建設業の採用難を脱出させる解決策とは?採用難の現状や原因をわかりやすく解説
2022.06.24
少子高齢化社会を迎えるなか、必要な人材の確保や採用にお困りの経営者の方も多いことでしょう。
建設業への投資は増加傾向にあり、需要が高いにもかかわらず採用難に陥っており、労働力を確保できない状況が続いています。
この原因は一体どこにあるのでしょうか。
この記事では、建設業で採用難が起きている現状と考えられる原因、採用難を解決する方法についてまとめました。
人材確保に悩みを抱える建設業の方はぜひ参考にしてみてください。
目次
建設業における採用難の現状
多くの業種や業界で労働力、人手不足が続く状況のなか、建設業も例外ではなく慢性的な人手不足が大きな課題となっています。
建設業の就業状況について、グラフを用いて解説していきます。
若者離れと高齢化
建設業では下表の通り、29歳以下の若年就業者はピーク時の平成9年から減少傾向にあり、平成29年には11.0%まで落ち込むなど若者離れが起きています。
高齢就業者は平成13年頃から増加していき、平成29年には55歳以上の就業者が約3割になり高齢化の進行が目立つ結果となりました。
建設業の高齢化の要因には、若年就業者の離職率の高さも大きく影響しています。離職率については後ほど解説します。
下のグラフは年齢階層別の建設技能者数を表しています。
グラフを見ると60歳以上の技能者は81.1万人にのぼり、全体の24.5%を占めています。
10年もすれば大半の方が退職をしていくでしょう。一気に退職者が増えれば、後継者の育成が滞るだけでなく、さらに人手不足が予想されます。
それに比べて10代・20代の技能者は、36.6万人と少なく全体のわずか11.0%に過ぎません。
将来的な建設事業を見据えた若年層の拡充と技術承継が今後の大きな課題です。
離職率の増加
建設業では、若年就業者の入職率の低下に加え、離職率の増加が人手不足をより一層深刻なものにしています。
建設業への入職状況を示した下のグラフを見てみましょう。
平成17年頃から横ばいあるいは増加傾向にありますが、平成7年のピーク時と比べると、入職者数は激減しています。
下表は、建設業・製造業・全産業における就業後3年間の離職率を表したグラフです。
建設業は、製造業と比べると1年目の離職者が多くみられます。
入職者数の減少と離職率の高さが建設業の大きな悩みです。
離職が多い理由
建設業では、どうして若年者の離職率が高いのでしょうか。
厚生労働省は建設業から離職する若年者に対して離職理由を調査しました。離職した主な原因は次の通りです。
- 休みが取りづらい
- 作業に危険が伴う
- 労働に対して賃金が安い
- 将来のキャリアアップに不安感
- 作業環境が悪い
離職理由をみると、いわゆる3K(きつい・汚い・危険)のネガティブなイメージが思い浮かびます。
若年者を定着させる改善策として次のような取り組みをしています。
- 週休2日制の推進
- 危険作業の機械化など安全確保
- 仕事内容に応じた賃金体系
- 能力や資格を反映した賃金体系
- 清潔な作業環境への改善
参照元URL:国土交通省「建設業就業者の現状」
建設業の有効求人倍率
2022年4月の職業別有効求人倍率ベスト5をみてみると、建設業に関する項目が目立ちます。
- 建設躯体工事(9.41倍)
- 採掘(6.60倍)
- 建築・土木・測量技術者(5.83倍)
- 土木(5.70倍)
- 保安(5.67倍)
有効求人倍率が高いほど、求職者は選択肢の幅が増え、企業側は採用が難しくなります。
同月の正社員の有効求人倍率が0.97倍なので、建設業が採用難で人手不足なのか数字から読み取れます。
参照元URL:ハローワーク「職業別の有効求人倍率」
建設業が採用難に陥る理由
建設業における採用難問題を解決する手立てとして、なぜ「採用難に陥るのか」、その原因や理由を知ることが大切です。
需要拡大
建設需要をあらわす建設投資(下表参照)は、2017年以降60兆円をキープする建設バブルの状態です。
出典:国土交通省「令和3年度(2021年度) 建設投資見通し 概要」
しかし、世界経済に大打撃を与えたリーマンショック(2008年9月)のころは、建設業も需要が激減し、多くの退職者や転職者を生み出しました。
2011年の東北大震災を契機に右肩上がりとなり、復興事業や東京オリンピック建設など需要が回復しましたが、退職や転職をした職人たちが戻ってくるわけではありません。
需要拡大により仕事量は増えましたが、他業種と比べると重労働の建設業では、労働力をすぐに確保できず、今いる人手だけで仕事を回さなければいけないのが現状です。
そのため、ひとり当たりの業務量が増え、長時間労働や健康、安全面などを負担に感じて離職するケースも頻発しています。
長時間労働
建設業は他業種と比べて、週休2日制の採用も少なく実労働時間も多い状況です。
下表の2016年度調査によると、年間実労働時間は調査産業平均1,720時間に対し建設業は2,056時間です。
年間出勤日数をみると調査産業平均222日のところ建設業は251日と労働時間の多さが際立ちます。
多くの産業ではフレックスタイム制やテレワークなど自由度の高い勤務体制を整備しています。
建設業においても長時間労働の是正や労働環境の見直しが今後の大きな課題です。
建設業における採用難の解決策
深刻な人材不足に頭を抱える建設業界、この状況を改善するためにはどのようにすれば良いのでしょうか。
採用難を解決するヒントについて解説します。
福利厚生の整備
採用を求める企業が人材不足を解消するためには、社会保険などの法定福利厚生を整備することが大切です。
福利厚生の充実は、求職者にとっても魅力的です。
建設業に限らず、福利厚生への加入や整備をしっかりと行い、抜本的な待遇改善が必要です。
業務負担の軽減
建設業はひとりの職人が担当する作業工程が多いため、業務負担が大きくなります。
そのため作業を見直して工程を細分化することが必要です。
例えば、ベテラン職人にしかできなかった作業ノウハウをマニュアル化することで、ひとつの工程を複数人で分担できれば、女性や高齢者、見習い工など新たな人材の確保も視野に入れることができるでしょう。
労働環境の整備
就労希望者の減少や離職率増加など定着率が低い原因に対応するため、労働環境を見直す必要があります。
政府においても働き方改革の一環として、時間外労働への規制や適切な賃金確保、週休2日制などを推進しています。
国土交通省など各省庁では、工事品質の向上や作業効率化につながる「建設キャリアアップシステム」への取り組みを始めています。
建築キャリアアップシステムは将来的な建設業の担い手確保や施工技術の見える化を目的としたシステムです。このような取り組みを含め、建設業界では人材不足に対するさまざまな改善策への動きが見られます。
女性の採用促進
建設業は男性中心のイメージがありますが、女性の積極的な採用も進んでおり人手不足を解消する解決策のひとつとして注目されています。
一般社団法人日本建設業連合会は、建設業で働く女性を「けんせつ小町」という愛称で呼び、女性が働きやすい職場や女性の力が発揮できる労働環境の整備に力を注いでいます。
大手建設会社で働く女性技術者が占める割合は、約8%あり20年間で4.4倍に増えています。
女性の積極的な採用は、現場環境の改善や建設業のイメージアップにもつながり採用難を抱える建設業において問題解決の糸口になるでしょう。
外国人労働者の採用促進
建設業では外国人労働者を積極的に採用する企業が増えています。外国人労働者の雇用には次のようなメリットがあります。
- 若年労働者を確保
外国人労働者は若者が多く、真面目で器用な人が多いため若者離れの起きている建設業にとって若い労働力を確保できる - 現場の活性化
母国よりも賃金が高いため、仕事にも意欲的で活気があり、現場の雰囲気が活性化されて団結力が生まれる
国内での人材確保が基本ですが、即戦力となる外国人労働者の積極的な採用は、建設需要が増えている業界で必要不可欠な人材となります。
社内に英語を話せる人材を育てることで、社内のダイバーシティー化を加速させることもできるでしょう。
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まとめ
これまで建設業における採用難の現状と解決策について解説してきました。
建設需要の増加に伴い、早期の労働力確保と業務効率化が求められます。
そのためには労働環境や処遇を改善したり、雇用の間口を広げたりするなどの解決策を行う必要があります。
建設業のネガティブなイメージを払拭し、自社の状況をしっかりと把握して、できることから対策に取り組んでいきましょう。
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