国産材を活用するCLT資材|木造化で新たな木材需要を創出できるか?
2022.06.27
東京オリンピックの展示棟やパビリオン棟、新国立競技場などに用いられたCLTは、コストパフォーマンスに優れ、高耐久・高断熱などが魅力的な建築資材です。
政府による森林・林業再生プランでは木材自給率50%が目標として掲げられ、木材需要の新たな可能性を秘めたCLTが今、注目されています。
この記事では、CLTの概要やメリット、活用事例などを詳しく解説しています。
今後、普及が予想される新建材CLTの魅力を知り、積極的に導入への検討を考えてみてはいかがでしょうか。
目次
CLTとは
CLTとはCross Laminated Timber(直交集成板)の略です。
直交集成板とは、平行に並べたひき板を、繊維方向が直角になるように積み重ねて圧着した木質のパネルのことです。
国内で製造できる一番大きなCLT(3m×12m)はスギを用いたパネルで、床や壁、屋根などの材料に使用されます。
CLTが日本で普及するまでの一連の流れを紹介します。
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1990年代中頃:オーストリアを中心にCLTが発展
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2010年頃:日本でもCLTの検討及び設計を開始
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2013年:CLTがJAS(日本農林規格)制定
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2016年:CLTの基準強度・CLTパネル工法の建築基準法施行
⇒製材・集成材・LVL(単板積層材)と同様に構造設計が可能となる
⇒国内初CLT量産工場(岡山県)を竣工(銘建工業株式会社、生産能力3万m³/年)
毎年5万m³程度の生産体制を順次整備し、CLTの本格的な普及を目指しています。
出典:林野庁「CLTをめぐる情勢」P.9 主なCLT工場についてより
下のグラフは、CLTを活用した日本での竣工件数を示しており、2016年に建築基準法が施行されて以降、大きく件数が増加していることがわかります。
出典:内閣官房「CLTを活用した建築物の竣工件数の推移」より
CLTの普及が注目される理由
CLTの普及が注目される理由には、森林資源の有効活用があげられます。
国土の約3分の2を有する山林地帯には、植林が施され豊富な森林資源が存在します。
上質な国産材があるにもかかわらず、下図のように建築に用いられる資材は、多くを外国産材が占めており国内の森林資源を上手く活用できていませんでした。
出典:林野庁「CLTをめぐる情勢」P.2 木材需給の現状より
全国各地でCLTなどの木材を用いた建設が推進されれば、森林資源を有効的に使えます。
さらに林業や木材関連産業を通じて、地域資源を活かした経済の循環や活性化、地方創生につながります。
森林自体にも手入れが行き届くため、土砂災害防止などの森林保全や地域の安全に加えて国土の強靱化を生み出します。
CLTの主な材料は、日本の植林に多いヒノキやスギが用いられます。
CLTの普及でヒノキやスギが材料に利用されれば、森林資源を有効的に活用できるだけでなく、木材国内自給率を大幅に改善できるメリットがあります。
CLTを建物で使用するメリット
CLTを建物に使用した場合の具体的なメリットについて解説します。
スピード施工
CLTを使用すると施工のスピードアップが実現します。
CLTはあらかじめ工場で、建物の設計に合わせた形状に加工されます。
加工後に建設現場に運ばれるので施工や組み立てが早く、工期を短くできます。
3階建ての建物の構造部分にCLTを使用した場合、組み立ては約2日間で完了します。
コンクリートを使用した場合は、各階ごとにコンクリートを乾燥させる養生期間が必要なので、1階当たり約5日、3階建ての場合は約2週間の工期※になります。
※3階建て・延べ面積約270m²の事例
工期の短縮化には、次のようなメリットが考えられます。
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仮設や重機のレンタル期間を短縮できる
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木造専門の大工や職人へ依存しなくてよい
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建物のスタート時期が早くなり、発注者の利益享受も早期に行える
コンクリートよりも軽量
同様の曲げ強度があるCLTとコンクリート※を比較した場合、CLTはコンクリートの約半分の軽さになります。
建物全体の重量も軽減されるため、基礎工事の簡素化をもたらし、コスト削減につながります。
※CLT:1枚 約220kg(1m×3m×厚さ18cm)・コンクリート製品:1枚 約500kg(1m×3m×厚さ8.5cm)
耐震性・耐火性・断熱性
CLTは耐震性と耐火性そして断熱性に優れています。
耐震性
2015年に防災科学研究所で3階建てと5階建ての実物を用いた振動実験を行いました
。阪神淡路大震災よりも大きな力を加えましたが、倒壊しない強固な耐震性が確認されました。
耐火性
CLTなど厚みのある木材に火災が発生したとき、毎分約1mmの速度でゆっくりと内部に燃え進みます。
90mm厚のCLT壁は1時間以上燃え抜けない防耐火性能が加熱実験で確認されました。
断熱性
木材はコンクリートと比べ、約15〜20倍の断熱効果があります。
10cm厚のCLTパネルの断熱性は、1.2m厚のコンクリート壁に匹敵します。
コンクリートの壁に触れたとき冷んやり感じる理由は、即座に体温を奪われるからです。
しかし、木材には熱を伝えにくい性質があるので、触れても違和感がなく断熱材のような効果があります。
内装の木質化による温もり
壁などの建物構造部分だけでなく、内装デザインにCLTを取り入れることで、木の温かみが感じられる空間を演出できます。
建物への活用事例
木製のCLTは、木造建築だけが使用用途ではありません。
CLTの優れた特性を活かして、鉄筋コンクリート造や鉄骨造の建築物にも使用されています。
CLTを用いた工法と活用事例について説明します。
CLTパネル工法
CLTパネルを建築物の床や壁に用いる工法です。
CLTパネルを用いた厚い壁は、水平力(地震や風)だけでなく、鉛直力(上下方向に作用する力)を負担する目的があります。
鉛直荷重を支えることができるため、建物に柱を設置する必要がありません。
活用事例として、福島県いわき市の復興公営住宅などで用いられました。
同じ間取りで建てられる共同住宅やホテルで活用されている工法です。
枠組み壁工法
CLTパネルを建築物の壁ではなく、枠組み壁工法の床や屋根に用いる工法です。事務所や住宅などの建築物に活用できる工法です。
鉄骨造にCLT床を取り入れた混構造
CLTを構造材として活用した建築物は、2018年11月時点で国内では6階建てまでの建物が竣工しています。
これらの建築物では、適材適所でCLTが使われています。
活用事例として、1階が鉄筋コンクリート造で2〜5階の床にCLTを構造材として用いたり、1〜2階が鉄筋コンクリート造で3〜6階の壁でCLTを構造材として用いられたりしています。
このように建築物の用途や規模、デザインに沿った方法でCLTが活用されています。
CLT普及に向けた課題
CLTを普及させるためには、コスト面と設計や施工などの情報不足に取り組む必要があります。
CLTを導入したくても取り扱い事例が少なく、ためらう事業者が多くみられます。
まずコスト面において現状では下記のように、CLTは鉄筋コンクリート造を上回る単価になっています。
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【鉄筋コンクリート造】建築費全体の単価:約24万円/㎡
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【CLT】建築費全体の単価:約27万円/㎡
将来的に需要が高まり量産されるようになれば、鉄筋コンクリート造と同等の水準までコストの引き下げが予定されています。
次に情報不足に関しては、必要な情報提供やCLT施工技術の標準化、トラブル対策用の手引きの準備、環境貢献に対する説明など取り組むべき課題が山積みです。
CLTの活用促進のため、国や自治体からの支援制度が設けられています。
補助金を利用したい場合は、下記の参考URLをご覧ください。
参考URL:内閣官房「令和4年度CLTを活用した建築物への主な支援制度」
まとめ
従来の建築では、RC造や鉄骨造で建設されていた大規模な建物もCLTの普及により木造で建築できるようになりました。
しかし、まだまだCLTを用いた施工経験がある工務店は少ない状況です。
一般社団法人日本CLT協会では、CLTの理解を深めるために講習会を実施したり、使い勝手をよくするための技術開発を行ったりなどさまざまな取り組みをしています。
地球環境問題や森林資源の循環など社会的なニーズが高まるなか、今後はますます木造建築が見直され、CLTの普及が拡大していくことでしょう。
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