Column コラム

BIMって何?どんなメリットがあるの?デメリットや扱いの注意点も併せて解説

2022.10.31

コラム

BIMは昨今の建築業界で、急速になくてはならない存在になりつつあります。

しかし一方で、

  • 「BIMって一体何なの?」
  • 「よくわからないけれど新しいシステムは難しそう」
  • 「コストだけかかってメリットがないのでは?」

という声があるのも確かです。

本記事ではBIMのメリットやデメリットを併せて解説します。昨今は法規上の制約も増え、ますます複雑な納まりの検討が要求される機会が増えてきました。

強い味方になってくれるBIMの知識を得て、会社の糧としてください。

BIMとは?

BIMとは簡単に言うと3Dで表される建築物のモデリングシステムです。BIMという呼び方は略称であり、正式にはBuilding Information Modeling(ビルディング インフォメーション モデリング)と言います。

従来の図面(2D)と異なって、より立体的な検討が可能です。「それは3DCADと一緒では?」と思う方が居るかもしれませんが、3DCADとは作成の順番が大きく異なります。

3DCADはまず図面ありきであり、図面(2D)データを元に3Dモデルを立ち上げてCGにします。そのため、3Dで検討するためにはまず図面上での手直しを行い、その後3D化しなくてはなりません。

しかしBIMは最初から3Dモデルで作成・操作ができるため、手間が省けて時短になります。

BIMのメリット

BIMの大きなメリットは以下のとおりです。

【BIMの導入メリット】

  • 設計段階での手直しが一度で済む
  • どこを切った図面でも一瞬でできる
  • 顧客からわかりやすい
  • 設計・構造・設備を総合的に判断できる

いずれも2DであるCAD図面にはないメリットであり、使い慣れると作業効率が飛躍的に上がります。

設計段階での手直しが一度で済む

BIMを使用すると、設計の手直しが1度で済みます。

BIMの特徴のひとつですが、作業の順番としてまず3Dモデル制作を行い、後から図面化になります。そのため手直しが起きると、図面ごとに手直しするのではなくモデルを手直しします。あとは再度図面を出力すれば完了です。

再出力の手間は確かにかかります。しかし手直し点は複数になればなるほど、「あっちの図面はここが直ってないし、こっちの図面は別の所が直ってないし…」という風に、図面ごとに何度も細かく再修正するケースも多くなります。

BIMはそれを1本化しているため、手直しの回数を減らすだけでなく、常に最新の状態を表示できるのが強みです。

どこを切った図面でも一瞬でできる

BIMモデルは一度作成すれば、どこを切った図面であっても一瞬で完成します。

通常図面は切った部分が少しでもずれると、新規で該当図面を作成することになります。ある程度はデータをコピーできるとはいえ、手間であることは間違いありません。

しかしBIMは、元になった3Dモデルさえあれば、どこの部分をどう切っても瞬時に図面が完成します。そのため、「急にこの部分を切った図面が必要になった」という事態にもすぐに対応できるのです。もちろん、どこも切らない立面図なども作成できます。

顧客からわかりやすい

BIMは顧客に訴えかける力がとても優れています。

一般的に建設業界の顧客は建築に詳しくありません。そのため、図面を見ても頭の中でイメージが膨らまず、「なんだか良く分からない」という状態のまま話が進んでしまいます。

そこで強力な味方になるのがパースなどの視覚的な情報です。BIMを使用することで、視覚的に顧客が完成した姿を把握でき、納得度の上昇に繋がります。

パースは基本的に建築業界では好まれません。顧客は喜びますが、反面設計には何の進捗にもならず、時間を取られるだけであるためです。BIMを使用することで、時間をかけずパースが出てくるため、最小限のコストで顧客を喜ばせることができます。

設計・構造・設備を総合的に判断できる

BIMの醍醐味のひとつと言えますが、設計・構造・設備の3要素を総合的にひとつのモデルで判断できるのはとても大きなことです。

通常はそれぞれ図面で表現されており、分かれています。つまり、相互に成り立つかどうかは図面上で判断するほかなく、実際に建てられるかどうかは建ててみるまで本当にはわかりません。

しかしBIMを使用することでそれぞれの要素は3Dになるため、それぞれの要素が互いに邪魔をしないか、取り合いや納まりがどうなるかを設計段階でかなりリアルに検討することができます。

複雑な案件や大規模案件など、リカバリーしにくい案件ほどBIMのモデルは活躍するため、現在自社がそういった案件をよく引き受けているのであれば、BIMの導入価値は高いです。

BIMのデメリット

BIMには無条件にメリットばかりあるわけではなく、デメリットもあります。具体的には以下のとおりです。

【BIMの導入デメリット】

  • 図面から見えない部分もきっちり設計する必要がある
  • 手直しが遅れると全体に迷惑がかかる
  • 規模によっては時間的なコストパフォーマンスが低い
  • 導入が難しい

なお、一番下の「導入が難しい」という点は、一概にデメリットとは言えない部分もあります。詳しくは後述します。

図面から見えない部分もきっちり設計する必要がある

BIMで図面作成をする場合、図面に表れない部分も設計する必要があります。

通常のCADでは切った部分から見えるものだけを記載すればそれで済みますが、BIMの場合見えようと見えまいと関係なく、ひととおりモデリングを済ませなければなりません。

そのため、本当に最初のたたき台となる図面などは、通常のCADでさっと書いた方が早い場合もあります。使い分けて作業しましょう。

手直しが遅れると全体に迷惑がかかる

設計段階で図面の手直しはよくあることですが、BIMで手直しが遅れるとチーム全体が遅延してしまいます。手直ししてはいけないのではなく、手直しが遅れることが問題なのです。

BIMの特徴を最大限活かすためには、チーム全員が同様のモデルを共有する必要があります。バラバラにモデリングしていては、総合的な検討ができません。

しかしチーム全員が同様のモデルを活用している状態で手直しが遅れると、不完全なモデルのままどんどん図面化され、他の要素が検討されて作り変えられていきます。

常に「これが最新モデルである」という意識を強く持ち、検討を先延ばしにしないようにしましょう。

規模によっては時間的なコストパフォーマンスが低い

案件の規模によっては、BIMはかえってコストパフォーマンスが落ちる場合があります。

大規模案件や納まりが複雑な案件の場合は、細かい所まで詰めておく必要があるため、BIMは強力な味方になってくれます。しかし一方で、小さい個人住宅用の倉庫程度の場合は、通常のCAD図面で作図してしまった方が早いです。

建築業界の慣習のようなものですが、ある程度仕事のできる人であれば、わざわざ図面に書き起こさなくとも、ある程度は標準の仕様に沿って設計・施工を行う事ができます。

そのため、わざわざ詳細を書かなくとも良い。図面は確認申請だけのために必要なだけ、というケースであれば、通常のCADでも十分です。

とはいえ、設計が進むにつれて細かい所にアクシデントが起きることも、建築業界ではよく発生します。念のためBIMでモデリングしておく、という方向での業務も悪くはありません。

導入が難しい?

BIMの大きなデメリットとして「導入が難しい」という要素は頻繁に取り上げられますが、これについては実際の所「難しいこともある」という表現が正しいでしょう。

どのようなシステムであれ、新しいことを始めるにはコストと労力がかかるものです。BIMに限った話ではありません。それをさも、BIM特有のデメリットであるかのように表現するのは間違いです。

確かに金額的なコストがかかるのは事実です。また、扱えるようになるのにも多かれ少なかれ時間は必要になるでしょう。しかし、「時間が必要だから」「お金が無いから」と言っていては、新しいツールなど何も導入できなくなり、業界から置いて行かれる一方になってしまいます。

注意

特に扱う技術的な話は、使えるようにならなくてはという意識を持って使用すれば、ある程度のことはすぐに身につきます。大切なことは、「ものにしなくてはならない」という意識です。「使えなくても問題ない」と思っているうちは、使えるようになりません。

まとめ

BIMは優れたツールです。デメリットもありますがメリットも大きく、物件によっては大きく作業時間を短縮してくれるでしょう。

導入するしないに関わらず、知識を持っておくことは重要です。今は不要であっても、未来で必要になるかもしれません。いざ導入すべき状況になった際、BIMのことを知らなければ使いこなせません。それどころか、「BIMを使えばどうか」という発想すら出てこないこともあります。

BIMは未来に繋がる選択肢のひとつです。知識を付けてツールに振り回されず、会社の役に立てて業績を伸ばしましょう。

 

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