生産緑地問題は大丈夫?その概要と2022年問題について解説
2022.06.24
不動産市場の混乱が指摘される「2022年問題」や「生産緑地問題」。
大都市周辺に農地を持っていない方にとっては耳慣れない言葉かもしれません。
もしくは、大変な問題が起きるかもしれないといった漠然としたイメージを持たれている方もおられるでしょう。
「生産緑地問題」とは、1992年改正の緑地法で指定された生産緑地が、30年の期限が満了する2022年に一斉に解除される問題をいいます。
もし、解除が一斉に起きれば土地価格の下落や都市部の環境悪化などが懸念されるため、農家の方だけでなく、建設業にとっても大きく注目されています。
この記事では、生産緑地問題の概要と問題とされる理由、国の対策などについてわかりやすく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
生産緑地問題とは
生産緑地とは、都市圏にある市街化区域内の農地のなかで生産緑地法により指定された農地のことです。
1974年の日本では深刻な住宅不足が懸念され、市街化区域内にある農地の宅地化を推進する「生産緑地法」が公布されました。
1992年になると、開発が進みすぎた都市化から自然環境を守るため「生産緑地法」の改正が行われました。
この改正で多くの土地が生産緑地に指定されました。
2022年が生産緑地となって30年目
生産緑地に指定されると、30年間の営農義務(農地や緑地として土地を維持)が課されます。
その一方で、固定資産税などの納税猶予が受けられます。
その当時に生産緑地の指定を受けた多くの土地が、2022年に30年目を迎えます。
生産緑地の指定から外されると、宅地化する土地の急増が予想されます。
宅地化されれば、固定資産税の軽減や相続税の納税猶予が受けられなくなります。
土地の暴落も危惧される
納税の優遇がなくなれば、土地の売却やアパート経営の家賃収入で補うなど、農地からの方向転換が各地で発生します。
その結果、生産緑地で指定されていた膨大な土地が、市場に次々と流出するため土地価格の暴落が危惧されています。
上記のように、生産緑地が解消されることによって引き起こされる、さまざまな影響や可能性を生産緑地問題または2022年問題といいます。
生産緑地とは
生産緑地に該当する農地について、生産緑地法第3条第1項で次のように記載されています。
- 都市環境の保全などの良好な生活環境を確保する効果があること
- 公共施設などの敷地として適していること
- 300平方メートル以上の規模の区域
- 農林漁業の継続が可能なこと
国土交通省の「令和2年都市計画現況調査」によると、全国の生産緑地地区は12128.8ヘクタール(東京ドーム約2,600個分に相当)です。
都市別の内訳を見てみると約半数が関東に集中しており、次いで近畿、中部と続きますが、他の地域はほぼ指定がありません。
生産緑地の指定解除となる可能性が高い
生産緑地として指定を受けると30年間は売却や転用ができません。
30年経過すると生産緑地の指定が解除され、売却が可能になります。
売却までの流れは次の通りです。
- 市区町村に時価での買い取りを申し出る
- 市区町村が買い取りを拒めば、他の農業希望者に農地を斡旋する
- 上記が滞れば、生産緑地の指定が解除され、売買や開発が可能になる
財政難を理由に市区町村による買い取り実績はほぼなく、買い取りを申し出た場合にはほとんどが生産緑地の指定解除が予想されます。
生産緑地問題への国による対策
生産緑地問題による土地価格の急変動や生活環境の保全のため、国は1992年の施行から生産緑地法の改正を行ってきました。
国による対策がどのようなものなのか、2点に分けて説明します。
2017年生産緑地法改正
2017年に生産緑地法が改正され、生産緑地内に設置できる施設の追加や生産緑地制度の延長を目的とする特定生産緑地制度が作られました。
改正された生産緑地法のポイントについて解説します。
建築規制の緩和
生産緑地内に設置が認められていた施設は、改正前は農業を営むための施設(ビニールハウスや農機具収納庫など)に限られていました。
2017年の法改正で農産物に関連する収益事業施設の建設も認められるようになりました。
そのため、農産物の直売所や農業レストランなどの施設を設置できるので、生産緑地として指定されても、土地活用の幅が広がり有効的に使えるようになりました。
特定生産緑地制度の創設
改正以前は生産緑地に指定されると、30年後に指定が解除されて市区町村に買い取りの申し出などを行う必要がありました。
法改正により生産緑地の指定から30年が経過する前に、特定生産緑地として指定を受けると買い取りの申し出を行う時期を10年延長できるようになりました。
10年経過後、土地所有者の同意があれば、繰り返し10年間の延長が可能です。
従来の生産緑地で受けていた税制優遇は、そのまま特定生産緑地でも受けることができます。
特定生産緑地の指定があれば、今まで通り固定資産税の軽減や相続税の納税猶予を受けながら農地として利用もできます。
参照元URL:国土交通省「特定生産緑地指定の手引き」より
2018年都市農地賃借法制定
従来は生産緑地を農地として第三者に貸し出す場合、次のような仕組みになっていました。
- 相続税の納税猶予が打ち切られる
- 知事の許可がなければ貸主に農地が戻ってこない
上記の条件があるため、生産緑地の所有者は貸し借りを躊躇してしまい、農業の継続が見込めなくなると宅地へ転用していました。
2018年に制定された都市農地賃借法により、相続税の納税猶予が継続利用できるように変更されました。
また、貸借契約の期間が満了すれば、農地を持ち主に返却することが定められました。
農地が返ってくるため、持ち主は安心して貸し出しを行えます。
参照元URL:農林水産省 都市農地貸借法(都市農地の貸借の円滑化に関する法律)の概要より
建設・工務店ができる対処法
2022年問題は建設業や工務店にも影響があるため、対策を考える必要があります。
2022年問題に備えて、日常的に不動産のマーケット動向を見極める必要があります。
生産緑地の指定が解除された農地が市場に流出すれば、住宅用地の供給量が増え、土地価格の値下げ競争や地価の下落が懸念されるからです。
空室やマンションが売れない懸念
土地価格が下がれば、マンションやアパートを建てて賃貸物件を経営する人が増えるかもしれません。
賃貸物件が増えれば、入居者を確保できないまま空室状態が続いたり、既存の賃貸物件経営者にも影響が出たりする可能性があります。
また、買い取られた農地に戸建住宅やマンションが建てられ、周辺の中古マンションが売れなくなることも考えられます。
買え控えも
不動産市場が停滞すれば、住宅の資産価値が落ち込むことも考えられるため、新たに住宅建設をされる方はネガティブになり買い控えが起きるかもしれません。
さまざまな状況を想定した的確な判断により、お客様のニーズに合った提案やサービス提供が行えます。
まとめ
生産緑地問題の詳しい内容から、指定解除による2022年問題について、わかりやすくまとめてきました。
問題点ばかりが指摘される生産緑地問題ですが、正しく情報収集することで新たな受注につながる可能性があります。
そのためにも社内での情報共有が大切です。
社員同士が仕入れた情報や商談状況を共有することで会社としての方針が定まり、同業他社との差別化が図れます。
2022年問題をステップアップの踏み台として、前向きに準備していきましょう。
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