建設業で必須の見切り、役割と選び方について解説
2023.05.02
建設業では、床や壁、天井など、様々な場所で見切り材を使う場面がありますが、それぞれの見切り材の役割と選び方について疑問やお悩みをお持ちの方は多いのではないでしょうか。
見切り材の選び方は、それぞれの役割と材の特徴によって決めていくものです。
見切り材は、建物全体からは小さな存在ではありますが、見た目の印象や、施工性による全体コストや工程にも影響するもので、建設現場ではなくてはならない部材の1つです。
見切り材の選び方を理解することで、いつまでも美しくコストパフォーマンスの高い建物をつくることに繋がります。
目次
見切りの役割
見切り材とは、床と壁などの角度がついて取り合う部分や、異なる材と材の境目に使われる化粧材を示し、使われる場所によって様々な役割をもっています。
見切り材の役割としては、以下の4つが挙げられます。
- 異素材を滑らかに繋ぎ合わせる
- 見た目の印象を変える
- 隙間を埋める
- 部材の劣化防止
それでは、それぞれ詳しく見ていきましょう。
異素材を滑らかに繋ぎ合わせる
内装材で一般的に使用される材としては以下のような材があります。
- 木(フローリングや板張りなど)
- タイル
- 塩ビ系シート
- 石膏ボード
- モルタル
- カーペット
それぞれ材には特徴があり、厚みや硬さ、伸縮性などが異なります。
異なる特徴をもった材が隣り合う場合に、見切り材を挟むことで滑らかに繋ぎ合わされます。
例えば、LDKの床材にフローリングとタイルが使われる場合、どちらも部屋の大きさに合わせて部材をカットして張り合わせていきます。
フローリング、タイルともカットし張り合わせて、お互いがぶつかり合うところは材の厚みや伸縮性が異なるため、ピッタリとぶつかり合うことができません。
そんな場合に、見切り材を挟んで隣合わせることで、厚みの異なる材の段差解消と、伸縮性の異なる材の緩衝材となり、異素材が滑らかに繋ぎ合わされることになります。
見た目の印象を変える
見切り材は建物の中では比較的小さい部材ではありますが、意外と空間に与える印象が大きく影響することがあります。
例えば、壁と壁のコーナー材として使用する場合、コーナー材として使用される見切り材の幅は4cm程度のものであっても、白い壁と壁のコーナー部に木目の見切り材を入れるだけで、部屋の印象は優しいものへと変わります。
また、段差部分の見切り材の例としては、床の色と段の先端見切り材の色の差を大きく変えるだけで階段の段差は認識されやすくなります。
このように見切り材自体の大きさは非常に小さいものですが、空間の印象を変えたり、段差の注意喚起を促すまでの影響を与えることもできるものです。
隙間を埋める
小さな隙間ができる部分としては以下のようなものがあります。
- 床と壁の間
- 壁と天井の間
床、壁、天井については、多くの場合異なる時期に、異なる職人が工事をすることになります。
例えば、石膏ボードの壁材の工事が終わったあとに、フローリングの床材の工事を行うように、異なる時期に、異なる職人が施工するため、それぞれの材への影響がないように小さな隙間をあけて次の工程へバトンタッチされます。
その隙間を埋めるように、床と壁の隙間や、壁と天井の隙間に見切り材を設置します。
それぞれ建築用語で以下のように表現します。
- 床と壁の見切り材
⇒巾木 - 壁と天井の見切り材
⇒廻り縁
部材の劣化防止
部材が劣化する原因は以下のような場合が多く見受けられます。
- 端部から剥がれる
- 角が欠ける
クロスやシートなどの壁や床表面に貼り付けて仕上げられる薄物の材は、端部から剥がれてくることが多くあります。
それは端部の接着材の劣化が最も早く始まるためです。
このクロスやシートの端部を見切り材で覆い、止め付けることで、接着剤が弱くなり易い端部の弱点を補う役割を果たします。
また、フローリングとシート材などの厚みの異なる床材が隣合う場合、小さな段差が生じ、その段差部分の角となる部分が欠けて材の劣化に繋がる場合があります。
この段差の角部分を強度の強いアルミ製などの見切り材でカバーすることで、角が欠けるような段差部分の劣化防止に繋がります。
見切り材の材質
建築の見切り材の代表的な材質としては以下のようなものが多く使われています。
- アルミ製
- 塩ビ製
- 木製
その他にも、鉄製や真鍮製、ステンレス、石、レンガなど沢山の種類がありますが、建築現場で最も多く使用されるのは、アルミ・塩ビ・木の3種類になります。
アルミ・塩ビ・木の3種類は、以下の理由により建築現場で多く使われています。
- 軽いため施工性がよい
- 加工が容易
- 比較的安価
- 流通量が多い
アルミ製
アルミ製の見切り材は、オフィスビルや公共建築物などの大規模な建築から戸建住宅まで、幅広く使用されています。
アルミ製の見切り材は、以下の部分に多く使用されています。
- 天井と壁の見切り
- 天井の段差部分の見切り
- 床と壁の見切り
- 壁の仕上げ切り替え部分の見切り
アルミ製の見切り材の特徴は、軽くて丈夫であることです。
アルミ製の見切り材は塩ビ製や木製に比べて強度があり、水にも強く、どんな場所にも使用しやすい特徴があります。
ただし、塩ビ製や木製の見切り材に比べてややコストが高くなる傾向があります。
塩ビ製
塩ビ製の見切り材は、主に住宅などの規模の小さな建物に使用されます。
大規模な建築にも使用されることもありますが、比較的コストを抑えたい場合の建築に使用されている印象です。
塩ビ製の見切り材の使用箇所については、アルミ製見切り材と同様に以下の部分で使用されます。
- 天井と壁の見切り
- 天井の段差部分の見切り
- 床と壁の見切り
- 壁の仕上げ切り替え部分の見切り
塩ビ製の見切り材の特徴は、軽くて施工性がよく安価なところです。
また、塩ビ製見切り材を扱っている会社も多く、バリエーションが多いことも特徴です。
木製
木製見切り材は、主に大工が現場に合わせて加工して製作されます。そのため、現場に合わせたmm単位の微妙な調整も可能です。
木製見切り材は、木目を活かし空間を優しくする特徴がありますが、アルミ製や塩ビ製と異なり水気に弱い性質があります。
木製見切り材は、以下の部分に多く使用されています。
- 和室での各部取り合い
- 子どもがぶつかりそうなコーナー部分
- フローリングの見切り
木製見切り材の特徴は、アルミ製に比べて材が柔らかいところです。
子どもがぶつかって危ないようなコーナー部分などに、木製見切り材をR加工して使用されています。
見切り材の選び方
見切り材の選び方には、それぞれ以下の部位ごとの考え方があります。
- 床に使用する見切り材の選び方
- 壁に使用する見切り材の選び方
- 天井に使用する見切り材の選び方
床に使用する見切り材の選び方
床材に使用する見切り材とは、床材が切り替わる部分で使用される見切り材を示します。
床材に使用する見切り材の選び方については、以下の順番で選ぶことが重要です。
- 強度ある材
- 安全性を左右する色
- 見た目の印象を左右するサイズ
床材で最も重視しなければいけないところは安全性です。
通行頻度が高く、裸足で利用するような場所では特に、簡単に破損するような材を選ぶと事故に直結することになるため、強度のある材を選定することが重要となります。
具体的には、保育園などの園児が使用する床材の見切りでは、木製見切り材で厚みにより強度と耐久性を考慮し、衝撃に対しても優しいものを選定する必要があります。
また、土足で使用するようなオフィスや公共施設などであれば、水気にも強いアルミやステンレスなどの強度の高い見切り材の選定となります。
次に、見切り材の色とサイズ選び方が重要となります。
特に段差部分での見切り材では、床材の色との差を大きくし段差を認識しやすくする必要があります。
逆に、段差もなく安全性を確保されている場面では空間の雰囲気を壊さないよう床の色に馴染むような選定も必要となります。
また、できる限り小さなサイズで見切り材の存在を感じさせない工夫により、美しい空間が際立ちます。
壁に使用する見切り材の選び方
壁材での見切り材の選び方は、以下のポイントが重要です。
- 安全性を考慮した材の選定
- 材の伸縮を考慮したサイズ
- 空間に馴染む色
床材に比べ、空間認識として視覚に入りやすい壁の見切り材については、意匠的な色やサイズに目を奪われがちですが、建築を長い目で見た場合、安全性や長期に渡る美観が重要です。
特に子どもたちが遊ぶ場面が想定される場面では、壁面の角となる部分はぶつかった場合の材の硬度により怪我の重症度が変わってきます。
コンクリートや鉄に比べ、木製や塩ビ製はぶつかった時の衝撃を緩和する柔らかさがあります。計画する場面に応じた見切り材の選定が重要となります。
次に壁に使用する見切り材に重要なポイントとして、材の伸縮を考慮したサイズです。
例えば、板張りと石膏ボードが隣合う場合、板張りは温度や湿気などの環境によって材の伸縮があります。
一方石膏ボードは、温度や湿気などによる材の伸縮はありません。
このような場合は、板張りの伸縮を考慮した見切り材のサイズが重要となります。
板張りが温度などの環境によって伸縮した場合でも見切り材が覆っているサイズでカバーできるのであれば、多少伸縮しても隙間があくようなことになりません。
最後に気をつけるポイントとして、空間にアクセントを与える色とするのか、逆に見切り材の存在を目立たせない色にするのかを空間に応じて決定します。
天井に使用する見切り材の選び方
天井での見切り材の選び方では、以下のポイントが重要となります。
- 材の伸縮を考慮したサイズ
- 空間に馴染む色
- 施工性とコスト
天井の見切り材として使用されるのは以下のような場面があります。
- 天井の材質が切り替わる場面
- 天井に段差が生じる場面
- 天井と壁との取り合い
天井の見切り材の選び方としては、床や壁と異なるところは人が直接触れる場所ではないことです。
そのため、空間の意匠性や施工性、コストを考慮した選定になります。
例えば、天井と壁との取り合いについて、どちらも石膏ボードに白いクロスで仕上げる場合、その取り合い部分の見切り材としては、アルミや塩ビ、木製などの選択肢があります。
天井と壁との取り合い部は人が直接触れる場所ではないため、衝突した時の安全性よりも、空間に馴染む色やサイズによって選択すればよいことになります。
天井、壁がどちらも白いクロスであれば、できる限りスッキリとした印象を与える場合、木やアルミなどの質感のある材を選択するのではなく、見切り材の存在ができる限り小さい白い塩ビ製のものを選択します。
また、経済性の観点でもアルミや木製よりも塩ビ製のものがコストが安いため、この例の場合は、見た目と経済性の観点から塩ビ製と選択することになります。
見切り材を取り扱う主要メーカー
見切り材を取り扱うメーカーは沢山ありますが、建築現場でよく採用されている大手メーカーは以下の3社です。
- フクビ化学工業株式会社
- 株式会社創建
- 杉田エース株式会社
フクビ化学工業株式会社
フクビ化学工業株式会社は、化学に立脚した樹脂成形技術を特徴としたメーカーで、見切り材としては、塩ビ製の製品について沢山のバリエーションがあります。
また、見切り材だけでなく建築関連商品として、以下のような商品の取り扱いもあります。
- 耐震金物
- 基礎樹脂束
- 断熱材
- 内装建材
- エクステリア建材
株式会社 創建
株式会社創建は、内外装副資材の開発・販売を行う会社で、主力製品として塩ビ製とアルミ製の見切り材を取り扱っています。
塩ビ製とアルミ製の見切り材のカタログでは、数百頁に及ぶ豊富な商品のバリエーションがあります。
カタログでは、手書き風の納まり例の記載もあり非常に分かりやすく紹介されているのが特徴です。
参考:株式会社創建ホームページ
杉田エース 株式会社
杉田エース株式会社は、建築金物、建築関連資材全般を取り扱う会社で、全国の拠点で約1,000社のメーカーと取引を行い、自社ブランド「ACE」の13,000アイテムを含む50,000アイテムを超える建築金物・建築資材を扱っています。
見切り材の取り扱いも豊富ですが、建築の副資材のバリエーション量が豊富で、設計側や発注側としては、見切り材だけでなく他の建築副資材もまとめて発注できるため、非常に便利な会社として業界では認識されています。
建設業の見切りまとめ
建設業の見切りは、床や壁、天井など、さまざまな場所で使用され、それぞれ役割を持って設置されています。
見切り材は、建設全体の中では比較的小さな部材ではありますが、衝突防止、段差の認識向上のための安全性の確保、材の経年劣化の防止、空間へのアクセントや、異素材を滑らかに繋ぎ合わせていくなど、非常に重要な役割を持っています。
長期にわたり使用される建物は、それぞれ安全性などの役割をもった見切り材を適切に配置することが重要なポイントになります。
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