顧客の信頼を得るための予備費の意義と見積書の扱い方
2022.11.28
見積書を作成するにあたって、予備費をどのように扱うかは難しいポイントです。
なぜなら、発注者側と施工業者側で予備費に対する認識に差異が起きやすいために、トラブルになるケースが多いポイントであるからです。
これを回避するためには、予備費という項目の本質を理解し扱い方を学ぶことが重要になります。
そのためこの記事では、予備費の本質的な意味から説明方法を含めた扱い方までを体系的に記載しています。
発注者と施工業者の両方がきちんとした理解をもって合意形成すれば、予備費という項目が双方にとってメリットのあるものだと気付きます。
ぜひ参考にしてみてください。
目次
1. 予備費の役割について
予備費とは、計画当初に予想していた費用では賄えない変更やリスクに備えて余分に見積もっておくための費用のことです。
そしてその役割は、施工品質を保ち発注者と施工者の信頼関係を築くことにあります。
発注者側にとってあらかじめ余分な費用を計上されることは、違和感があるかもしれません。
しかし、先に計上されることで、後から追加工事費用などを払うリスクがなくなるため予算計画などを立てやすくなります。
予備費がなければ品質の低下も
施工者側にとっても、ある程度予算が確保されている状態であれば、急な変更に対して柔軟に対応できます。
しかし、予算が確保できていなければ、利益確保のために施工期間の短縮や下請け業者への値引き交渉などにつながり、品質低下を招きます。
施工中の変更も多いのが建築工事
建築工事において、施工途中の追加工事や仕様変更は日常茶飯事といっても過言ではありません。
小さな金額でも積み重なると大きな費用負担を強いられます。
そんな時に、発注者と施工業者の合意の上で予算を確保しておくことは工事を円滑に進めることにつながります。
このように、発注者と施工業者の双方にとってメリットのある仕組みを生み出すことが予備費としての役割なのです。
2. 見積書に予備費の項目を組み込んだ方がいい理由
見積書に予備費の項目を組み込んだ方がいい理由は、発注者に不信感を抱かせないためです。
予備費は施工業者にとって当たり前に計上される費用ですが、発注者側にとっては余分に計上されている費用に見えています。
予備費の説明をしっかりする
この予備費に対する両者が抱く認識の差がトラブルを引き起こします。
建築工事の見積書には、ただでさえよくわからない項目が多くあるため、
何の費用なのかしっかりとした説明がなければ、発注者側の不信感は強くなってしまいます。
見積書には予備費を組み込む
このことを前提において考えると、見積書には予備費の項目を組み込んだ方がいいといえるでしょう。
項目がなければ、別工事の単価に上乗せする必要があるため相場と比べて工事費用の単価が高くなるうえに、説明も十分に行えきません。
上記でも説明した通り、お互いにとってメリットがあるので隠す必要はありません。
しっかりとした説明と合意があれば、見積書に予備費を組み込むことは大きな利益につながります。
3. 予備費について発注者が気になっている2つのポイント
予備費について発注者が気になっているポイントは2つあります。
- ポイント1
予備費を除くことは可能か - ポイント2
使われなかった予備費は清算されるのか
よく聞かれるポイントですが意外にも各社バラバラな対応になっています。
結論から述べると、「除くことはできないが使われなかった場合は清算可能」にしておくといいでしょう。
3-1. ポイント1 :「予備費を除くことは可能か?」と聞かれた時の対処方法
予備費を除くことは基本的にはできません。
なぜなら、発注者側からの意見で除けるのであれば、最初から計上していないからです。
予算を抑えるための発注者側の心理として理解はできるのですが、しっかり説明して同意を得ましょう。
見積書に予備費を記載しない業者も・・
その際に「相見積もりをとったA社には入っていないから安い」といった内容を言われることも出てきます。
たしかに、予備費を最初から項目として入れていないところはありますが、
施工単価が高くなったり、追加工事費を請求したりと当初の計画以上に負担が増えてくる可能性は高くなるでしょう。
予備費は必須項目
発注者が予備費の入っていない他社の相見積もりを出してきたときは、見積もりの見方や比べ方を説明することで自社の信頼を勝ち取れます。
予備費はわかりにくいお金ではありますが、双方にとって必要なお金です。
発注者側にとっても最初から合意形成がなされていれば、不満が起きるポイントではありません。
3-2. ポイント2:使われなかった予備費の清算について
予備費は当初に予定した意外に起きた変更やリスクに対して備えておくための費用です。
そのため、基本的には使わなければ返金することが求められます。
しかし、会社によっては予備費をそのまま利益にする方針で返さないところも多くあります。
また、一部返金した場合でも丁寧な説明がないために、
その予備費が正当な金額なのか発注者側にはわからないといったトラブルになるケースも多く事例として発生しています。
使わなかった予備費は値引きで処理する
発注者側にとってはわかりにくい費用であるからこそ、誠実な対応が求められます。
精算方法としては、返金という形で会社のお金を出勤すると経理状不都合が起きる場合もあるので、
最終決済時に使わなかった分の予備費分を値引きして処理するといいでしょう。
工事費用の支払い方法は、一般的に一括支払いではなく着工金、中間金、完了金といったように何回かに分けて支払うため、
このような方法の方が利益管理もしやすくなります。
4. 見積書で顧客の信頼を勝ち取る2つの説明
発注者が施工業者を選ぶ際に必ず判断基準の一つにするのが見積書です。
そのため、見積書を丁寧に扱う会社は発注者に信頼されやすくなります。
特に以下の二つは必ず説明しておきましょう。
- 説明1
⇒見積書の施工範囲と有効期限 - 説明2
⇒予備費を使用した場合の費用負担の内訳
4-1. 説明1:見積書の施工範囲と有効期限
見積書を説明するときは、必ず施工範囲と有効期限を説明することが大切です。
建築工事で多いトラブルのきっかけの一つに発注者側と施工業者の認識の違いがあります。
その中でも特に差が大きいのがこの施工範囲と有効期限です。
施工範囲はしっかりと伝える
発注者側は見積もりの項目に対して費用を支払っていますが、専門知識がない素人からすると、勝手に都合よく出来上がりまでを想像しています。
例えばトイレ工事の場合、「トイレ取付工事」の項目があるとペーパーフォルダーやタオルリングまでつくと思い込みます。
実際は別工事として費用が発生しますが、説明不足のために施工業者が泣き寝入りをすることもあります。
有効期限があることもお伝えする
見積もりの有効期限もこれと似たようなことが言えます。
最初に見積もりを出してもらうと、それが一生変わらないもののように思い込みます。
しかし、実際のところ価格は常に変化しているのでそんなことはありえません。
見積もりを出してから、半年や一年後に契約ということも多々ありますので、その際に変動した価格差をしっかり計上する必要があるのです。
このように施工範囲と有効期限をしっかり説明することは、施工業者の利益を守ることにつながるため、気を付けるようにしましょう。
4-2. 説明2:予備費を使用した場合の費用負担の内訳
予備費は上記でも説明した通り、計画当初に予想していた費用では賄えない変更やリスクに備えて余分に見積もっておくための費用です。
そのため、使わなければ返す必要のある費用ですが、使う場合も何に使うのか用途を説明して合意を得ることが大切です。
このときに、着工前、施工中、完工後の三つの場面に分けて説明するとわかりやすいでしょう。
着工前は過去の使用実績をもとに事前に説明し、施工中は、実際に現場を見てもらうなどして説明します。
完工した後、費用を返金する場合は現場の写真と共に詳しい仕様明細を作成して渡します。
あいまいな費用であるにもかかわらず、ここまで徹底して説明する施工業者は少数派といえます。
この事実があるからこそ、しっかり取り組むことで他社との差別化が可能になり顧客の信頼を獲得できます。
5. まとめ
この記事では、見積書における予備費の意義と扱い方について解説しました。
予備費は一見すると、何に使っているかわからない費用です。
そのため、発注者と施工業者の認識の違いからトラブルポイントになる場合が多くあります。
しかし、逆にその認識の違いを解消できれば、トラブルになることはありません。
そして、その役割は施工業者にしかできない役割です。
なぜなら、発注者はあくまでも素人であり、費用を支払う側の顧客であるからです。
このことを理解し、施工業者が丁寧に説明することで、
トラブルの可能性を秘めた予備費という項目は、お互いを信頼感でつなぐ懸け橋になります。
ぜひ参考にしてみてください。
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