現場監督の年収は高い?仕事の概要と年収アップを実現する方法について解説
2023.01.18
建築業界において、現場監督は必要不可欠な仕事です。
一方で「肉体労働で仕事が厳しい」「大変な割に見返りが少ない」といったイメージを持たれる方も多いのではないでしょうか。
- 現場監督の年収はどのくらい?
- 企業規模や年齢、性別による年収の違いは?
- 現場監督の仕事内容は?
などの疑問に答えるべく、本記事では現場監督の仕事内容や年収について詳しく解説しています。
さらに、現場監督としてキャリアアップするための資格や年収をアップする方法にも触れているので、ぜひ参考にしてください。
目次
現場監督とは
現場監督とは、建設業において施工現場を取りまとめる人のことです。
工事を進めていくためには、「作業現場の安全に問題はないか」「工程通りに進んでいるか」など、現場管理が必要不可欠であり、現場監督はその役割を担っています。
現場管理とは、「工程管理」「安全管理」「原価管理」「品質管理」の4大管理のことです。
現場監督の詳しい仕事内容については、後述しますのでそちらを参考にしてください。
現場監督の年収
現場監督の年収水準はどのくらいなのでしょうか。
統計データをもとに、現場監督の年齢や地域、性別による違いについて紹介します。
現場監督の年収は平均よりも高い傾向
国税庁の「令和3年分民間給与実態統計調査」によると、1年を通じて勤務した給与所得者の平均年収は443万円です。
対して現場監督の平均年収は458万円。
現場監督の年収は、日本の平均年収と比較してやや高い傾向です。
引用元:求人ボックス 給料ナビ「現場監督の仕事の年収・時給・給料」
また、現場監督の平均年収を示した上図をみると、ボリュームの多い給与水準は359万円〜453万円なので、458万円という平均年収はこの層よりも高い水準になります。
全体の給与分布をみると359万円〜1,115万円と幅広く、勤務先やスキル、経験によって差があるようです。
では、企業規模別・年齢別・地域別・男女別の年収についてみていきましょう。
現場監督の企業規模別年収
現場監督の平均年収を企業規模で比べると次のようになります。
- 大企業:580万円
- 中企業:480万円
- 小企業:430万円
大企業の平均年収580万円と小企業の平均年収430万円との差は150万円。
現場監督の年収は、企業規模によって大きな差が生まれます。
公共工事の場合、国や地方公共団体などの発注者から大企業が元請として受注し、受けた工事を細分化して中企業や小企業に下請けに出す構造が一般的です。
したがって、企業規模が小さくなるほど平均年収が低くなってしまいます。
ボーナスについても同様です。
大企業の場合は平均で4ヶ月程度のボーナスが支給されますが、中小企業ではボーナス自体がない場合もあります。
企業規模による支給額やボーナスの大小が、平均年収の差につながっているようです。
現場監督の年齢別年収
現場監督の年齢別年収をまとめると以下の通りです。
- 20歳〜24歳:285万円
- 25歳〜29歳:305万円〜355万円
- 30歳〜34歳:290万円〜390万円
- 35歳〜39歳:341万円〜445万円
- 40歳〜44歳:379万円〜500万円
- 45歳〜49歳:438万円〜560万円
- 50歳〜54歳:490万円〜600万円
- 55歳〜59歳:485万円〜595万円
- 60歳〜65歳:365万円〜595万円
一般的に現場監督の平均年収は、20代前半で300万円程度からのスタートになります。
現場監督になるためには建設系の高専を卒業後に3年間の実務経験、または建設系の高校を卒業後に5年間の実務経験が必要です。
その後、年齢や経験値、スキルを考慮して年収が上がっていく傾向があります。
年収がピークを迎える時期は、建設現場を長年経験し、現場監督としての能力が最高潮を迎える50歳〜54歳です。
以後、年齢とともに微減していきます。
現場監督の地域別年収
現場監督の平均年収を地域ごとに見てみましょう。
- 北海道・東北:427万円
- 関東:471万円
- 甲信越・北陸:437万円
- 東海:452万円
- 関西:455万円
- 中国:416万円
- 四国:423万円
- 九州・沖縄:421万円
上述の通り、現場監督の平均年収が最も高い地域は関東で471万円。
続いて関西が455万円、東海は452万円となっており、大都市圏エリアが年収上位を占めています。
関東のなかで最も高い水準を示す神奈川県は490万円、全国で最も低い島根県の366万円と比較するとその差は124万円という結果です。
参照元:求人ボックス 給料ナビ「現場監督の仕事の年収・時給・給料」
現場監督の男女別年収
現場監督として働く女性の数は少なく、男性の比率が高いことは周知の事実ですが、性別によって年収に違いはあるのでしょうか
2021年の賃金構造基本統計調査によると、建築技術者(現場監督を含む)の男性平均年収は約608万円、それに対して女性の年収は約438万円でした。
同じ職種に従事していても、男女間で170万円の差があります。
男性の方が女性と比べて、平均年齢が高く勤続年数も長いため、年収に影響しているのでしょう。
現場監督の業務で女性が活躍し始めたのはまだ最近のことなので、今後男女の年収差は縮まってくると予想されます。
現場監督の仕事内容
現場監督の仕事は、具体的にどのような業務があるのでしょうか。
- 工程管理
- 建材発注
- 予算管理
- 顧客対応
- 書類作成など
ただし、上記の例はあくまで一般的であって、「この仕事だけをしていれば良い」というわけではありません。
最終的に現場がうまく回らなければ現場監督の責任となるため、常に現場全体を見渡して、最適な動きが取れているかどうかアンテナを張っておく必要があります。
また、現場監督は初期段階から仕事に携わり、引き渡しまで建設工事全般を管理しなければいけません。
工程すべてに関与するため、建築物が完成したときは大きな達成感を味わい、仕事へのやりがいを感じられることでしょう。
自分の携わった仕事が形として残る点も魅力です。
それでは、現場監督が担う主な仕事について、種類ごとに解説します。
納期を厳守する「工程管理」
「工程管理」とは、工程スケジュールを管理して納期までに建設工事を完了させることです。
「建設工事がどれくらいで終わるのか」「作業工程にどれくらいの人員が必要か」を判断するスキルが求められます。
工程が遅れている場合はスケジュールを再調整して、作業人員を増加したり、工程を変更したりすることも珍しくありません。
現場監督は作業員の陣頭指揮をとってスムーズに工程を進めていく必要があるため、高いコミュニケーション能力も求められます。
事故を防止する「安全管理」
「安全管理」とは、建設現場において作業員が安全な環境で工事を進められるように整備することです。
そのためには、現場責任者として事前に事故を防止するための啓発活動や、管理が必要になります。
具体的には次のような活動です。
- 危険予知活動と危険予知訓練(KYK)を実施して、現場のトラブルを事前に防ぐ
- 整理・整頓・清掃・清潔・しつけ(5S活動)を進めて環境を整備する
- ヒヤリハット運動を実施して、事故を未然に防ぐ
予算を調整する「原価管理」
「原価管理」とは、予算内で収めるために建設工事で発生する原価を管理して、利益を計上することです。
建設工事は、施工計画によってあらかじめ算出された予算が決まっています。
しかし、建設工事に必要な材料原価や納期は状況によって変動するため、コストをしっかりと管理していなければ利益を計上できません。
現場監督は予算とコストを調整しながら、施工計画の見直しや業者の変更などを実施し、利益が出るように管理します。
仕上がりを保証する「品質管理」
「品質管理」とは、建築物が設計図書や仕様書通りに仕上がっているかを管理することです。
具体的には、
- 材料が仕様書の基準を満たしているか
- 設計図書通りの寸法に仕上がっているか
- 強度や機能に問題はないか
などの点検や確認を実施して、工事全体の品質を管理します。
現場監督は、工程ごとに決められた点検方法で評価をし、完成後に問題が起きないよう品質を確保した上で、作業を進めなければいけません。
また、品質を証明するために建設途中の写真を撮影したり、施工記録を作成したりなども現場監督の大切な仕事のひとつです。
現場監督の求人
現場監督の求人は、多い現状にあります。
政府統計の総合窓口e-Statによると、現場監督を含む建設・土木・測量技術者の有効求人倍率は令和5年6月時点で5.00倍です。
厚生労働省の一般職業紹介状況で全職種の有効求人倍率を調べると、令和5年6月は1.30倍なので、工事監督は一般的な職業と比べて人材不足であるとも言えるでしょう。
現場監督の求人が多い理由として、次の5つが挙げられます。
- 災害復興や都市開発など建設需要がある
- 3Kのイメージから若者従事者が不足している
- 拘束時間が長く、休日出勤があるなど労働条件が厳しい
- 現場監督は資格がないと働けないというイメージがある
- 現場ごとの人員変更や転勤・単身赴任を避けたい
現場監督と施工管理技士との相違点
現場監督と施工管理技士との相違点は、施工管理技士の方がより専門的でデスクワークも多い点です。
施工管理技士の代表的な業務は、以下の通りです。
- 工事現場の安全確保
- 作業員への指導
- 資材の発注
- 予算管理など
顧客対応などの業務がなくなり、安全確保や資材発注などデスクワークが増えています。
しかし、実際の現場では現場監督と施工管理技士の仕事は、厳密な線引きが難しいケースも多いのではないでしょうか。
「顧客が来たけど、施工管理技士なので対応できません」「現場で危険箇所を見つけたが現場監督なので対処できません」などでは、現場はうまく回りません。
それぞれに違いはありますが、仕事内容はほぼ同じと捉えて良いでしょう。
現場監督として年収アップを実現する3つの方法
現場監督として年収アップを図る3つの方法は次の通りです。
- 資格を取得してキャリアアップ
- 経験を積む
- 好条件の企業に転職する
どのようにキャリアアップしたいかを意識し、会社にもそれを伝えておくことが重要です。
①資格を取得してキャリアアップ
現場監督として年収をアップしたいと考えるなら、関連資格を取得してキャリアアップを図りましょう。
具体的にキャリアアップの対象となるのは次の資格です。
- 建築士
- 建築施工管理技士
- 土木施工管理技士
- 管工事施工管理技士
- 建設機械施工管理技士
- 造園施工管理技士
いずれも1級と2級があります。
施工条件として、一級建築士や監理技術士など有資格者が必要な現場もあるため、資格を取得していると活躍の場が広がるでしょう。
また、施工管理の知識が豊富な現場監督は、どのような現場でも歓迎されます。
技術力を証明する国家資格があれば、資格手当も支給されるため年収アップにつながるでしょう。
管工事施工管理技士(1級・2級)|CIC日本建設情報センター
造園施工管理技士(1級・2級)|一般財団法人全国建設研修センター
②経験を積む
現場監督のキャリアには経験がとても重要です。
現場監督だけでなく、多くの職種においても同様に、勤務年数が長く経験豊富な人材ほど年収が高くなる傾向があります。
経験は数値化できない要素のため、「勤務年数が経験値と比例しない」という人も居るかもしれません。
できるかぎり多くの現場を体験して、繰り返し経験を積み重ねていきましょう。
また、現場監督の仕事はマルチタスクが多く、知識だけでは咄嗟に動けません。
不測の事態が起きたときに、的確に判断を下して瞬時に対処するには、経験を積むことが必要です。
経験を積む過程で、スケジュールの調整方法や作業員とのコミュニケーション力など総合的なスキルも上達していくため、年収アップが期待できます。
③好条件の企業に転職する
現場監督は前述したように、一般的な職種と比べると高い給与水準ですが、年収は企業規模や請け負う工事内容によって大きく変わります。
現在勤めている企業で昇給が厳しい場合には、今よりも待遇の良い企業へ転職を検討することも年収アップを実現する上でおすすめの方法です。
年収だけでなく好条件の企業に転職できれば、将来的に昇進や昇給が期待できます。
ただし、転職先を探すときには、自分が持つ資格や技能が活かせることや、入社後に理想の働き方が実現できるかを確認しておきましょう。
長年勤めるためには、働きやすさも重要な要素です。
まとめ
本記事では、現場監督の仕事内容や年収の概要について解説しました。
また、現場監督として今より年収をアップさせる方法についても紹介しています。
現場監督は、工程管理や安全管理、原価管理、品質管理など高い管理能力と、リーダーシップ力やコミュニケーション力などの資質が求められる仕事です。
それだけに、資格を取得し経験豊富で応用力のある現場監督は、市場価値が高く年収アップにもつながります。
同時に経営者は、現場監督が価値のある存在という認識を持たなければいけません。
特に経験豊富な現場監督は、望んでもすぐには見つかりません。
今後も企業が成長し続けていくためにも、貴重な人材を大切にしましょう。
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