万円(利益額)
20万円(利益額)÷100万円(売上)×100=20%(利益率)
同じ工事を110万円(+10万)で受け80万円のコストで行った場合の利益率は
110万円(売上)-80万円(コスト)=30万円(利益額)
30万円(利益額)÷110万円(売上)×100=27.2%(利益率)
売上が10万円向上した場合、利益率が改善します。
しかし、安易な単価向上は顧客離れを招きます。
単価を上げるには過去の受注実績の受注状況や現在の実績、顧客のニーズ、競合店の価格調査などを踏まえる必要があるでしょう。
反対に、販売単価を下げて件数を増やす戦略は、売上件数は増えても利益率の改善は難しく、経営が苦しい状況が続く危険性があるため注意してください。
原価を減らす
建築工事は1つの工事あたりの原価率が他の業種と比べて高いのが特徴です。。
売上から売上原価を引いた残りが利益(粗利益)であるため、売上原価を低減することで利益率を改善できます。
売上で紹介したのと同じように、コストが10万円下げた場合と比較計算してみます。
例えば、100万円の工事を80万円のコストで行った場合の利益率は
100万円(売上)ー80万円(原価)=20万円(利益額)
20万円(利益額)÷100万円(売上)×100=20%(利益率)
同じ工事を100万円で受け70万円(-10万円)のコストで行った場合の利益率は
100万円(売上)-70万円(コスト)=30万円(利益額)
30万円(利益額)÷100万円(売上)×100=30%(利益率)
コストを10万円下げた場合、同じ利益額でも利益率の改善は原価低減が優れています。
原価低減の具体例として、資材の一括大量購入や仕入れ先の変更、工事をまとめて同じ業者に施工してもらうなどの対策があります。
しかし、無理な値下げ交渉は工事品質の低下を招くため慎重な判断が必要です。
また、昨今は資材や施工費の値上げ等で利益率が悪化しやすい傾向にあります。
原価低減は工事品質の確保や市場動向などの判断が求められます。
固定費を減らす
固定費は売上にかかわらず常に掛かるため経営者の大きな悩み所です。
しかし、固定費の安易な削減は従業員のモチベーションの低下、離職、工事品質の低下などを招きます。
会社運営に必要な固定費をどのように振り分け、削減していくかは経営者の腕の見せ所と言っても良いでしょう。
手を付けやすいのは工事管理の電子化、共有化、書類のペーパーレス化などです。
また使用していない機材の処分や宣伝広告費の削減などがあります。
また、全体の固定費は同じでも工事管理を効率化すれば1件あたりの固定費を減らすことが出来ます。
社員のモチベーションを保ちつつ、効率的な工事管理システムを導入することで相対的に固定費を低減できます。
付加価値を増やす・付ける
工務店に対し付加価値を増やす・付けることは、顧客をつなぎ止め、売上単価を押し上げる正当な理由になります。
最も身近な所ではハウスメーカーの「一条工務店」が挙げられます。一条工務店は「性能」という一点において他ハウスメーカーを圧倒しています。
個別に性能を見れば、耐久性・耐震性・断熱性能は地方工務店でも十分に作り出せます。
しかし、性能を全面に押し出すことで「性能で選ぶなら一条工務店が最も良い」というイメージを植え付け、このイメージが付加価値となり価格を押し上げることに成功しています。
自社の品質の良さを前提にして「デザインがよい」や「この会社は信頼できる」といったイメージを顧客に持ってもらえれば、付加価値をつけた販売価格でも契約を取ることが可能です。
利益率を上げるための3つルール
各々の工務店は、その運営方針や販売体制により利益は様々ですが、利益率が高い工務店は以下の3つのルールを守っています。
- 社員教育により利益率の重要性を周知させる
- 利益率の確保を浸透させる
- 利益が大きく下がった場合の理由を明確にし対策を取る
この3つを徹底することで利益率の確保と向上を目指していきます。
1.社員教育により利益率の重要性を周知させる
最初に、社員になぜ利益率が大切なのかを経営者自身が語り、理解してもらう必要があります。
「利益率とは何か」、「どのように計算されるのか」は世の中に出回っている様々な書籍に紹介されています。
しかし、これを理解している社員はなかなかいないのが現実です。
さらに話を進展させ
- 「利益は何に使われているのか」
- 「利益率を上げると従業員へどのような利益があるのか」
- 「利益率を上げる具体的な策は何か」
といった営業や工事品質の方針を決める部分まで社員に周知させることが大切です。
利益率の話を通して社員に会社の方針を伝えることが経営者にとって大切な役割になります。
2.利益率の確保を浸透させる
売上と利益率を数字で明確に示すこと、利益率に関するルール設定を行うことは利益率を向上させるために重要なポイントです。
まず、利益率の高い工務店やハウスメーカーは、かならず自社の利益率を数値化しています。
あたり前ではありますが、自社の利益率を把握していなければ、現状が高いのか低いのかを考えられません。
利益率を数値として視覚的に確認することを意識しましょう。
また、利益率に関するルールを設定します。どんな時でも設定した利益率を下回らないように取り組むことを意味します。
この二つに取り組むことで利益に関する意識を高め、目標を定めやすくなります。
3.利益が大きく下がった場合の理由を明確にし対策を取る
現状の数値とルールで決めた基準数値は日別・月別単位で比較し、利益率が下がった場合には原因をしっかりと追求することが重要です。
最終的な利益が大きく下がった場合、そこには必ず原因があります。
大きく下がる原因として
- 営業や設計、工事の間で必要な情報が共有されておらず追加工事や手直し工事が発生した
- 見積りの段階で必要な工事が抜けていた
- 工事中に設備や原材料の原価が大きく上がってしまった
などの要因があります。原因が曖昧なままでは手立てを講じることが出来ません。
利益が大きく下がった原因を追及し、改善を講じることで利益率を改善するポイントや方針が明確になります。
まとめ
利益率(粗利益)は工務店を健全に経営していくための大切な数値です。
利益率の改善には基本的なポイントを押さえ、適切な対策を講じていきます。
利益率を確保し、従業員のモチベーションを高め、事業安定を目指していきましょう。
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- 粗利管理ができていない
- 請求書の確認に時間と手間がかかる
- 会社として顧客管理ができていない
- 見積書作成は営業担当者の負担が大きい
- 入金遅延や未入金・額の相違が多い など
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