積算の意味とは?見積との違いや積算業務の流れ、ポイントを解説
2022.03.03
建築工事を受発注する際にキーポイントとなる「積算」と「見積」。
見積は、普段の生活でも目にすることもあり、なんとなくイメージが浮かびますが、積算は建設業界でなければ、耳にすることのない言葉です。
また、建設業界に携わっていても、積算と見積の違いについて理解していない方も多いことでしょう。
- 積算と見積の違いは?
- 積算しないとどうなる?
- なぜ積算が必要なの?
- 積算する方法は?
などといった疑問に答えるべく、本記事では、わかりやすく積算の概要から見積との違い、積算業務の流れやポイントについて解説しています。
積算について理解を深め、業務効率化や収益につなげるための参考にしてください。
積算と見積について
積算と見積の概要と、双方の違いについて解説します。
積算とは
積算とは、建設工事にかかるすべての費用を積み上げて算出することです。
例えば、新築マンション工事について見てみましょう。
マンションが完成するまでには、大きく分けて下記手順を踏む必要があり、それぞれに費用が発生します。
- 地盤調査などの準備工事や解体工事
- 建物の土台を据える基礎工事や配筋や型枠など躯体工事
- クロス貼りや塗装、防水、配管など内外装工事
- アスファルト舗装や植栽など外構工事
マンションなど建設工事は、大量生産される製品のように毎回同じ材料や製法で作られるわけではなく、工事ごとに必要な材料や人員、施工場所など条件が変わってきます。
そのため、「どんぶり勘定」で費用を算出してしまうと大きな赤字になる可能性も……。
そこで、重要になるのが「積算」です。
建設業を営むうえで、不可欠な業務になります。
積算業務は、設計図書や仕様書、施工環境をもとに、必要な材料や数量、人員などを拾い出し、各費用を合算して工事全体の費用を算出する仕事です。
見積とは
見積とは、積算で算出した工事費用(積算額)に、自社の利益を上乗せした金額のことです。
前述した通り、工事にかかるすべての費用を合算したものが積算額ですが、積算額には利益が含まれていません。
そこで、施主や取引先などの顧客に対して、利益分を上乗せした見積を算出します。
積算で工事全体の費用を算出した後に、見積するという流れです。
積算と見積の違いとは
積算と見積の違いは、「利益が含まれているか」がポイントです。
積算で算出する工事全体にかかる費用には、利益は含まれていません。
一方見積は、積算額に利益をプラスした金額のことで、この点が積算と異なる点です。
積算と見積の関係は、以下の計算式で表せます。
「見積額=積算額(工事費用)+一般管理費+利益額」
工事費用が算出できていないと、顧客に対して正確な見積を提示できないため、積算は欠かせない業務です。
つまり、積算と見積は同時に実施するのではなく、積算してから見積するという順で行われます。
建築工事で積算が必要な理由
建築工事でなぜ積算が必要なのでしょうか、その理由について解説します。
現場ごとに工事費用が異なる
建築工事で積算が必要な理由は、物件ごとに工事費用が異なるからです。
製造業であれば、同じ製品を生産する場合、製造方法や素材、人員をその都度変更する必要はなく、工事原価を把握しやすいでしょう。
しかし、建築工事の場合、同じ工事内容であっても、施工現場や人員数、材料の数量、気候条件、施工設備、延長の有無などで工法や仕様、条件が変わってきます。
そのため、工事内容が同じだからといって、工事費用が同じとはならず、以前に積算したデータをそのまま転用できません。
よって、物件ごとに異なる工事費用を正確に把握するため、建築工事では積算する必要があるのです。
利益確保と信頼獲得
どんぶり勘定で積算額を設定し見積書を作成した場合、利益確保が難しいだけでなく、赤字になる可能性も考えられます。
利益を確保するためには、正確な工事費用を算出する積算が必要です。
また、発注する側が工事費用の概要を認識するためにも、積算は必須の業務といえるでしょう。
正確な積算額を提示することで、発注者との信頼関係を築けます。
発注者と受注者双方にとって、いい協力関係、win-winの関係につながる積算は建設業にとって必要不可欠な業務とされているのです。
建築工事で見積が必要な理由
建築工事で見積が必要な理由は、顧客に対して支払い額を提示して、受注を得るためです。
最初に伝える見積金額は、提示された条件をもとにざっくりと計算した概算見積であり、顧客は見積金額を見て、注文するか判断を下します。
最初に提示した金額から、値引き交渉やオプション追加などの提案があって、再見積のケースも珍しくありません。
幾度か打ち合わせした後、顧客が見積金額と工事内容に納得した段階で最終見積となり、受注が確定します。
積算に資格は必要?
積算業務にあたる際に必要な資格は特にありませんが、活かせるスキルや資格はあるので紹介します。
活かせるスキル
積算に活かせるスキルには、次のようなものが挙げられます。
- 建設に関する幅広い知識(建築・土木・電気・外構・管工事など)
- 設計図書や仕様書を読み解く力
- 工事や工程に関する知識(施工管理や工程管理経験など)
- 数字に強い
- 柔軟なコミュニケーション能力
- 積算や設計、生産管理経験
建設業界が未経験であっても、建築工事や計算に関する知識を積極的に学べる人が、積算業務に向いているでしょう。
設計図書や仕様書から必要な材料や人員を判断し、工事開始前にそれらの費用を予測する必要があるので、経済や景気に対する知識も求められます。
また、建築現場は必ずしも工程通りに進むとは限りません。
仕様や工事内容など急な変更に対して臨機応変に動けることや、工事関係者との価格交渉も必要なので、柔軟なコミュニケーション能力も積算に活かせるスキルといえます。
活かせる資格
積算に活かせる資格として、次のようなものが挙げられます。
- 建築積算士(公益財団法人日本建築積算協会が認定する民間資格)
- 建築コスト管理士(公益財団法人日本建築積算協会が認定する民間資格)
- 1級・2級施工管理技士(国土交通省が管轄する国家試験)
- 1級・2級木造建築士(国土交通省が管轄する国家資格)
公共工事などを受注する際に勤務会社の経営状態や技術力などが点数化されますが、保有する資格も加点対象として重要な要素です。
そのため、資格保有者は資格手当が支給される可能性が高くなります。
積算業務の流れ
積算業務の流れは、主に以下の4つの工程を踏んで行います。
- 人材の算出
- 材料の算出
- 工事費用の算出
- 書類作成
実際に積算する流れを工程別に解説しましょう。
積算業務の流れ①:人材の算出
積算は、まず工事に必要な人材を拾い出すところから始まります。
設計図書や仕様書をみて施工内容を確認し、どのような職種や資格を持った人材がどれくらい必要かを判断しなければいけません。
工事に携わる人材のスキルや人数によって人件費が異なるため、人材の拾い出しは重要です。
国土交通省では、工事費積算に用いる価格や単価基準を公共建築工事標準単価積算基準において定めていますので、こちらを参考にすると労務単価を算出できます。
積算業務の流れ②:材料の算出
人材の算出に続いて、設計図書や仕様書から、工事で必要な材料や数量などを算出していきます。
建築工事では、同じ材料であっても施工方法や工法によって、必要な数量が変化するため、正確に材料や数量を把握していないと、計算ミスの原因となるのです。
そのため、施工内容や規模、施工環境や場所、工事期間などの条件を踏まえた材料の算出が重要になってきます。
材料の算出に際しては、国土交通省が作成している土木工事標準歩掛を参考にして、見落としがないよう算出してください。
参考元:国土交通省 土木工事標準歩掛
積算業務の流れ③:工事費用の算出
次に、前工程で拾い出した人材や材料などから、工事費用を算出します。
人材の単価設定(労務単価)は、保有する資格や職種、都道府県によって異なるため、国土交通省が作成する単価設定基準で職種別の単価を確認してください。
参考元:国土交通省 令和5年3月から適用する公共工事設計労務単価について
材料の単価設定は、
- 建設物価調査会が調査した実勢価格表「建設物価」
- 経済調査会が提供する「積算資料単価データベース」
を参考に算出します。
人材や材料単価を算出した後、工事費用を求める計算です。
- 労務費「人件費単価×人数」
- 材料費「材料単価×数量」
双方に直接経費を加えると、直接工事費が算出でき、間接工事費と合算すれば工事すべてにかかる工事費用が算出できます。
積算業務の流れ④:書類作成
上記の流れで各工程の算出が終われば、内訳明細書や数量調査書、見積書など工事に必要な書類を作成します。
内訳明細書は、内訳書や明細書、仕訳表など詳細に記載する必要があるため、無料テンプレートの活用がおすすめです。
記入漏れや不備がないように規格や数量、単価を記載してください。
記載内容に誤りがないことを確認できれば、内訳明細書の完成です。
内訳明細書が完了すれば、次に算出した積算額から見積書を作成し、施主や取引先、顧客へ提示します。
以上が積算業務の一連の流れです。
積算する際のポイント
積算業務を迅速かつ正確に行うためには、以下のポイントを押さえる必要があります。
積算する際のポイント①:詳細な施工計画を立てる
積算を正確に実行するには、しっかりとした施工計画の立案が重要です。
積算は、施工計画をもとに作成した作業工程表などから、必要な情報を拾い出して実施します。
そのため、詳細な施工計画を立てて、作業工程表に細かく落とし込むことが正確な積算業務に不可欠です。
積算に必要な情報には、以下のものが挙げられます。
- 使用する材料
- 建設機械
- 工法
- 仮設施設
- 安全衛生や環境整備
- スクラップなどの処理情報
上記内容を施工計画に盛り込むと、積算業務の漏れ防止につながるでしょう。
積算する際のポイント②:現場環境を把握する
現場環境が変われば、施工方法や工事に必要な人員数に違いが出ます。
そのため、施工現場の気象条件や地形を把握して、積算業務にあたらなければいけません。
同じ工事内容ゆえに、同じ積算額とするのではなく、現場ごとに各項目を算出する必要があります。
気象条件であれば、
- 夏場の熱中症対策
- 積雪地域であれば除雪費用
- 地盤が弱い箇所への対応
など、環境状況によって、必要な人員を考慮しなければいけません。
設計図書や仕様書だけでは、現場環境を理解できないため、状況に応じて現場担当者への問い合わせも必要になります。
積算する際のポイント③:現場状況によって歩掛を考える
歩掛(ぶがかり)とは、ひとつの作業にかかる労力や作業日数を数値化したものです。
あまり馴染みのない言葉ですが、工事費用を算出するうえで欠かせません。
材料費は「材料原価×数量」で算出できますが、工賃を含む労務費は施工方法や難易度、材料や施工現場、熟練度などによって作業時間が異なる点に注意しましょう。
そのため、現場状況ごとに歩掛を用いて算出すると、曖昧な価格設定を防止し、より正確で根拠のある工事費用の設定が可能です。
工事費用を算出する際に多くの企業では、材料の種類やサイズなど詳細に歩掛が設定されている「国土交通省 公共建築工事標準単価積算基準」を参考にしています。
ただし、現場状況や環境、作業員の熟練度によって歩掛基準は異なるため、上記の積算基準を参照しながら、現場状況を考慮して柔軟に設定調整することが大切です。
積算する際のポイント④:積算ソフトを用いる
施工計画をもとに慎重に人材や材料を拾い出し、入念に積算した場合でも、ヒューマンエラーは発生します。
こういった人的ミスや赤字工事の発生リスクを削減するためには、積算ソフトの活用がおすすめです。
エクセルを用いた無料のテンプレートを利用して、積算業務の自動化も可能ですが、チェック機能がないため計算ミスを見逃してしまうかもしれません。
積算ソフトを使うことで、このような計算ミスを極力減らし、業務効率が向上します。
また、建設業に特化した積算ソフトは、材料と数量を入力するだけで歩掛を用いた自動計算や、利益率を設定すれば見積書が容易に作成できるなど、機能性も充実。
計算ミスをなくし、効率的な積算業務を可能にする専用ソフトの導入を検討してみませんか。
まとめ
本記事では、積算の概要から見積との違い、積算業務の流れやポイントについてわかりやすくまとめました。
積算は、工事全体の費用を正確に把握するため、建設業にとって不可欠の業務です。
積算を怠って、「だいたいこれぐらいだろう」とどんぶり勘定で見積をした場合、利益が確保できず、赤字になる可能性もあります。
積算ソフトを活用して、積算や見積業務を自動化することによって、正確な積算や計算ミスを削減し、業務を効率化できるでしょう。
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